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「不倫」をしても離婚請求はできるのか(その2)~「別居期間」はどの程度求められるか

竹内豊行政書士
有責配偶者からの離婚請求は、どの程度の別居期間があれば認められるのでしょうか。(写真:アフロ)

前日ご紹介した、「不倫」をしても離婚請求はできるのか~請求が認められる「3つ」の要件で、有責配偶者(不倫をしたなどで夫婦関係の破綻の責任がある配偶者)からの離婚請求が認められには、「夫婦の別居が両当事者の年齢及び同居期間との対比において相当の長期間に及んだこと」(相当期間の別居)、「未成熟子の不存在」、「相手方配偶者が離婚により精神的・社会的にきわめて過酷な状態に置かれることがないこと」(過酷状態の不存在)という3つの要件が満たされる場合に離婚請求が容認される(最高裁判決昭和62年9月2日)ということをお伝えしました。

そこで今回は、「相当の期間の別居」について深掘りしてみたいと思います。

容認された別居期間

その後、最高裁判所が示した3つの要件について議論が進められていきました。

「相当の長期の別居」という点については、前掲の最高裁判決が昭和62年9月2日に下した判決後、最高裁判所で次の別居期間で有責配偶者からの離婚請求を認容する判決が下されています。

・30年間(昭和62年11月24日)

・22年間(昭和63年2月12日)

・16年間(昭和63年4月7日)

・10年間(昭和63年12月8日)

・8年間(平成2年11月8日)

・9年間(平成5年11月2日)

・14年間(平成6年2月8日)

容認されなかった別居期間

一方、別居期間が8年間の場合(平成元年3月28日)と11年間の場合(平成2年3月6日)に離婚請求を棄却する判決が出ています。

「時の経過の影響」を考慮して判断される

平成2年11月8日の最高裁判決の要旨は次のようになっています。

別居期間が相当の長期間に及んだかどうかを判断するに当たっては、別居期間と両当事者の年齢及び同居期間とを数量的に対比するのみでは足りず、時の経過がこれらの諸事情に与える影響も考慮に入れるべきものであると解するのが相当である。

このように、「相当の別居期間」の有無の判断は、ただ単にその期間の長さ、当事者の年齢や同居期間との対比によって判断するのではなく、時の経過の影響を考慮して判断しているようです。

夫婦関係は、個々の夫婦によってその事情は当然異なります。したがって、一概に、「10年以上別居したら離婚ができる」という明確な基準を示すことは困難なようです。

行政書士

1965年東京生まれ。中央大学法学部卒業後、西武百貨店入社。2001年行政書士登録。専門は遺言作成と相続手続。著書に『[穴埋め式]遺言書かんたん作成術』(日本実業出版社)『行政書士のための遺言・相続実務家養成講座』(税務経理協会)等。家族法は結婚、離婚、親子、相続、遺言など、個人と家族に係わる法律を対象としている。家族法を知れば人生の様々な場面で待ち受けている“落し穴”を回避できる。また、たとえ落ちてしまっても、深みにはまらずに這い上がることができる。この連載では実務経験や身近な話題を通して、“落し穴”に陥ることなく人生を乗り切る家族法の知識を、予防法務の観点に立って紹介する。

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