新しい黄砂情報 一方で縮小も
ゴビ砂漠付近で舞い上がった黄砂が18日(土)、西日本に飛来する。気象庁は今年1月、黄砂情報を刷新し、使いやすさと精度向上が期待される。一方で、黄砂の観測地点は大幅に減少した。
西日本で黄砂のおそれ
タイトル表紙は15日、気象衛星ひまわりが捉えた黄砂です。渦を巻く雲の左下に見える、オレンジ色の部分が黄砂を表しています。低気圧に伴う強い風によって、大規模な砂嵐が発生したのでしょう。舞い上がった砂が18日(土)にかけて、西日本に飛来する予想です。
黄砂はゴビ砂漠やタクラマカン砂漠などで強風により舞い上がった砂が大気中を漂いながら落下する現象です。例えば、上空5キロまで舞い上がった砂(半径0.01ミリ)は一時間に100メートルの割合で落下するため、地上に達するまでに約50時間かかります。砂を運ぶ上空の西風は時速100キロくらいの速さがあり、舞い上がった砂は容易に日本に到達するのです。
進化した黄砂情報
気象庁は今年1月、気象衛星ひまわり8号・9号の観測データを使った、新しい黄砂予測を始めました。黄砂の予測は2004年から始まり、これまでにも何度か予測方法の改善が行われてきました。しかし、実際は黄砂が飛んでいないのに、あたかも黄砂が飛来しているかのような状況を予測してしまうなど、予測と実況のズレがしばしば見られました。これからは気象衛星の観測データを使うことで、実況との違いがより小さくなることが期待できます。
そして、黄砂情報の拡充が求められる背景に、温暖化による干ばつの長期化や中国の著しい経済発展により、大陸の広い範囲が砂漠化していることがあります。昔は黄砂と言えば、春の風物詩でした。しかし、黄砂とともにPM2.5などの大気汚染物質も運ばれるため、天気予報の番組でも頻繁に大気汚染予測情報を取り上げるようになりました。少し前には想像できなかった状況です。
黄砂の観測地点は激減
古くて新しい黄砂、一方で縮小されたものもあります。黄砂の有無は気象台職員が目で見て(目視)判断しています。これまでに90か所以上の測候所が無人化され、黄砂を観測する気象台は59か所まで減少しました。さらに今年2月、気象台の目視観測が縮小されたことで、札幌、仙台、東京、新潟、名古屋、大阪、広島、高松、福岡、鹿児島、那覇の11か所を残すだけとなりました。
俳句では黄砂のことを黄塵万丈や土風(つちかぜ)などと言い、江戸時代に編纂された「本朝年代記」には1477年(文明9年)に、黄砂交じりの雪が降った(紅雪)記録が残っています。時代を越えて変わっていく黄砂に思いを巡らしました。
【参考資料】
気象庁:黄砂に関する情報を拡充します、2020年1月24日報道発表
国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構、気象庁気象研究所、九州大学:ひまわり8号データを用いた黄砂やPM2.5飛来予測の精度向上について、2018年10月31日報道発表
気象庁ホームページ:黄砂情報
倉嶋厚、2002:黄砂-海を越える土、大学テキスト日本の気候、古今書院
環境省:黄砂パンフレット