愛媛県松山市が全国1位!1人1日当たりごみ排出量全国最少 10年連続1位達成ならずの昨年から返り咲き
環境省が毎年3月末に発表している、1人1日当たりのごみ排出量(リデュース)取組の上位10位市町村ランキング。人口により、10万人未満、10万から50万人未満、50万人以上の3区分に分かれている。このたび、最新の値である平成28年度のランキングが発表された。それぞれの区分で全国1位の市町村を見てみる。
人口10万人未満では、前回(平成27年度)も今回(平成28年度)も徳島県神山町。
人口10万から50万人未満では、前回(平成27年度)も今回(平成28年度)も東京都小金井市。
そして、
人口50万人以上では、前回(平成27年度)は東京都八王子市。今回(平成28年度)は愛媛県松山市が1位となった。
実は愛媛県松山市は、平成26年度までの9年間、全国最少のごみ排出量をキープしていた。だが平成27年度、東京都八王子市に抜かれてしまった。愛媛県松山市の公式サイト、ごみ減量(リデュースNO.1 againプロジェクト★Matsuyama)には、
と、悔しさのにじみ出るコメントが書かれている。そう、平成27年度に1位となった八王子市のごみ排出量は815.3グラム/人日。愛媛県松山市は817.5グラム/人日と、たった2グラムしか違わない。とはいえ、全国ではトップクラスの少なさだ。
そして今回、平成28年度は、1位の松山市が789.3グラム/人日、2位の八王子市が799.1グラム/人日と、ほぼ10グラムの差をつけて、松山市が1位の座を勝ち取った。
2018年3月6日、香川県高松市の「うどんまるごと循環コンソーシアム」から呼んで頂いて食品ロスの講演を行なった。その時、愛媛県から聴きに来てくださった方がいらっしゃった。松山市の話をすると「松山市の人たちは真面目だから、みんな頑張って(1位を)達成すると思いますよ」と話していた。
人口50万人以上の区分で、前回と今回のベスト10を見てみよう。
平成28年度 平成27年度
1、愛媛県松山市 789.3g/人日 1、東京都八王子市 815.3g/人日
2、東京都八王子市 799.1g/人日 2、愛媛県松山市 817.5g/人日
3、広島県広島市 840.8g/人日 3、広島県広島市 853.6g/人日
4、京都府京都市 846.1g/人日 4、神奈川県横浜市 866.4g/人日
5、埼玉県川口市 852.0g/人日 5、埼玉県川口市 867.3g/人日
6、神奈川県横浜市 855.4g/人日 6、神奈川県川崎市 884.0g/人日
7、神奈川県川崎市 859.4g/人日 7、京都府京都市 884.3g/人日
8、神奈川県相模原市 877.3g/人日 8、静岡県浜松市 889.0g/人日
9、静岡県浜松市 878.6g/人日 9、神奈川県相模原市 898.0g/人日
10、熊本県熊本市 878.8g/人日 10、埼玉県さいたま市 912.6g/人日
こうして見てみると、平成27年度よりレベルが上がってきている。900台はいなくなり、10位すべてが800台となった。神奈川県の横浜市も川崎市も平成27年度より排出量は減らしているにもかかわらず、順位は下がった。それだけ上位の市町村の排出量が減っているということで、1位と2位を競っていた松山市と八王子市は両方とも700台まで減っている。
環境省が毎年、3月末に発表しているのは「一般廃棄物処理事業実態調査の結果」というもので、23ページある。今回、2018年3月27日に発表された平成28年度の全体量を見てみよう。
全体的に減ってきている。それでは、家庭から出るものと、事業系から出るものと、割合はどうなっているだろうか。次の棒グラフは、家庭からの「生活系」が青、事業系が黄色で示してある。
家庭から出る生活系の方が多いことがわかる。
過去数年間で事業系の減り方を見てみると遅々としている。全国のいくつかの都道府県や市区町村に取材してみると、やはり事業系が頭打ちになってきており、だからこそ、外食店での食べきり運動や、スーパーでの見切り販売が熱心に行なわれているという背景がある。ごみ半減を目指している京都市も、事業系の宴会での食べ残しを減らすために幹事が声かけした方が減るという実証実験を行なったり、スーパーで形の悪い野菜にPOP(販促ツール)をつけて販売促進することで、およそ10%のロスが減らせるという実証実験の結果を出したりしている。
ただ、事業系はリサイクルを熱心に行なっている反面、家庭からの生活系では、一部をのぞいてリサイクルがほとんど行なわれていない。
私たち市民がごみを減らせばその分、他の有用なことに税金を活用できる
「ごみなんて関係ないし」という人がほとんどだろう。ただ、ごみは、生きている限り、必ず発生する。ゼロにはできない。そして、それを処理するのにお金やエネルギーがかかる。市区町村のごみ処理費用は、その自治体の財源でまかなわれている。
ゼロにはできないごみだが、減らすことはできる。現に、ランキングを見ても、一年で一様に減っている。
具体的にどうすればいいのか?カギは水キリと食品ロス削減
愛媛県松山市の公式サイトには、
とある。そう、燃えるごみの半分は生ごみで、生ごみの重さを減らすには「水切り」が効果的だ。
今回のランキングで全国4位となっている京都市は、以前より、市民に「生ごみ3キリ」を呼びかけている。使いキリ、食べキリ、水キリの3つだ。
燃えるごみの多くを占める生ごみ。その中には手つかずの食品も多く入っていることが、京都や富山など全国の自治体の調査で判明している。食品ロスを減らすことも、ごみ削減に貢献する。
水切りから一歩進んで、生ごみ乾燥機を使うのも一つだ。筆者は、全国ランキングで5位になっている埼玉県川口市の廃棄物対策審議会の委員に任命されており、2017年6月から、生ごみ乾燥機を使って乾燥させてデータを取っている。島産業のパリパリキューブだ。50%以上減るのが清々しくて気持ちがよく、やめられない。家庭用の生ごみ乾燥機は、全国の多くの自治体で助成金が出る制度があり、筆者も川口市の助成制度を申請し、半額で購入することができた。
全国の自治体の廃棄物担当の方へ
愛媛県松山市や東京都八王子市の例を見ても、ランキングを意識することが、ごみ減量につながり、結果を出すと言える。「平成32年までに・・グラムを目指そう」という標語を目にすることがあるが、一般市民にはわかりにくいように感じる。何をどうすればいいのかわからないし、やる気がわかない。自分たちの住んでいる市区町村の誇れるもの、その一つが、環境配慮の姿勢や、ごみの少なさである。ぜひ、環境省のこのランキングをうまく活用して欲しいと願っている。
参考資料(全国ランキングはPDF資料のp22に掲載)