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なぜか毎年起きる、チャリティー番組の芸能人ギャラ問題

安藤光展サステナビリティ・コンサルタント
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日テレ24時間テレビ

夏の風物詩ともなっている24時間テレビ「愛は地球を救う」が色々な意味で、今年も話題になっています。

日テレ24時間テレビ「チャリティーなのにギャラおかしい」 週刊誌が出演者のギャラ金額を報じ、議論が再燃

先日、「画期的なCSRの取組み! 日本テレビの社会貢献番組「PEOPLE MAGNET TV」」という日テレの先進的な社会貢献番組の紹介記事を書きましたが、こういう類いの話を見聞きすると、もったいないなぁって思っちゃいます。

別に誰が悪いとかではないんですけど、やっぱりチャリティーの説明責任って大事なんだよな、と思うのであります。お金を預かる以上、説明責任は追求されて当然ですよね。一般視聴者が寄付で“買う”ものは、具体的なNPOの支援などですよね。

当たり前ですが、寄付であろうとお金を払う以上、それなりの対価を求めます。それが芸能人の高額ギャラ(実際はスポンサー出資の制作費からでるだろうけど)になると思うと…。

これはCSRにも言える事で、そのあたりも少し考えてみます。ちなみに公式番組サイトのサイドバナーには、日テレのCSRコンテンツへのリンクがあったりしていて、日テレさんの「CSR的番組の一つ」の一つとして位置づけされているようですね。

説明責任とは何を説明すればよいのか

CSR活動のポイントとして、自社の利害関係者に対して説明責任を果たしていくこと(CSRコミュニケーション)が最近注目されています。何を説明すれば、責務を果たしていると言えるのかという問題がありますが、今回の問題でもあります、「お金の流れ」も一つでしょう。

NPOでいう「活動報告」の部分になると思いますが、チャリティイベントをして「いくら集まりました」だけの報告は、こういう理解のギャップを生みやすいです。チャリティイベントの収支詳細を公表しろとまではいいませんが、毎年追求される課題があるのに放置するのはさすがにマズいのではないでしょうか。

日本テレビは、「基本的にボランティアでお願いしております。しかし、拘束時間の長い方など、場合によっては謝礼という形でいくらかのお支払をしております」(2000年11月「放送倫理・番組向上機構」での回答)と説明しているが、実際には全ての出演者にギャラが発生しているのは公然の事実。その総額は2億とも3億ともいわれている。かつて91年の司会に起用された帰国子女の西田ひかるが、「まさか出演料が出るとは思わなかった」と、"日本式チャリティ"のやり方に唖然としたという話は今では語り草だ。

出典:外国人も呆れる″エセチャリティ″『24時間テレビ』最大の過ちとは(2009年)

本当に、毎年視聴者の中で問題視されているのに、何も改善されてないんですね。別に支払うなとは言いませんけど、「チャリティ価格」の出演料金でもいいのかもしれません。数十億円レベルの寄付を集めているのに、これだけの説明では寄付者で納得できない人が多いのも頷けます。

今回の事例でいえば、「芸能人が報酬をもらう」ことが問題なのではなく、自社のステークホルダーに説明しきれていないのが問題なのでしょう。視聴者らから寄付を数十億円集めていながら、芸能人参加者に数千万円レベルの報酬を払っていれば、「どうなってるの?」という人が増えるのはわかる気がします。

ただ、誤解してほしくないのですが、チャリティ事業の運営に費用がかかります。ですので、番組制作費のすべてをチャリティにまわすことは不可能なのです。それは僕でも理解できます。

チャリティ番組という視聴者とのコミュニケーション

使い道も問題でしょうね。「福祉」「環境」「災害援助」の3カテゴリーに寄付されるようで、詳細ページにいくとどんな活動に使われたか書かれていますが、ちょっと、導線がわかりにくく、該当ページまで辿り着ける人はそれほど多くないかもしれません。だから、毎年、ギャラがどうとか、寄付予算の使い方がどうとか話題になっている可能性もありますね。

欧米のチャリティー番組のように、出演者の報酬はタダというのもありですが、日本ではセレブや芸能人のノブレス・オブリュージュ(社会貢献への意識)が高いとは思えません。著名人が無料でアクションをするからこそ、価値があるのがチャリティですよね。社会的影響力があるからこそのリーダーシップが、日本人の多くの方には当てはまらないようです。

現状のままでいくなら、説明責任(CSRコミュニケーション)をより強化していただきたいです。ただ活動報告をするだけではなく、ステークホルダーの知りたいことを伝えるのが説明責任を果たしていることになるのですから。

以前、テレビ東京のCSR担当の方を取材した記事「メディアのCSRとは何かーーテレビ東京のCSRウェブコンテンツ」も書いたのですが、ステークホルダーがテレビ局には多く、利害関係のすべてを超越したコミュニケーションというのは、確かに困難を極めます。CSR担当部署、コーポレートコミュニケーション担当部署の腕の見せ所なのかもしれません。

ちなみに、余談ですが、昔、チャリティーTシャツ買ったことがある僕です。日テレさんは、60周年記念で社会貢献番組しちゃうくらい先進的なメディア企業なので、陰ながら応援しております。

8月16日追記

日本テレビは16日、毎夏恒例の日本テレビ系『24時間テレビ36 愛は地球を救う』(8月24日、25日放送)で2年連続メインパーソナリティーを務める嵐に対し、一部写真誌で「5000万円」のギャラが支払われていると報じられたことを受け、コメントを発表。「今年もボランティアで務めて頂いております」と全面否定した。

出典:日テレ、『24時間テレビ』メイン司会・嵐のギャラ支払い報道否定

というわけで、日本テレビの説明があったらしいですね。去年も騒がれたのだから、週刊誌で話題になってすぐに発表すればよかったのではないでしょうか?「火のない所に煙はたたない」ともいいますし、否定コメントがあるとなおさら「えっ?他の人は?」とより説明責任を求める声がでてきそうですが…?

しかし、当記事のコメントにもあるとおり、拘束時間の長い人には、さすがにギャラを払ってもいいのでは、とは思います。経過を見させていただき、興味深い事例(番組)なので、継続して勉強させていただきます。

日テレさんは好きなテレビ局の一つなので、一人の視聴者として応援しております。

サステナビリティ・コンサルタント

サステナビリティ経営の専門家。一般社団法人サステナビリティコミュニケーション協会・代表理事。著書は『未来ビジネス図解 SX&SDGs』(エムディエヌ)、『創発型責任経営』(日本経済新聞出版)ほか多数。「日本のサステナビリティをアップデートする」をミッションとし、上場企業を中心にサステナビリティ経営支援を行う。2009年よりブログ『サステナビリティのその先へ』運営。1981年長野県中野市生まれ。

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