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バイラルメディアの謝罪記事がバイラルする時代に、炎上は誰が消火するのか?

安藤光展サステナビリティ・コンサルタント
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■バイラルメディアとエステの炎上事例

9月となり、秋の気配を感じつつある東京ですが、ネット界隈ではコンプライアンスやモラルの問題などによる企業やメディアの炎上で、まだまだ夏の暑さが終わらないといった感じです。

というわけで、ここ2週間のYahoo!ニュースでも色々と話題になっている炎上案件をまとめてみます。ご紹介するのは「バイラルメディア」と「たかの友梨・ビューティクリニック」と「24時間テレビ」の3つです。

ちなみに、バイラルメディアとは、シェアが広がりやすい仕組みを導入したエンタメ情報サイトのことです。バイラル(ウィルス)のように広がりやすい、というのが語源とも言われています。

結論から申し上げますと、今回の話は「法令を守らない」というコンプライアンス上の問題というより、組織やコンテンツをコントロールできていない(統治できていない)というガバナンスの問題のほうが大きいのだと思います。

法令は時代に追いついていないから、守らなくてもいいなんて見解を持つブロガーの方もいるみたいですが、まずは、法令に従いましょう。あなたの言っている事、やっていることは犯罪及び犯罪に準ずる卑劣な行為なんですけど、自覚あります?みたいな。

組織やコンテンツをコントロールできないようなレベルの事業活動を改善できれば(ガバナンス強化)、コンプライアンス関連の法令遵守もできてくるはず。逆にコンプライアンス問題を解決したければ、「法律は守ろう!」と叫ぶのではなく、組織を立て直す、抜本的な組織改革が必要なわけです。

あらかじめお伝えしておきますが、それぞれの事例で、該当企業を貶めたいということではなく、オープンになっている各メディアの視点も含めて周知の事実とさせていただきながら、まとめさせていただくものです。

■事例:バイラルメディア

最近、バイラルメディアと呼ばれる、エンタメ要素が強く、SNSで拡散されやすいウェブメディアの著作権問題が話題になっています。

法律は専門ではないので詳細については割愛しますが、パクりはダメです。以前から、著作権的に危ないなぁと思っていたメディアが、詳しい人から指摘を受けるということも増えているようです。

私の個人ブログ「CSRのその先へ」も、時々パクられます。丸々パクられて、リンクすら貼らないというパターンが多いです。色々な手法でチェックしているので、ほぼ発見することができます。もちろん、大手ブログサービスの場合は執筆者・運営サイド両方に通報します。

エントリー(記事)は基本的に、解説したいネタの他に独自の調査やデータ、聞き込み(この前会った企業担当者はこういっていた、なども含む)などを文章にしており、世界で僕しか書けない文章になっております。情報収集からライティング、アップの準備を含めれば、結局、1記事90〜120分くらいかけています。それを数分の作業でパクられたら、気持ちよくないですよね。というか犯罪だし。

では、そもそも引用って何ということですが、以下、参考にして下さい。

1、漫画の一コマをアイキャッチで使う

2、お気に入りの画像やイラストをアイコンに使う

3、面白かったフレーズをTwitterに投稿する

4、海外記事を翻訳・意訳する

5、芸能人の写真をアップする

出典:要注意! ブログやソーシャルメディアでやってしまいがちな著作権侵害5パターンと基礎知識

では、世間では、バイラルメディアの倫理観についてどのようなイメージがあるのか、いくつか引用します。

「バイラルメディア」安易なシェアに潜むリスク うまく付き合う3つのポイント

上記の記事では、FacebookやTwitterで行う「シェア」という行為のリスクと、バイラルメディアの“カモ”について解説されています。悪意をもった面白い記事を配信するバイラルメディアも多くあるので気をつけて下さいと。もはやバイラルメディアは、そういう“どちらかというと危険なメディア”となっているようで、その倫理観に憤りすら感じます。

旅ラボが謝罪コメントを出すも燃料投下でさらに炎上

上記の記事では、バイラルメディア「TABI LABO」のコピーコンテンツについての解説がされています。冒頭で解説したとおり、引用という行為は法で規定されており、今回のようにバレると叩かれることになります。問題なのは、今現在、トップの謝罪がない事があるかもしれません。

TABILABOさんの場合、謝罪コメント「【お詫びとお知らせ】参照元の表記漏れに関する弊社見解と、今後の対応方針に関して」が謝罪していないとか、トップ、つまり、運営会社の代表か、メディアの代表である編集長の署名がないと叩かれていました。

バイラルメディアの謝罪記事がバイラルするという、笑うに笑えない事態が先週起きまして、まさに、バイラルメディアのあり方と倫理観を問うマイルストーンになっています。

加えてTABI_LABOは逸材だったのかもしれない:炎上して経営メンバーリスト「だけ」削除という、ウェブでよくある「問題があったら削除して逃げる」という卑劣な行為が行われており、コンプライアンス遵守というか、説明責任を果たしてほしいというステークホルダーの社会的要請も否定されているようです。

何でもそうですけど、何か犯罪及び犯罪に準ずる行為が企業活動の中で行われた場合、CSR(企業の社会的責任)を果たすべく、説明責任を果たして欲しいというのがステークホルダーの心理です。謝罪がなかったり、謝罪があってもさらに炎上する(二次不祥事)が起きるというのはよろしくありません。

国内のバイラルメディアの評判は総じて悪いのは、上記のように運営元の低い著作権意識や、悪意ある使われ方が目立つということもあるかもしれません。多分、弁護士や第三者の意見を反映する前に、勢いで発言をしたりリリースを出してしまうのでしょう。バイラルメディアの謝罪記事がバイラル(拡散)するという、笑うに笑えない事態になってしまっているのが残念です。

当Yahoo!ニュース個人でも話題の記事『盲導犬 「絶対に許せない!」に要注意!』にもあるとおり、コンテンツを閲覧するのと引き換えに、必要以上の個人情報を求めるケースもあるので注意が必要です。

■事例:たかの友梨・ビューティクリニック

エステの「たかの友梨・ビューティクリニック」(不二ビューティ)の労働問題が話題です。店舗が劣悪な労働環境であったのに、申告したら、社長が悪びれず従業員を問いつめたという事件です。つまり、社長じきじきのパワハラです。

先日Yahoo!ニュースでも『「たかの友梨」はブラック企業なのか?』という記事が話題になっていました。オーナー社長は、実力やセンスがあるということもさることながら、ハードワークを自社従業員に強要してしまうことが多いように思います。

よくメディアに登場するのは、外食のワタミさんや、すき屋のゼンショーさん、ユニクロのファーストリテイリングさんなどでしょうか。しかし、パワハラはダメですね。では、世間では、たかの友梨・ビューティクリニックの倫理観についてどのようなイメージがあるのか、いくつか引用します。

「たかの友梨社長、組合活動に圧力」パワハラを受けたとして従業員らが申し立て

今回の事件の解説が一番わかりやすく書かれていたので引用します。企業のトップが贅沢な暮らしをマスメディアで自慢している、という実態も火に油を注ぐことに加担しているようです。

ブラック企業大賞に「たかの友梨」「ゼンショー」緊急ノミネート

何かと話題の日本のブラック企業の祭典「ブラック企業大賞」に今回の一件からノミネートされたようです。エステ・アパレル・外食・建設などの業界は、ザ・労働集約みたいな産業で、労働問題が起きやすいと言われています。そんなの誰でも知っているのだから、対策とればいいじゃん、と思うのですが、なかなかそうもいかないようです。

たかの友梨さんは社員の視点を持つべきだったと思う

上記の記事では、企業経営者の視点で今回の話を解説しています。メディアで高級家具や高級住居の自慢されても、残業代ももらえない社員が見たら「搾取されてる」と思って当たり前でしょう、と。世の中金じゃない!と日頃言っている社長が、外車を5台乗り回していたら、残業代ももらえない社員は怒って当然だと思います。

他にトップや事業活動の倫理観を痛烈に問う炎上があったのは、「朝日新聞:池上氏連載取消事件(現在進行形)」や「日本テレビ:24時間テレビ」などでしょうか。昨年「なぜか毎年起きる、チャリティー番組の芸能人ギャラ問題」という記事を当Yahoo!ニュース個人で書き、トピックスにとりあげてもらいましたが、今年もネット界隈では燃えていたようです。

24時間テレビは、批判が多いものの、犯罪や犯罪に準じる行為が行われたとか、トップの大きな倫理観の欠如ということでもない話題でしたので、ご紹介だけとさせていただきます。

またコンプライアンスの対応策については、「コンプライアンス事例? コンプライアンス違反と意識調査の3事例」、「従業員は使い捨てますが、名目上「人材は宝なり」と言っています」、「半沢直樹にはなれないっしょ! コンプライアンス違反を密告できないわけとは?」という記事も合わせて参考にしてみて下さい。

■まとめ

で、結局、企業はどんな対策をすればよいか。答えの一つはトップ主導のガバナンス(企業統治)でしょうね。法令を遵守していきましょうというコンプライアンスが成り立たないのは、そもそも組織の中でコンプライアンスが成り立つ仕組みがないからです。いわゆるガバナンスの問題ですね。

企業のトップが、犯罪及び法令違反に準じる行為・言動をしている時点で、アウトです。また、トップが本気で真摯に謝罪なり対応をしないと、火に油を注ぐ状態になります。上記の炎上案件では、トップが全面に出ての謝罪なり対応なりがないから、ここまで炎上が広がってしまったとも言えるでしょう。

これはメディア企業だけではないのですが、しっかりと組織やコンテンツを制御できる仕組みを作り(ガバナンス)、適法な事業活動をし(コンプライアンス)、多くの人に、幸せや感動などを届けていくべきです。

トップが従業員からの搾取を何とも思わなければ、ガバナンスは機能しません。現実的にオーナー社長に逆らえる人間なんてほとんどいないでしょう。

トップが他社メディアからのコンテンツ盗用を何とも思わなければ、ガバナンスは機能しません。以前から指摘されている所が多いらしいので、現場からトップへのクレーム対応ホットラインとかないんでしょうね。このあたりは僕の「個人ブログ」でも積極的に追っていきます。

決して人ごとではないので、炎上したらトップがどう謝罪するかくらい決めておいてもいいでしょうね。9月になり随分涼しくなったとはいえ、まだまだ暑い日ならぬ熱い日(炎上による)があると思いますのでご自愛下さいませ。

サステナビリティ・コンサルタント

サステナビリティ経営の専門家。一般社団法人サステナビリティコミュニケーション協会・代表理事。著書は『未来ビジネス図解 SX&SDGs』(エムディエヌ)、『創発型責任経営』(日本経済新聞出版)ほか多数。「日本のサステナビリティをアップデートする」をミッションとし、上場企業を中心にサステナビリティ経営支援を行う。2009年よりブログ『サステナビリティのその先へ』運営。1981年長野県中野市生まれ。

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