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もう、スマホがあればカメラは要らない!?

小久保重信ニューズフロントLLPパートナー
(写真:アフロ)

 スマートフォンのカメラ機能の高性能化に伴い、デジタルカメラの販売が落ち込んでいるという話はよく耳にするが、そのことを如実に示すレポートが、写真共有サービスの米フリッカー(Flickr)によって公表された。

コンパクトデジカメが急減速

 フリッカーによると、昨年(2017年)1年間、同社サービスに投稿された写真のうち、スマートフォンで撮影された写真は全体の50%に上った。

 一方、デジタルカメラは49%で、その内訳は一眼レフが33%、コンパクトカメラが12%、ミラーレス一眼カメラが4%。

 つまり、スマートフォンとデジタルカメラによる写真の比率は拮抗している。しかし、スマートフォンの比率は一昨年の48%から2ポイント上昇。これに対し、コンパクトデジタルカメラは、一昨年の21%から大きく低下した。

 ただ、デジタル一眼レフは同8ポイント上昇し、ミラーレス一眼は、3年連続して前年と同じ比率だった。

 もはや写真は、一眼レフを使って本格的なものを撮る以外、スマートフォンがあれば事足りる、ということなのだろうか。

アップル、キヤノン、ニコン

 もう1つ興味深いデータがある。こちらは、フリッカーの利用者が使っている機器のメーカー別比率だ。

 このデータによると、その比率は米アップルが54%と断トツで、このあと、キヤノンの23%、ニコンの18%と続いている。

 筆者は、20年ほど、海外テクノロジー企業と、その市場動向に関するニュースを見てきたが、久しぶりに、こうして日本メーカーが登場してくると、嬉しく思う。

 ところが、利用者が多い100機種をまとめたこのランキングでは、上位10機種中、9機種がアップルの「iPhone」だった。

 フリッカーによると、同社サービスの利用者では、「iPhone 6」「iPhone 6s」「iPhone 5s」を使っている人が多かった。

 一方、上位10機種の中に入ったデジタルカメラは、キヤノンの一眼レフ「EOS 5D Mark III」だけだった。

落ち込みが止まらない、世界デジカメ市場

 カメラ映像機器工業会(CIPA)の統計データによると、世界のデジタルカメラ出荷台数は、2010年の1億2150万台をピークに右肩下がりで推移し、一昨年(2016年)は2420万台にとどまる、という状況(図)。

画像

 過去6年間におけるデジタルカメラ市場の落ち込み(下降率)は、それ以前にあったプラス成長時代の上昇率よりも急激なものとなっている。

 アップルがiPhoneの初代機を市場投入したのは、2007年だった。それ以降、iPhoneを含むスマートフォンの普及や搭載カメラの高性能化によって、コンパクトデジタルカメラが低迷した、ということのようだ。

世界の撮影枚数、過去最高の1兆3000億枚

 さらにもう1つ、興味深いデータがある。米国の市場調査会社インフォトレンズは、世界の人々が撮る写真の枚数は右肩上がりで増えていると指摘している。

 いったい、これは何を示唆しているのだろうか?

 同社によると、昨年1年間の推計撮影枚数は、過去最大の1兆3000億枚。これは世界人口の75億人が、1人当たり年間170枚の写真を撮ったという計算になる。

 その機種別比率は、スマートフォンが85%で最も多く、デジタルカメラが10.3%、タブレット端末が4.7%となっている。

(このコラムは「JBpress」2017年12月21日号に掲載した記事をもとに、その後の最新情報などを加えて編集したものです)

ニューズフロントLLPパートナー

同時通訳者・翻訳者を経て1998年に日経BP社のウェブサイトで海外IT記事を執筆。2000年に株式会社ニューズフロント(現ニューズフロントLLP)を共同設立し、海外ニュース速報事業を統括。現在は同LLPパートナーとして活動し、日経クロステックの「US NEWSの裏を読む」やJBpress『IT最前線』で解説記事執筆中。連載にダイヤモンド社DCS『月刊アマゾン』もある。19〜20年には日経ビジネス電子版「シリコンバレー支局ダイジェスト」を担当。22年後半から、日経テックフォーサイトで学術機関の研究成果記事を担当。書籍は『ITビッグ4の描く未来』(日経BP社刊)など。

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