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教員の不信をまねく文科相の発言

前屋毅フリージャーナリスト
(写真:西村尚己/アフロ)

「校長や副校長など管理職がしっかり管理をしてほしい」と述べたのは、萩生田光一・文科相である。これを知って、「はぁ?」となった教職員は多いのではないだろうか。

 8月25日の閣議後会見でのことだが、新型コロナウイルスの感染症(新型コロナ)拡大による授業の遅れや消毒などへの対応に伴う教員の長時間勤務についての発言である。「臨時休校に伴う授業時間の増加や、子どもの健康観察、消毒作業など、学校の業務量が増大している現状は承知しているつもり」と、新型コロナによって多忙な教員がさらに多忙になっていることを萩生田文科相も認めている。

 そのうえで、「教員は、やっぱり使命感が強い。授業の遅れを取り戻さなくてはいけないなどとして、結果として長時間労働になってしまっている実態は否めない部分があるとおもう」と発言したという。授業の遅れを取り戻すために長時間労働になってしまっているのは「教員自身のせい」であり、教員が望んでやっているからだ、と言っているに等しい。

 長期休校による授業の遅れについて、「来年度、来来年度へ繰り越してもいい」としながらも、「年度内に終える」ことを実質的に強いているのは文科省である。そのために学校では、授業時数を増やさざるをえない状況となっており、そのために教員は長時間労働になっている。子どもの健康観察や消毒作業を実質的に指示しているのも文科省である。そのため教員は長時間労働を強いられることになっている。

 にもかかわらず、「使命感が強い」からと教員の自発的行為であるような言い方はいかがなものだろうか。

 そして、「健康を害する可能性があるような事態まで、教員が追い込まれてはならない」と萩生田文科相は強調する。しかし文科省が対策を講じる方針を示すわけでもなく、冒頭に紹介した「校長や副校長など管理職がしっかり管理をしてほしい」と続くのだ。

 問題が起きれば、「管理職の責任、管理職が悪い」とされてしまいかねない。文科省は責任を放棄している。

 この萩生田文科相の発言によって、学校現場は文科省への失望感を深めるかもしれない。

フリージャーナリスト

1954年、鹿児島県生まれ。法政大学卒業。立花隆氏、田原総一朗氏の取材スタッフ、『週刊ポスト』記者を経てフリーに。2021年5月24日発売『教師をやめる』(学事出版)。ほかに『疑問だらけの幼保無償化』(扶桑社新書)、『学校の面白いを歩いてみた。』(エッセンシャル出版社)、『教育現場の7大問題』(kkベストセラーズ)、『ほんとうの教育をとりもどす』(共栄書房)、『ブラック化する学校』(青春新書)、『学校が学習塾にのみこまれる日』『シェア神話の崩壊』『全証言 東芝クレーマー事件』『日本の小さな大企業』などがある。  ■連絡取次先:03-3263-0419(インサイドライン)

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