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カタール後の代表入りにも期待!Jリーグの終盤戦で見逃せない10人

河治良幸スポーツジャーナリスト
(写真:YUTAKA/アフロスポーツ)

2022年シーズンのJリーグも終盤戦になり、優勝争いや残留争い昇格争いも最終局面に入ってきています。

前回の記事では「J1残留争いのキーマン7人」を取り上げましたが、大ブレイク手前のタレント10人を紹介します。

残りの試合で輝きを放ち、来シーズンはさらなるブレイク、そして26年のW杯を目指すカタールW杯後の日本代表入りも期待したい7人を筆者の視点で選びました。

山原怜音(清水エスパルス)

抜群のキック力と爆発的な攻め上がりで左サイドバックから多くのチャンスを切り開く。ウイングもこなせる攻撃力はすでに目を見張るレベルで、反対サイドまで高速で通すサイドチェンジは英国のプレミアリーグを見ているかのようだ。

流れからでも直接F Kでも、日本人選手としては規格外の決め手を持っているタレントであり、すでにA代表に推す声もあるが、まだまだ自陣のディフェンスなどは国際レベルで伸ばして行く必要があるかもしれない。それでもゼ・リカルド監督のもとで守備のバランスワークも高めており、4年後のW杯に向けて非常に楽しみなタレントだ。

舩橋佑(鹿島アントラーズ)

鹿島の生え抜きであり、小笠原満男アカデミー・アドバイザーの薫陶を受けたボランチ。レネ・ヴァイラー前監督のもとでも徐々に出場機会を得ていたが、8月半ばに就任した岩政大樹監督のもとではインサイドハーフで起用されるなど、攻撃面の幅を広げている。

スペシャリティは狭いエリアでも冷静にボールを捌けることで、岩政監督が取り入れている「サーキュレーション(循環の意味で、流れの中で複数の選手がポジションを入れ替えながら、相手ディフェンスを崩して行く)」の象徴的な選手になりうる。あとはゴールに向かう積極性が出て来れば、鹿島OBの大岩剛監督が率いるパリ五輪の代表チーム入りも見えて来る。

本田風智(サガン鳥栖)

いわゆる突貫小僧系のドリブラーとして名を上げてきたが、川井健太監督のもとで戦術願も磨き、多様性のある引き出しやフィニッシュに関わる動きを身に付けている。それでもやはり最大の武器は突破力だ。

サイドからに1対1やカットインを得意とするドリブラーは日本にも多くいるが、中央の狭い網を破って、ボックス内のシュートに持ち込めるタレントはそうはいない。それを可能にするのは重心が低く、推進力のある持ち運びとコンタクトの強さだろう。21試合で5得点2アシストを記録しているが、怪我が減って、より継続的に出られるようになれば、数字も増えていくことは間違いない。

鈴木徳真(セレッソ大阪)

高校時代からアンダー代表の主軸を担っていたボランチで、大卒で加入した徳島では現浦和のリカルド・ロドリゲス監督や岩尾憲から戦術眼を伝授された。セレッソでは開幕当初なかなか出番が無かったが、負傷が続く原川力に代わりスタメンで継続的に起用されると、安定した守備と正確なパスで上位争いを支えている。

空間的な視野だけでなく、ゲームの流れが良く見えている選手で、90分のゲームコントロール力に優れる。さらに注目したいのがシュート力で、鳥栖戦のスーパーボレーはFIFA公式サイトにも紹介されて「世界に見つかってしまった」とセレッソサポを危惧させた。セットプレーのキッカーとしても並外れた能力を備えており、ネクストジャパンの候補にも相応しいタレントの一人だ。

大畑歩夢(浦和レッズ)

日本代表の酒井宏樹をして「若いのに経験豊富な選手のよう」と言わしめるポジショニングのセンスで、守備をリスク管理し、ビルドアップから攻撃に関わりながら、ここという場面で左の最前線まで攻め上がる。

言うなれば左の内田篤人のようなサイドバックだ。守備でフィジカル勝負に持ち込まれると後手になるシーンは散見されるが、今年は怪我に泣かされた事情もある。上記で取り上げた清水の山原とは全く異なるタイプで、代表レベルでライバル関係になって行けば、鳥栖の後輩である中野伸哉など、左サイドバックはホットゾーンになりそうだ。

山根陸(横浜F・マリノス)

J1の首位を走るマリノスで、昇格イヤーから出場機会を増やしている事実が、優れた才能を物語る。中盤には藤田譲瑠チマなどハイレベルな選手が揃う中でも、リズムチェンジャーとして攻撃に明確なアクセントを加えられる。

取材をして感じるのは謙虚な向上心だ。U-19代表の主力だが、同年代ですでに松木玖生(FC東京)がパリ五輪を目指すU-21代表に選ばれており、そこの競争に食い込んでいくにはマリノスでもっと主力になっていく必要があると語る。U-20アジアカップ予選で国際経験を積んでチームに復帰しており、再開後の残された試合でもさらに輝きを放つ期待は大きい。

佐野航大(ファジアーノ岡山)

正確なキックと強度の高いディフェンスで、攻守の軸になれる万能型のボランチだ。ボールを奪ったら即座に縦パスを選択できるのは技術に加えて、非凡な観察眼、強気のメンタリティによるところが大きいだろう。

アンダー代表でセットプレーのキッカーを任される佐野だが、さらにギラギラして岡山の中心になっていくことを目指す。岡山は現在J2の3位で、自動昇格も狙える位置にいる。なまでの向上心が、さらに才能を引き上げていく可能性がある。

平川怜ロアッソ熊本)

2017年に行われたU−17W杯の中心メンバーで、FC東京アカデミーの元同僚である久保建英も認める技術の持ち主で、海外志向も強かったが、Jリーグでなかなか芽が出ずにここまで来た。

ボランチとしては守備のデュエルにまだ課題を残すが、新天地の熊本では大木監督に前目のポジションで起用されたことで、途中出場から評価を高めてスタメンに定着。独自のパスワークにもフィットして、明確なアクセント役になっている。7試合で1得点1アシストという数字以上の貢献が見られ、さらに目に見える形の結果を残せれば、熊本のJ1昇格も現実のものになりうる。

伊藤涼太郎アルビレックス新潟

J2首位で昇格まであと一歩と迫る新潟のクリエイター。機動力や抜群のテクニックなど、これまでも才能は認められていたが、浦和レッズではチームの戦術にうまく適応できず、水戸や大分で武者修行を繰り返すも結局、大成することは出来なかった。

しかし、新天地の新潟ではボールをしっかりと握りながら、選手の適材適所や特長を生かす松橋力蔵監督の指導で開眼。個で違いを作り出せる本田至恩のクラブ・ブルージュ移籍、さらに大黒柱である高木善朗の怪我で不安も出た攻撃陣を引っ張っている。

千葉寛汰FC今治

「チバカン」の通称で知られる、今Jリーグ全体を見渡しても乗っている“ザ・ストライカー”だ。清水ユース出身である千葉のことは同年代の松木玖生(F C東京)も認めるところだが、今治への育成型期限付き移籍で出場機会を得たことで、その嗅覚を開花させている。

さらにU-20アジアカップ予選では肩の負傷で辞退となったエースの横山歩夢(松本山雅)に代わる追加招集ながら、ラオス戦で“ダブル・ハットトリック”を達成。凱旋試合となったアウェー宮崎戦では2ゴールで3-2の勝利を引き寄せて、昇格に望みを繋いだ。いわゆる泥臭系の点取屋で、近年の日本でなかなかいなかったタイプ。サイズのある岡崎慎司のような存在になっていけば頼もしい。

スポーツジャーナリスト

タグマのウェブマガジン【サッカーの羅針盤】 https://www.targma.jp/kawaji/ を運営。 『エル・ゴラッソ』の創刊に携わり、現在は日本代表を担当。セガのサッカーゲーム『WCCF』選手カードデータを製作協力。著書は『ジャイアントキリングはキセキじゃない』(東邦出版)『勝負のスイッチ』(白夜書房)、『サッカーの見方が180度変わる データ進化論』(ソル・メディア)『解説者のコトバを知れば サッカーの観かたが解る』(内外出版社)など。プレー分析を軸にワールドサッカーの潮流を見守る。NHK『ミラクルボディー』の「スペイン代表 世界最強の”天才脳”」監修。

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