Yahoo!ニュース

ウクライナ副首相からイーロン・マスクへのtwitterによる交渉が成立〜スターリンク作戦始動〜

神田敏晶ITジャーナリスト・ソーシャルメディアコンサルタント
出典:ウクライナ フョードロフ副首相 デジタル変革大臣 tweet

KNNポール神田です。

ロシアのウクライナ侵攻中の現在、ウクライナのミハイロ・フュードロフ副首相兼デジタル変革大臣は、イーロン・マスクあてへのツイートで通信衛星回線を要請した。

2022年2月26日 土曜日21:06

『@イーロンマスク、あなたが火星を植民地化しようとしている間に、ロシアはウクライナを占領しようとしている!

あなたのロケットが宇宙着陸に成功している間に、ロシアのロケットがウクライナの市民を攻撃しているのです。

ウクライナにスターリンク局を提供し、まともなロシア人に立ち向かえるよう、お願いします』

ウクライナ ミハイロ・フュードロフ副首相

このtwitterの要請を受け、イーロン・マスクは、twitterでこう答えた。

2022年2月27日 日曜日7:33

ウクライナでスターリンクのサービスが開始されました。さらに多くのターミナルが控えています。

なんと、イーロン・マスクは、10時間後のスピード回答である。

そして、その12分後には、フュードロフ副首相からのお礼がツイートされた。

2022年2月27日 日曜日7:45

スターリンク社の端末がウクライナにやってくる! ありがとうイーロン・マスク、ウクライナを支えてくれた皆さん、ありがとうございました。

ウクライナ ミハイロ・フュードロフ副首相のフォロワーは、4.6万人、そしてイーロン・マスクのフォロワーは、7,533万人というフォロワーの聴衆のもとでこのやりとりがなされている…。

むしろ、国家元首のやり取りよりも早く、そして世界中に一斉にリアルタイムにそのやりとりが周知される。

まさに、イーロン・マスクは、ウクライナの危機を電子機器で救うアイアンマンのようだ。

■宇宙からインターネットを展開する『スターリンク』

スペースX社の『スターリンク』は、高度約550キロの地球低軌道に約1万2000基の通信衛星を自社ロケット『ファルコン9』で打ち上げて、世界中のどこでも高速インターネットが使えるようにするもの。 最初が高度550kmの約1,600基の衛星で、次が高度1,150kmのバンドを用いる約2,800基の衛星、さらに高度340kmのVバンドを用いる約7,500基の衛星である。10年におよぶ計画の総コストは、設計・製造・打ち上げなど100億ドル(1兆円)近くに達すると推計されている。

■Apple、ティム・クックCEOへロシアへのAppSrore閉鎖のお願いの書簡も公開!

ウクライナのフュードロフ副首相のtwitterによる外交戦略はとどまるところを知らない…。twitter外交でありとあらゆるコストと時間をかけない戦略を公開している。

2022年2月26日土曜日6:48

AppleのCEOである@tim_cookに、ロシア連邦の市民に対するApple Storeをブロックし、アメリカ政府の制裁のパッケージをサポートするよう連絡しました!。大統領キラーに同意するなら、唯一利用可能なロシア24で満足するしかないでしょう。

これに対してのティム・クックCEOの答えは、まだないが、このツイートの1日前の2月25日(金曜日)にこのようにコメントしている。

2022年2月25日金曜日9:26

私は、ウクライナの状況を深く憂慮しています。私たちは現地のチームのためにできる限りのことをしていますし、現地の人道支援活動も行っていくつもりです。今、危険にさらされている人々のことを考え、平和を求めるすべての人々とともに行動しています。

■ViberとPayPalがロシアをブロック対象へ?

フュードロフ副首相の書簡公開がさらに続いている。

2022年2月27日(日曜日)

私達は、侵略者隔離の開発に常に取り組んでいます! 楽天(@Viber)のCEOと連絡を取りました。

PayPalはロシアでサービスをブロックしています。若者と考えるロシア人、目を覚ました方が良い。

Toshiko Otsuka 大塚 年比古氏は Rakuten Europe Bank S.A.の執行役員

Viber』は楽天が所有するインターネット電話アプリ。

日本ではマイナーであるが、ロシアでは2,800万人のユーザーがいる。2014年に楽天が9億ドルで買収。本社はキプロス共和国で開発はベラルーシで日本企業の楽天の子会社。

しかし、Viber側は意味深なツイートを木曜日にしていた。

2022年2月24日木曜日10:24

私たちは #ウクライナ / ロシア の状況を注意深く監視し、すべてのユーザーが大切な人との自由なコミュニケーションや情報へのアクセスを継続できるようにしたいと考えています。平和的な解決と、ユーザーや同僚、その家族の安全が継続することを望んでいます。

【追記】2022年2月27日日曜日の、楽天の英文コメントでは、ロシアでも提供を続けると声明し、無料のクーポンを配布するプログラムも開始し、広告も削除した。ウクライナでのネット電話アプリのViberインストール率は97%

ロシアでは44%

ウクライナ、ロシア、そしてこの地域のユーザーを支援するため、世界34カ国の固定電話や携帯電話など、あらゆる電話番号に無料で通話できる「Viber Out」のプログラムを開始しました。私たちは偽情報に対抗するための強力な手段を講じ、プラットフォーム上で真実の情報源を積極的に広めています。また、Viberは、市民の合法的で自由な言論活動に関する情報をいかなる政府とも共有しておらず、今後も共有することはないということを絶対に明言したいと思います。最後に、私たちのアプリでの活動から利益を得る人がいないことを保証するために、ウクライナとロシアにおけるすべての広告をViberアプリから削除しているところです。

https://global.rakuten.com/corp/news/update/2022/0227_01.html

■楽天三木谷氏の個人10億円のウクライナへの寄付

一方、Viberの親会社の楽天の三木谷氏は、ウクライナのザランスキー大統領へ10億円を寄付する書簡を添えた…。

ウクライナの人々のために、このいわれのない攻撃に対して勇敢に抵抗する皆さんの姿を見たとき、日本でウクライナのために何ができるかを考え、ウクライナ政府に10億円(870万USドル)を寄付し、暴力の犠牲になっているウクライナの人々を助けるための人道的活動に使ってもらうことにしました。

ロシアとウクライナがこの問題を平和的に解決し、ウクライナの人々が一日でも早く平和を取り戻せることを心から願っています。私は、今後もウクライナとその国民への支援を続けていきます。

私はウクライナとともに歩んでいます。

敬具

三木谷 浩史

https://news.yahoo.co.jp/articles/568c9b9e4015ca53a1c526740986b6e9a5070d8f

あくまでも個人としての寄付とあるが、三木谷氏の一声で、Viberのロシアでのサービス停止も可能となるのかもしれない。

むしろ、数ヶ月先に影響のでる経済制裁よりも、明日から止まってしまうサービス制裁のほうが国民にとっては恐ろしいからだ。

■サイバーテロの前に情報遮断するのもひとつの戦略

ウクライナに対するサイバー空間での緊張も高まっています。Gamaredon(ガマレドン 別名:ARMAGEDON)のような従来の偵察活動とみられる活動に加え、2022年1月13~14日にかけて実施されたウクライナ国家機関等へのWebサイト改ざんおよびシステム破壊を伴うサイバー攻撃、および2022年2月15日と23日に発生したウクライナ政府機関や銀行へのDDoS攻撃のように、ウクライナのインフラの妨害や、サイバー攻撃自体の誇示を目的としたような活動が短期間にウクライナのCERT(CERT-UA)より報告されています。

https://blog.trendmicro.co.jp/archives/30466

今回のウクライナ侵略だけではなく、サイバー侵略も進んでいるいるようだ。

米メタ(旧フェイスブック)は(2022年2月)25日(金)、ロシアで当局が同社のSNS(交流サイト)へのアクセスを制限したと明らかにした。メタが第三者のファクトチェックに基づいてロシア国営メディアの投稿を規制しているのに対し、ロシア側は違法と主張している。サイバー空間をめぐる攻防が激化してきた。

https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGN2607F0W2A220C2000000/

むしろ、ロシア市民にとっても痛いのが西側からのサービスが遮断されることかもしれない。ロシアには1億人参加の『VK.com フコンタクチェ』というFacebookクローンがあるのでそれほどの影響はないが、『Viber』や『PayPal』のようなサービスが遮断されると、国民の生活に支障がでてくることだろう。

ロシア国民全員がウクライナ侵攻支持ではないが、ロシア国内でのプロパガンダでは自国の同胞を守るためとあるので、西側のサービスの遮断は慎重に行動する必要がある。

これは、国家を超えて、GAFAなどのネットサービスがすでに世界の国民に浸透しているからといえよう。

ウクライナのミハイロ・フュードロフ副首相兼デジタル変革大臣がいることによって、世界に自分の意思で動けるリーダーがいることの影響力が可視化されている。

常に、Twitterの

https://twitter.com/FedorovMykhailo

DeepLの翻訳は欠かせない日々となった。

マスメディアの媒体による伝聞と、ウクライナの中枢ではスピードがまったく違う…。

果たして、日本で万一の時に、この役を担える人は果たしているのだろうか?

ITジャーナリスト・ソーシャルメディアコンサルタント

1961年神戸市生まれ。ワインのマーケティング業を経て、コンピュータ雑誌の出版とDTP普及に携わる。1995年よりビデオストリーミングによる個人放送「KandaNewsNetwork」を運営開始。世界全体を取材対象に駆け回る。ITに関わるSNS、経済、ファイナンスなども取材対象。早稲田大学大学院、関西大学総合情報学部、サイバー大学で非常勤講師を歴任。著書に『Web2.0でビジネスが変わる』『YouTube革命』『Twiter革命』『Web3.0型社会』等。2020年よりクアラルンプールから沖縄県やんばるへ移住。メディア出演、コンサル、取材、執筆、書評の依頼 などは0980-59-5058まで

神田敏晶の最近の記事