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ドン・ファン事件で元妻が新証言 覚醒剤入手や完全犯罪の検索履歴をどう説明? #専門家のまとめ

前田恒彦元特捜部主任検事
(写真:Motoo Naka/アフロ)

「紀州のドン・ファン」と呼ばれた男性が急性覚醒剤中毒で不審な死を遂げた事件の裁判も終盤を迎えています。来週18日の公判で論告求刑と最終弁論が行われて結審し、来月12日には判決が言い渡される予定です。殺人罪に問われている元妻による新証言、特に覚醒剤の入手や「老人 完全犯罪」「覚醒剤 過剰摂取」といったネットの検索履歴を法廷でどう説明したのか、参考となる記事をまとめました。

ココがポイント

「野崎さんから『覚醒剤を買ってきて欲しい』と頼まれ、その後、密売人に注文した」
出典:ABCニュース 2024/11/15(金)

「野﨑さんは愛犬の死後、死にたいと繰り返し言っていた」「疑心暗鬼の言動をしたり(中略)“奇異”な行動を取ったりする場面があった」
出典:MBS NEWS 2024/11/11(月)

「未解決事件、不気味な事件などが好きで調べた」「野崎さんと知り合う前から『サイコパス』『猟奇殺人』などと同様の検索をしていた」
出典:読売新聞オンライン 2024/11/12(火)

「覚醒剤を注文したあとに“覚醒剤過剰摂取”という動画を見た」「YouTubeでお勧めされたので、タイミングが合ったことから」
出典:FNNプライムオンライン 2024/11/15(金)

エキスパートの補足・見解

元妻の証言は、男性が生前に覚醒剤を欲しており、最期も自ら飲んで自殺したか、量を間違えて誤飲したと主張する内容となっています。検索履歴の点も、単なる偶然で事件とは無関係だというものです。

裏付け不能な話が多いわけですが、元妻は他の証拠と矛盾しない説明にも心がけています。氷砂糖を砕いた偽物を元妻に売ったという密売人の証言を踏まえ、男性の依頼で覚醒剤を入手して渡したあと、男性から「あれは使い物にならん。偽物や」と言われたと供述している点です。

ただ、元妻は捜査段階で自分も男性も覚醒剤の入手に関与していないと供述していました。法廷での話を警察にしても信じてもらえないと思ったからだと述べていますが、起訴後に唐突に話し始めたからといって、なぜ裁判所が信じることになるのか、元妻の私物から覚醒剤反応が出ている点を含め、納得できる説明には至っていません。

一方で、検察側の主張にも穴があります。そのまま飲むと苦い覚醒剤をどのようにして大量に飲ませたのか未解明である点です。元妻の供述の信用性を裁判所がどう判断するのか、検察側の状況証拠で有罪と認定するのか、来月の判決が注目されます。(了)

元特捜部主任検事

1996年の検事任官後、約15年間の現職中、大阪・東京地検特捜部に合計約9年間在籍。ハンナン事件や福島県知事事件、朝鮮総聯ビル詐欺事件、防衛汚職事件、陸山会事件などで主要な被疑者の取調べを担当したほか、西村眞悟弁護士法違反事件、NOVA積立金横領事件、小室哲哉詐欺事件、厚労省虚偽証明書事件などで主任検事を務める。刑事司法に関する解説や主張を独自の視点で発信中。

元特捜部主任検事の被疑者ノート

税込1,100円/月初月無料投稿頻度:月3回程度(不定期)

15年間の現職中、特捜部に所属すること9年。重要供述を引き出す「割り屋」として数々の著名事件で関係者の取調べを担当し、捜査を取りまとめる主任検事を務めた。のみならず、逆に自ら取調べを受け、訴追され、服役し、証人として証言するといった特異な経験もした。証拠改ざん事件による電撃逮捕から5年。当時連日記載していた日誌に基づき、捜査や刑事裁判、拘置所や刑務所の裏の裏を独自の視点でリアルに示す。

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