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食すべき最高の旬、人気の上海蟹レストランが日本へ初上陸

東龍グルメジャーナリスト
上海蟹肉の炒め 蟹型かざり

上海蟹の季節

今の季節の旬の食材と言えば、何を思い浮かべるでしょうか?

スイーツであればマロンを使った洋菓子がおいしいですし、フランス料理であれば白トリュフやジロール茸、セップ茸、モリーユ茸などのキノコ類が豊富で、日本料理ではキノコであれば松茸、魚であればサンマなどが旬の食材と言ったところでしょう。

中国料理ではどうかと言えば、この時期に最も多く注目が集まるのは、上海料理で使われる上海蟹ではないでしょうか。

上海蟹とは

王宝和 大観苑 饗宴四種前菜盛り合わせ
王宝和 大観苑 饗宴四種前菜盛り合わせ

上海蟹はチュウゴクモズクガニという学名があり、繁殖力が強くて生態系に影響を及ぼすため、特定外来種に指定され、生きたまま輸入されることは禁止されています。

雄と雌とでおいしい時期が異っており、雌は卵のある10月から11月が、雄は白子のある11月から12月が最も美味であるとされているのは、ちょっとした食通にはよく知られていることです。

この雌から雄への旬の切り替わりは、上海蟹好きの食欲と好奇心を刺激し、同じシーズンに上海蟹を複数回食べに行かせる理由となっています。

上海蟹の有名店

上海蟹肉の炒め 蟹型かざり
上海蟹肉の炒め 蟹型かざり

上海蟹は東京のどこで食べられるでしょうか。

上海蟹を食べられる有名な中国料理店として、麻布十番「富麗華」、神保町「新世界菜館」、西麻布「香宮」、永田町「赤坂四川飯店」、赤坂「Turandot 臥龍居」がよく挙げられます。

どこも上海蟹の特別コースを提供し、上海蟹好きであれば毎年通ったりするものです。

日本でもおいしい上海蟹を食べられる店は増えてきましたが、期間限定で、本場上海にある人気店の味を日本で堪能できる機会に恵まれました。

その上海にある人気店とは、1744年に創業した老舗「王宝和酒家(おうほうわしゅか)」です。

「王宝和酒家」は福州路と浙江中路の交差点にある上海蟹レストランで、上海蟹レストランの中でも最も歴史が古いと言われています。特別に高級店というわけでも、プロモーションに入れているというわけでもありませんが、長い歴史が培った上海蟹への目利きと確かな調理方法で、高い人気と知名度を誇っています。

この「王宝和酒家」が2016年10月21日から26日にかけてホテルニューオータニ「大観苑」で、2016年10月27日から29日にかけてホテルニューオータニ大阪「大観苑」で「王宝和酒家 上海蟹フェア」を行うのです。

フェアの経緯

上海蟹脚とアスパラガスの炒め
上海蟹脚とアスパラガスの炒め

どういった経緯でこのフェアを行う運びとなったのでしょうか。

ホテルニューオータニは「大観苑」で何か新しい魅力的なフェアを行えないかと、担当者が上海へ渡って様々な店を食べて回りました。

その中で「王宝和酒家」の上海蟹に心を打たれ、ここしかないと考えてコラボレーションの交渉を行ったのです。

一方の「王宝和酒家」は上海では非常に有名ですが、海外ではまだあまり知名度がありません。

日本でも、もっと知ってもらいたいという思いがあり、そこで、歴史があって信頼できるホテルニューオータニとのコラボレーションを快く引き受けることにしたのです。

「王宝和酒家」は日本へ初めて上陸するということで、総勢8人ものスタッフで来日する熱の入れようでした。

東京から大阪へとすぐに移動し、休みなしでフェアを行うハードスケジュールを鑑みても、日本でのコラボレーションがいかに重要であるかと考えていることか分かるでしょう。

コラボレーションの様子

上海蟹の炒飯
上海蟹の炒飯

「王宝和酒家」の料理人は上海蟹について熟知しているので、「大観苑」のスタッフが上海蟹の捌き方や調理法を学びました。

実際のところ、招聘フェアのご他聞に漏れず、準備期間は僅か1日しかありませんでしたが、「大観苑」料理長である黒岩利夫氏が8月に一度上海へ渡っており、既にノウハウを学んできていたので、短い準備期間にも関わらず、万全の体制でフェアを開催することにできたのです。

また、輸入の制約により、ホテルニューオータニが上海蟹を輸入することになりましたが、「王宝和酒家」に事前にどういったものを仕入れるか綿密に打ち合わせをしていたので、本場の味を忠実に再現できました。

さらには、「大観苑」が所有する皿の写真も撮影して送っていたので、事前にどの皿にどういった盛り付けをするか、プレゼンテーションも細かく考えられていたのです。

上海蟹とは、再び

「上海蟹は文化そのもの。上海蟹のコースで、前菜、スープ、主菜など全てを表現できる」と「王宝和酒家」の担当者が語るように、中国に「酒を手に持ち、蟹を味わう」という慣用句もあるくらい、上海蟹の美味は中国人に根付いています。

ホテルニューオータニ広報 田中小百合氏は「王宝和酒家でホテルニューオータニとコラボレーションする旨のポスターを貼ったら、上海へ旅行に訪れた日本人の旅行者から予約が入った」と冗談混じり話しますが、日本料理は他の料理と同じ以上に季節感を大切にする料理であり、四季折々に宿る季節の薫りを感じられる日本人が、小さい頃から日本料理と同等に食していた中国料理の旬に魅了されることは、とても自然なことだと思うのです。

グルメジャーナリスト

1976年台湾生まれ。テレビ東京「TVチャンピオン」で2002年と2007年に優勝。ファインダイニングやホテルグルメを中心に、料理とスイーツ、お酒をこよなく愛する。炎上事件から美食やトレンド、食のあり方から飲食店の課題まで、独自の切り口で分かりやすい記事を執筆。審査員や講演、プロデュースやコンサルタントも多数。

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