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駐車場の取り合い、卵投げ。情けない罪で逮捕されたハリウッドスターたち

猿渡由紀L.A.在住映画ジャーナリスト
今週、ニューヨークの裁判所に出頭したアレック・ボールドウィン(写真:代表撮影/ロイター/アフロ)

 普通にしていても人の目を引いてしまうのがセレブ。どんなに小さくても、悪いことはできない。なのに、時には、とっさに間違った判断をしてしまい、大恥をかくこともある。最近は、またアレック・ボールドウィンが、くだらない騒ぎを起こして裁判所に出頭するはめになった。

 理由は、今月初め、ニューヨークで、駐車場のスペースをめぐってほかの男性と言い争いをしたこと。ボールドウィンが友人を使って自分のために取っておいてもらったスペースに、その男性の車がすべり込んできたのだという。当時は、口論の末、ボールドウィンがその男性を殴り、男性は病院に運び込まれたと報道されたが、ボールドウィンは最初から「手を出してはいない」と主張。彼の弁護士は証拠ビデオを検察に提出し、今週、裁判所は、暴行容疑から暴行未遂容疑へと格下げして起訴した。ボールドウィンは保釈金なしで釈放され、来年1月、再び裁判所に出頭することになっている。

 ボールドウィンは過去にも何度か争いごとを起こしてきた。パパラッチとの喧嘩はまだ同情できなくはないが、飛行機のドアが閉まり、「これより携帯機器の使用を禁止します」とのアナウンスがあったのに無視を続けて機内から追い出されたのは、弁解の余地がない。現在の妻はヨガの先生なのだし、ふたりの間には0歳から5歳の子供が4人もいるのだから、もう少し感情のコントロールを学ぶ努力をしてみてはいかがなものか。

 60歳のボールドウィンと違い、「まだ若い」という言い訳が使えるものの、ジャスティン・ビーバーも迷惑行為の常習犯だ。4年前には、友人と共にご近所の家に10個以上の生卵を投げつけて、8万ドル(約900万円)の損害賠償と5日間の社会奉仕活動を言い渡された。閑静な高級住宅街だけに、ビーバーの騒ぎっぷりはそれ以前から近所の苦情のタネで、この行動は彼なりの仕返しだったようだ。しかし、この一件の後、ビーバーは、この家を売り払うと決めている。今やビーバーも妻を持つ身。これからはこんな話題と無関係であり続けることを願いたい。

 2008年には、中国人女優バイ・リンが万引きで逮捕されるという事件があった。現場はただでさえ監視の目が厳しいロサンゼルス国際空港。盗んだのはゴシップ雑誌2冊と電池のパックひとつだ。それより前に、ウィノナ・ライダーもビバリーヒルズの高級デパートで万引きをして捕まったが、彼女が盗もうとしていた商品の総額は5,500ドル(約62万円)と、高額だった。片や、この雑誌と電池は合わせて16ドル(約1,800円)だったそうである。もちろん、値段がいくらかにかかわらず盗みは盗みだが、16ドル程度でこんな大恥をかくのは、あまりに割が悪い。

即座に謝罪し、イメージダウンを逃れたヒュー・グラント

 もっと昔にさかのぼれば、1999年にはマシュー・マコノヒーがテキサスの自宅で真夜中に大騒ぎをし、近所の人から警察に通報されている。警察が中に入ると、マコノヒーは素っ裸で、男友達とボンゴを叩きながら踊っていた。警察が服を着るように言っても無視し、連行されるのを拒否もしたことから、彼は9時間を刑務所で過ごすことになっている。麻薬所持の疑いもかけられていたが、それは取り下げられ、容疑は騒音のみとなって、50ドル(約5,700円)の罰金ですんだ。

 1995年には、ヒュー・グラントが、L.A.のサンセット通りで売春婦に相手をしてもらっているところを、警察に逮捕されている。「フォー・ウェディング」のヒットで、ハリウッドの主役級スターとしての階段をまさに駆け上っていた頃だ。彼には、当時最もホットな女性だったエリザベス・ハーレイという恋人もいたのに、である。売春婦の値段は40ドル(約4,500円)だったが、彼は結局、1,180ドル(約13万円)の罰金を払うことになった。ちょっとしたお遊びは、思ったよりずっと高くついてしまったわけだ。さらに、その売春婦が独占ネタをイギリスのタブロイド紙に10万ドル(約1,100万円)で売ったことから、恥の上塗りもさせられている。

 だが、グラントが賢かったのは、即座に謝罪をしたことだろう。警察から釈放されてすぐ、グラントは「昨夜、僕は、本当に気が狂ったことをしてしまいました。自分が愛する人たち、一緒にお仕事をさせていただいた人たちに、恥ずかしい思いをさせてしまいました。謝罪の言葉もありません」と声明を発表したのだ。テレビ出演も、逃げるどころか堂々と受け、トーク番組の司会者ジェイ・レノに、「いったい、あなたは何を考えていたのですか?」と聞くことも許している。それに対し、グラントは、注目される立場になったことでプレッシャーがあるのだとか、キャリアのために母国イギリスを離れて長くアメリカで過ごすのが孤独だったのだとか、世間がいろいろ自分の行動を分析していることは知っていると、やや居心地悪そうに答えた。しかし、彼なりの答は、「世の中には、やるのが正しいことと、やるのが間違っていることがある。僕は、間違ったことをしてしまった。つまりは、そういうこと」。それでも自分を応援してくれている多くの人に対して、カメラを通じ、真摯な感謝の言葉も送った。

 興味深いことに、グラントは、この後、「ノッティングヒルの恋人」「アバウト・ア・ボーイ」「ブリジット・ジョーンズの日記」などヒット作に出演し、キャリアの黄金期を迎えることになる。人の記憶とは、所詮、すぐに消えてしまうものなのかもしれない。だが、もしかしたら、あの誠意ある姿勢が、人に「忘れてあげよう」と思わせたのとも言えなくはないか。「イッテQ!」スキャンダルでテレビ局の初動対応ミスが指摘される中だけに、この懐かしい話にも、ちょっと考えさせられるところがある。

L.A.在住映画ジャーナリスト

神戸市出身。上智大学文学部新聞学科卒。女性誌編集者(映画担当)を経て渡米。L.A.をベースに、ハリウッドスター、映画監督のインタビュー記事や、撮影現場レポート記事、ハリウッド事情のコラムを、「ハーパース・バザー日本版」「週刊文春」「シュプール」「キネマ旬報」他の雑誌や新聞、Yahoo、東洋経済オンライン、文春オンライン、ぴあ、シネマトゥデイなどのウェブサイトに寄稿。米放送映画批評家協会(CCA)、米女性映画批評家サークル(WFCC)会員。映画と同じくらい、ヨガと猫を愛する。著書に「ウディ・アレン 追放」(文藝春秋社)。

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