名古屋めしがガチャガチャに! リアルすぎるご当地ガチャの可能性とは?
思わず食べたくなる(!?)完成度の高さ
名古屋めしのガチャガチャが発売されて、各地で売り切れ続出と人気を博しています。正式な商品名は「名古屋の名店ミニチュアコレクション」。カプセルトイと呼ばれる自動販売機専用のミニチュア模型で、2022年2月末に売り出されました。
商品は5種類。「スパゲッティハウス・ヨコイ」のあんかけスパゲッティ、「あつた蓬莱軒」のひつまぶし、「喫茶マウンテン」の小倉トースト、「山本屋総本家」の味噌煮込みうどん、「味仙矢場店」の台湾ラーメンと、名古屋の有名店、人気店の名物メニューがズラリとラインナップされています。
驚くのはその完成度。色合いといい質感といい非常にリアルで、シズル感すら感じる出来栄えなのです。
ひとつひとつ手づくり! 器はプラスチックではなく陶製
「一点一点手づくりなんです!」 精巧さの最大の決め手を明かしてくれるのは企画したドリームカプセル・都築祐介さん。昨年末に売り出したういろうのガチャガチャで話題をふりまいた名古屋のカプセルトイベンダー(供給元)の代表者です。
(関連記事:「名古屋銘菓・ういろうのガチャガチャが異例のヒット! 鍵は驚きの完成度と地元愛」2022年1月18日)
「ほとんどのカプセルトイは型を使って量産するのですが、このシリーズはすべて手づくりで、パーツをひとつひとつ盛り付けているんです。また器は焼物を取り入れました。型で成形すると立体感が出ないし、器がプラスチックだと安っぽく見えてしまう。せっかく名だたるお店が協力してくれたのですから、お店の人にも納得してもらえるものをつくらないと申し訳ない、そう思ってクオリティにこだわりました」(都築さん)
その甲斐もあって売れ行きは好調。現在、全国約50カ所のドリームカプセル直営店で販売していて、週末には1日で自販機1台分(約30個)が完売することもあるそう。前作のういろうガチャは名古屋以外で先に人気に火がついたそうですが、今回の名古屋めしシリーズは地元でよく売れているといいます。
【どっちがどっち? 本物&ガチャを比較!】
既存客以外の層にもアピールできるプロモーションツールに
「話には聞いているけど実際に食べたことがない、というメニューもあるでしょうから、是非お店に足を運ぶきっかけにしてほしい」と都築さん。単なる料理の模型ではなく、実在するお店のメニューを再現しているため、ミニチュアをゲットしたら本物を食べに行きたくなることは必至。そんな「食べに行こう!」というアクションにつなげてもらうことが何よりの狙いだといいます。
モデルになった飲食店にとっても、プロモーション効果を期待できるといいます。
「うちのあんかけスパゲッティは40~60代の男性のお客様が中心。若い世代にも刺さるPR策を考えていたところだったので、お話をいただきふたつ返事でOKしました」とはスパゲッティハウス・ヨコイの横井慎也副社長。「ミニチュアメーカーの社長さんが食べに来てくれて、ソースのかけ方や具の盛り付け方に特徴があることを理解してつくってくれた。とてもかわいい出来栄えで満足しています」といい、近く市内3軒の直営店でも販売するといいます。
「あんこの粒々感とかちゃんと再現できている。うちは見た目のインパクトがあるメニューがたくさんあるので、喫茶マウンテンだけのコレクションをつくるとお客さんにも喜んでもらえそう」とは喫茶マウンテンの3代目・加納真史さん。
コロナ禍で急成長。ご当地ガチャで差別化を図る
名古屋めしシリーズのような“ご当地ガチャ”は全国各地で増えているそう。それにはカプセルトイ業界の事情と世相、さらには日本ならではの文化が反映されているといいます。
「カプセルトイはコロナ禍において急成長した産業です。人気アニメとのコラボ商品の魅力や対面接客のない安心感で需要が拡大。かつては主にゲームセンターや商業施設の通路に販売機を置いていたのですが、200台以上の販売機を集めた専門店型店舗が急増したのはここ数年のことです。国内メーカーは約40社あり、多い時は1カ月に400種ものシリーズが発売される。出店ラッシュがひと段落し、各社が生き残りを賭けて、ローカル色のある商品でオリジナリティを競うようになっているんです」と都築さん。
またカプセルトイは日本独自に進化した玩具、ビジネスだとも。
「ガチャガチャは1960年代にアメリカから輸入され、中身はガムボールでした。それが日本でミニチュアのおもちゃに進化した。小さく精巧な玩具を好む文化は昔からあって、全国各地の民芸品がルーツだと考えられます。日本独特の感性に訴えるものといえるし、デジタルコンテンツが主流になってもモノを所有したいという欲求がすたれることはない。今メインターゲットになっている30~40代に限らず、様々な層の心に響く商品を提案していけば、まだまだニーズをつかむ余地は十分あるはずです」(都築さん)
競争の激化でメーカーが個性と完成度を競い合う中で、より多くのユーザーを掘り起こすためにニッチでも深く刺さる商品が求められる。そんな市場動向の中で、ご当地ガチャは個性を打ち出し、ターゲットを広げるのにうってつけというわけです。
「グルメに限らず名古屋、愛知のモノづくりをテーマにした商品もつくっていきたい」という都築さん。その言葉の通り、グルメ、キャラクター、伝統産業、建築などなど…今後も多様な名古屋愛に響くご当地ガチャがどんどん誕生することが期待されます。
既存のファンとは異なる層にもアピールでき、高い完成度でモデルの価値も高まる。ガチャガチャは今後、企業のプロモーションや地域活性化にとっても、有効なツールになっていくかもしれません。
(写真撮影/すべて筆者)