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「コナ・ロー」発生でハワイに大雪と大雨

森さやかNHK WORLD 気象アンカー、気象予報士
NWS出典のハワイの降水量の図に筆者加筆

ハワイで連日雨が続いています。

ハワイ沖の低気圧の影響で、27日(月)頃から大雨が降っているのです。昼夜を問わず広い範囲で雨が降って、道路が冠水したり、家屋が浸水したりするなどの被害が起きています。

3日間に降った雨の量は、ハワイ島で最大555ミリ、この夏火災に見舞われたマウイ島では294ミリに及びました。

ホノルルでは雷も鳴りました。ハワイは空気が下降してくる場にあるので、雷を伴う背の高い雨雲が発生することはあまりありません。

またハワイ島のマウナケア山では大雪も降りました。観測計がないために公式な記録は分かりませんが、15センチ近く積もったようです。山頂へと向かう道路は閉鎖されてしまいました。

加えて、海から背をそむけたくなる注意報も出ています。

「ブラウン・ウォーター注意報」と呼ばれるもので、その名の通り、茶色い水に気を付けましょうというものです。大雨のため下水や農薬、動物の糞、病原体や化学物質などが海に流れ込む可能性があります。

現地時間1日(金)現在、オアフ島を含むハワイ主要4島すべてにこの注意報が出されています。

※ブラウン・ウォーター注意報の最新状況はコチラから

コナ・ローの正体

長引く大雨の原因は、何でしょうか。

それは「コナ・ロー(Kona Low)」と呼ばれる低気圧です。名前の由来は、コナ(風下)にあります。

年がら年中北東からの風が吹きつけるハワイは、島々の中心を横切る山脈によって雨雲が不均等に発生します。風上はたいてい雨、一方で風下はたいてい晴れです。

しかしコナ・ローが発生すると風向きが北東から南に変わるので、いつもは晴れの風下(コナ)側も雨が降るのです。

筆者加筆 (左: NASA出典の1日の衛星画像、右: NWS出典の地上天気図)
筆者加筆 (左: NASA出典の1日の衛星画像、右: NWS出典の地上天気図)

ちなみにコナ・コーヒーの有名なハワイ島のコナは、風下にあるのでこの名前が付けられています。

コナ・ローは温帯低気圧とハリケーンの両方の性質を持ったハイブリッド的低気圧です。熱帯の空気で満たされていますが、中心には寒気を伴っているからです。冬に現れて、数日間居座り、いつもは晴れ続きの南西側に大雨を降らせます。

今冬は少雨か

ハワイの冬は雨季に当たります。

今年の冬は雨が多いのでしょうか。ホノルル気象局の話を伺ったところ、雨が多いのは束の間で、12月から2月にかけて雨が少なくなる予想とのことです。理由は現在起きているエルニーニョで、ジェット気流の位置がずれるためにハワイでは雨が降りにくくなる傾向にあります。

同じくエルニーニョが起きていた2009年から2010年も同様で、11月は雨が多かったものの、それ以降は記録的な少雨となりました。ウシのエサとなる牧草が育たず、畜産農家が大打撃を受けました。

少雨は山火事を悪化させたり、農作物への被害を拡大させたりするために、ハワイの人たちは少雨を大雨よりもよっぽど深刻に捉えています。

雨や曇天続きだと、ハワイに来た観光客はみな肩を落としますが、ハワイの人たちはニコニコしているのが印象的です。

11月30日の海面水温の平年差 (NOAA出典の図に筆者加筆)
11月30日の海面水温の平年差 (NOAA出典の図に筆者加筆)

NHK WORLD 気象アンカー、気象予報士

NHK WORLD気象アンカー。南米アルゼンチン・ブエノスアイレスに生まれ、横浜で育つ。2011年より現職。英語で世界の天気を伝える気象予報士。日本気象学会、日本気象予報士会、日本航空機操縦士協会・航空気象委員会会員。著書に新刊『お天気ハンター、異常気象を追う』(文春新書)、『いま、この惑星で起きていること』(岩波ジュニア新書)、『竜巻のふしぎ』『天気のしくみ』(共立出版)がある。

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