東京ドーム115杯分!全国ごみ少ないランキング発表 新型コロナで生ごみ増 減らすための10ポイント
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)対策で在宅調理が増え、米国で生ごみが増えているという。
日本でも、ごみや食品ロスが増えるであろうことは、お笑い芸人でごみ収集員の滝沢秀一さんも「マスクがない」ごみ清掃芸人が痛感するコロナ禍の副作用という記事で言及している。
環境省が毎年3月末に発表する廃棄物の排出状況が、今年も発表された。全国で最もごみの排出を抑えているのは、どの自治体だろう。
日本の年間ごみ排出量は東京ドーム115杯分!
日本の年間ごみ排出量は、4,272万トン。これは東京ドームおよそ115杯分に相当する。
これを、人口と36日で割り算すると、1人1日当たりのごみ排出量は、918g/人日となる。
前年度(平成29年度)と比較すると、減っている。
われわれ消費者の出す生活系ごみが多い
食品ロスに関する報道でよく聞くのが「企業が悪い、消費者はそんなに出してない」という反論だ。
だが、実際は、食品ロスの年間総量(643万トン)のうち、半分近く(45%)の291万トンは家庭から出されている。
そして、ごみ全体に関しても、割合は、事業系ごみより、生活系ごみの方が2倍以上、多い。
ごみ処理事業経費は前年より増加
ごみの総量は前年度より減っているが、ごみ処理に関する事業経費は前年度より増えている。
平成30年度 2兆910億円 (平成29年度 1兆9,745億円)
この総額には、次のような経費が含まれている。
ダイオキシン対策を行った施設の更新が増えたため、経費が増加しているとのこと。
全国ごみ少ないランキング(人口50万人以上)
それでは、全国でどの自治体がごみ排出量が少ないだろうか。
人口区分で3分類されているので、まずは人口50万人以上の都市から。
平成30年度のみ
1位 東京都八王子市 764.6g/人日
2位 愛媛県松山市 772.1g/人日
3位 神奈川県川崎市 816.2g/人日
4位 埼玉県川口市 827.7g/人日
5位 神奈川県横浜市 831.3g/人日
6位 京都府京都市 837.7g/人日
7位 広島県広島市 850.3g/人日
8位 神奈川県相模原市 865.1g/人日
9位 埼玉県さいたま市 873.3g/人日
10位 千葉県船橋市 877.5g/人日
以上
これは、生活系(家庭系)ごみと事業系ごみを合算し、人口と年間日数(365日)で割り算して算出している。
東京都八王子市と、愛媛県松山市は、毎年、1位2位を争っている。両市とも、全国平均の918gをはるかに下回る700g台に突入しており、素晴らしい。
筆者は平成29年度(2017年度)から埼玉県川口市の廃棄物対策審議会の委員を務めている。当時、川口市は全国5位だった。平成29年度から4位になり、ささやかながら、やり甲斐を感じている。
全体を見渡してみても、以前は10位の自治体は900g台だった。今や800g台でないとベスト10には入れないくらい、どの自治体もごみ削減に尽力している。
全国ごみ少ないランキング(人口10万人以上50万人未満)
では、次に人口10〜50万人未満の自治体を見てみよう。
平成30年度のみ
1位 東京都小金井市 605.3g/人日
2位 東京都日野市 639.5g/人日
3位 静岡県掛川市 645.7g/人日
4位 東京都立川市 655.9g/人日
5位 東京都府中市 660.0g/人日
6位 東京都国分寺市 680.0g/人日
7位 東京都西東京市 682.5g/人日
8位 東京都東村山市 683.1g/人日
9位 静岡県藤枝市 690.1g/人日
10位 東京都三鷹市 691.3g/人日
以上
10自治体中、2つが静岡県で、残りの8つはすべて東京都、しかも23区ではなく、西部にある市が占めている。
この理由としては、誰が出したかわからない「ごみステーション」へ出す方式から、一戸建ての場合は家の前に出す戸別収集方式に変えたことや、ごみ袋を有料化にしたことなどが挙げられるのではないだろうか。
人口50万人以上の都市の部でトップの東京都八王子市も、一戸建ては戸別回収、ごみ袋は有料にしている。
しかも、八王子市は、ごみ袋の価格も高い。可燃ごみは20リットル10枚で370円、40リットル10枚で750円。「ごみ袋の値段が高い」という声は、東京都日野市にお住まいの方からも伺った。家庭用ごみ袋の有料化は、ごみを少なくしようという意識や行動につながっていると考えられる。
全国ごみ少ないランキング(人口10万人未満)
では最後の区分、人口10万人未満の自治体を見てみたい。
平成30年度のみ
1位 長野県南牧村 305.7g/人日
2位 長野県川上村 308.2g/人日
3位 徳島県神山町 315.0g/人日
4位 長野県泰阜村 374.3g/人日
5位 長野県中川村 386.1g/人日
6位 宮崎県高原町 386.4g/人日
7位 長野県豊丘村 411.9g/人日
8位 長野県喬木村 425.5g/人日
9位 長野県阿南町 425.5g/人日
10位 長野県平谷村 425.6g/人日
以上
10自治体のうち、1つが徳島県、1つが宮崎県、あとは長野県の小さな村や町がランクインしている。
都道府県別で見てみると、長野県は、4年連続で47都道府県中、ごみが最も少ない都道府県となっている。
背景には、ごみ袋の有料化やごみ袋への記名式を実施している自治体が多いこと、自宅の畑や敷地などで生ごみのコンポスト(堆肥化)を行っていることなどが挙げられるだろう。
生ごみを減らす10ポイント
家庭からの食品ロスで最も多い食品群が野菜であることは、農林水産省の調査やその他の調査でも判明している。
では、野菜などから出る生ごみをどう減らしたらいいのだろう?
たとえば、10ポイントを挙げてみる。
1、安売りやまとめ売りにつられない
1束しか使わないニラや、1袋しか使わないもやしなど、もしまとめ売りしていたとしても、買ってきてから、長く持つような保存をできない人は、いくら割安でも、まとめ買いしない方がいい。もし買いたいなら、下ごしらえや冷凍など、ちゃんと長く持つような処理をする。
2、要る分だけ買ってくる
1と同じ。まとめて買ってきて使いきれる自信がない場合、1個売りをしていたら、多少割高でもそれを買う。
3、使い切れなさそうならカット野菜や冷凍野菜を使う
1人暮らしの人は、使いきれない場合もある。仕事などで忙しく、調理の時間や余裕が十分とれない場合もある。そんな時は、カット野菜や冷凍野菜を活用しよう。
4、市販の野菜保存袋を使う
市販の野菜保存袋を使うと、青菜などは、数週間持つ。筆者の実験では、青梗菜も1ヶ月近く持った。100円ショップや文房具店、ホームセンター、スーパーマーケットなどで販売している。
古新聞を活用してもよい。野菜は、ものによっては常温保存の方がよいものもあるし、同じ玉ねぎでも、新玉ねぎは日持ちしないので冷蔵保存したほうがいい場合もある。
5、過剰除去を減らす切り方をする
にんじんのヘタや、なすのヘタなど、上手に切ることで、食べられる部分を捨ててしまうのを避けられる。
余分に切らないで食べ切ることで、生ごみが減る。料理研究家のキムラカズヒロさんに教えて頂いた。
6、皮ごと食べる
根っこや皮、皮に近い部分にこそ、旨味や甘み、栄養素が凝縮している。しっかりと洗って、食べられる部分は食べ切ることで、生ごみが減る。
7、天気のいい日に乾かす
野菜は、水分が多いので、日持ちしない。逆に、水分をとってあげることで、日持ちがよくなる。家の庭やベランダなどで乾かして、乾物にする。
8、調理して出た野菜の硬い部分などをベジブロスにする
玉ねぎの皮や、ブロッコリーの茎など、調理の後に出てきた野菜の硬い部分や食べない部分を、ベジブロス(野菜のだし)にする。
ある程度、量がまとまったところで、煮込んで、だしをとる。これを使ったリゾットはとても美味しい。
9、家庭用生ごみ処理機で乾燥させる
家庭用生ごみ処理機で乾燥させる。半分以上、重量を減らすことができる。これから気温が上がってくるので、生ごみのにおいも気になる季節になる。コバエも飛ばないし、スイッチを押すだけで乾くので、在宅時間が多いときにはとても便利だ。
全国の自治体のうち、6割以上で、家庭用の生ごみ処理機を購入した場合、助成金を出している。多いところで5万円まで出している。
筆者も2017年に助成金を使って半額(約1万円)で購入して以来、重宝している。重量も半分以上、減らせている。
10、コンポスト(堆肥化)
庭や田畑があれば、コンポスト(堆肥化)できる。
神奈川県葉山市で誕生した、キエーロのように、マンションのベランダなどでもできるタイプも発売された。
筆者の知人のお茶販売店は、毎日出るお茶っ葉の処理に苦慮していた。
そこで生ごみ処理機を使い、今ではコンポストにしているという。お茶畑での茶摘み体験のときに伺って、実際に見せてもらった。ごみの量をかなり減少できたという。
ごみは半減できる
以上、ごみを減らす方法を見てきた。
京都市は、2000年から「ごみ半減プラン」を立てて、20年経った今では、ほぼ半減を達成した。
ゼロにするのは難しくても、ごみを減らすことはできる。
そして、ごみを減らすことは、ひいては、食品ロスを減らすことにもつながる。
参考資料
一般廃棄物の排出及び処理状況等(平成30年度)について(環境省)
新型コロナがもたらす食料不安、米国の混乱 食品ロスが増える一方で、貧困者への食料供給は困難に (2020年4月4日付、ナショナル・ジオグラフィック)