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「結婚」について知っておきたい法知識~「婚約」するとどうなるのか

竹内豊行政書士
婚約指輪の交換は、婚約の成立を証明する一つの事実になります。(写真:イメージマート)

明けましておめでとうございます。

今年も「家族法で人生を乗り切る」をテーマに、結婚、相続、遺言など、個人と家族に係わる法律をわかりやすくお伝えします。どうぞよろしくお願いします。

さて、お正月といえば初詣。「今年は人生のパートナーと巡り会えますように!」と祈願をした方もいらっしゃるのではないでしょうか。

そこで、結婚前に行う、婚約を法的な観点で見てみたいと思います。

婚約はいつ成立するのか

婚約は、男女間に「結婚しましょう」「そうしましょう」といった具合に、「将来、結婚しよう」という合意があれば成立します。

婚約は、「将来結婚しよう」という約束ですから、婚姻(法律では、結婚のことを「婚姻」といいます)とは別のものです。したがいまして、「婚姻は、18歳にならなければ、することができない。」と定めている「婚姻適齢」(民法731条)に達しない場合でも、婚約は成立します。

結納や婚約指輪の交換などの儀式は、当事者間の結婚の意思を具体的に示すものとして、婚約の成立を証明する一つの事実になります。

婚約の法的な意義

婚約により当事者は結婚の成立を当然期待します。そして、結婚に向けて準備を進めます。

それにもかかわらず、一方的に婚約を解消されると、他方は精神的に大きく傷つきます。また、準備にかかった費用や婚約を機会に勤務先を退職したなど財産的な損害が発生することもあります。

このような場合、結婚の本質からみて、相手に婚姻の届出を強制することはできません。しかし、生じた損害について、婚約不履行の責任として賠償を認めることがあります。

その意味では、婚約は単なるプライベートな合意ではなく、「正当な理由」のない不履行については、法的な賠償責任が生じる、法律的な行為だといえます。

「正当な理由がない」として損害賠償が認められた事例

裁判で、婚約を解消としたことに対して「正当な理由がない」として、損害賠償を認めた事例をご紹介します。

  • 男性が婚約者以外の女性と交際を始め、婚約を解消した事例
  • 妻の存在を隠して婚約し、性的関係を持ち、それが露見して婚約を解消した事例 など

婚約不履行の損害賠償の範囲

精神的損害と財産的損害の2つに分けて考えられます。

精神的損害

婚約関係は夫婦生活の実体を備えるまでに至っていない関係です。したがって、その実体のある内縁関係の解消の場合よりも、正当理由について穏やかに認定すべきと考えられています。

婚約後、結婚を前提に交際してみて初めて分かることもあます。また、不安に思っていたことが結婚に向けて準備をする過程でますます明らかになることもあります。

婚約後に性格の不一致や、家族も含めた生き方・価値観の相違がはっきりしてきた場合には、無理に結婚をするよりは、自由に婚約を解消できるようにして、「結婚の自由」を保障すべきでしょう。

したがって、婚約解消に伴う精神的苦痛を賠償すべき場合というのは、婚約解消の動機や方法などが「公序良俗」に反し、著しく不当性を帯びている場合に限られると考えられています。

なお、「公序良俗」は民法に次のように規定されています。

民法90条(公序良俗)

公の秩序又は善良の風俗に反する事項を目的とする法律行為は、無効とする。

公の秩序とは国家・社会の一般的利益、善良の風俗とは社会の一般的倫理を意味します。

財産的損害

財産的損害としては、婚約から結婚に至るまでの準備にかかった次のような費用が挙げられます。

  • 結婚式場や新婚旅行などの申込金・キャンセル料
  • ウエディングドレスの購入
  • 披露宴招待状の発送費用
  • 挙式・披露宴費用、家庭用品の購入費用と婚約解消に伴う転居費用
  • 新居用のマンションの敷金・手数料・解約金 など

さて、実際に婚約をすると結婚に向けてお互いの理解と協力が恋人同士の頃と比べて一層必要になります。結婚式の方法や住居の選択などで意見や価値観が衝突して喧嘩をしてしまうこともあるかもしれません。

もし、このような状況になってしまったら、一人で抱え込まず、パートナーに率直に話して、お互い、心の底から話し合ってみてはいかがでしょうか。一層絆が強くなるきっかけになるかもしれません。

行政書士

1965年東京生まれ。中央大学法学部卒業後、西武百貨店入社。2001年行政書士登録。専門は遺言作成と相続手続。著書に『[穴埋め式]遺言書かんたん作成術』(日本実業出版社)『行政書士のための遺言・相続実務家養成講座』(税務経理協会)等。家族法は結婚、離婚、親子、相続、遺言など、個人と家族に係わる法律を対象としている。家族法を知れば人生の様々な場面で待ち受けている“落し穴”を回避できる。また、たとえ落ちてしまっても、深みにはまらずに這い上がることができる。この連載では実務経験や身近な話題を通して、“落し穴”に陥ることなく人生を乗り切る家族法の知識を、予防法務の観点に立って紹介する。

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