120平米870万円の物件も。コロナ禍で郊外・特大中古マンションの価値見直し
京王相模原線南大沢駅から徒歩11分の約111平米・4LDKが3490万円。同線京王堀之内駅から徒歩12分の約99平米3LDKが2380万円。京王相模原線若葉台駅からバス8分徒歩1分の約122平米4LDKは2590万円……いずれも、6月初旬、都下の多摩ニュータウンで売りに出ていた中古マンションの例で、その広さは驚くほどだ。
近年、都心の新築マンションでは60平米台の3LDKを見ることが多くなったが、その倍くらい広く、4人家族向けの3LDKよりも1部屋多い4LDKもある。これなら、1部屋を仕事場とすることで、テレワークにもストレスなく対応できそうだ。
並外れて広いのに安いのは、すべて郊外立地で、しかも「駅近」ではないこと、そして築20年ほどの中古マンションであることが理由だ。
千葉NTでは、109平米で598万円という中古も
首都圏では100平米の広さを持つマンションが盛んにつくられた時代がある。バブルがはじけた後の1995年以降、2005年くらいまでのほぼ10年間。全体的にマンション価格が安く、都心マンションブームが起きた時代だ。都心部で超高層マンションが増え出した時期なのだが、そのとき郊外の一部エリアでは100平米クラスの大型住戸が積極的につくられた。
都心超高層のように便利な場所ではないが、その分、ゆったりと暮らすことができる。そういうマンションもいいでしょ、と提案され、「確かに、いいね!」と反応する人たちが多かった。
それから20年が経過した今は、「都心」と「駅近」だけが人気を高め、広いけど、郊外で駅から遠いマンションは敬遠されがち。だから、びっくりするほど中古価格が下がっているのだ。
千葉県内の千葉ニュータウン(NT)では、北総鉄道・京成電鉄の千葉ニュータウン中央駅からバス利用(つまり歩ける距離ではない)で、築30年以上をいとわなければ、約109平米で598万円。約120平米で870万円という破格価格の中古マンションもある。
レクサスやベンツのCクラスと大差ない価格で、ド迫力マンションを購入できるわけだ。だから、5年ローンとか10年ローンでの購入も可能だろう。
郊外100平米マンションが盛んにつくられた場所
今、首都圏では郊外新築マンションでも70平米程度の3LDKが主流になりつつある。それと比べると、100平米住戸は30平米も広い。坪表示で約9坪大きく、畳18枚分だ。だから、リビングダイニングを20畳の広さにして、6畳の居室を一つ増やし、全体的に収納スペースを大きくとることができる。新しい生活様式が提唱されている今、そのゆとりに憧れる人は多いはずだ。
20年ほど前、マンションの100平米住戸は「日本の住まいをもっとリッチにしよう」と生み出された。音頭をとったのは、住宅・都市整備公団、都市基盤整備公団と呼ばれていた時代のUR都市機構。いわゆる「公団」である。公団は、自らが開発するニュータウンで100平米住戸を増やした。
だから、今、首都圏の中古市場で100平米住戸をみつけやすいのは、多摩ニュータウンや神奈川県の港北ニュータウン、そして、千葉ニュータウンとなる。
毎日通勤するとなると、多少不便だが……
約122平米4LDKが2590万円で売りに出ていた若葉台エリアは、多摩ニュータウンのなかでも最後期に開発された東京都稲城市内に位置する。
都下でも都心寄りだから、若葉台駅(駅の住所は川崎市麻生区)から新宿駅までの所要時間は30分〜40分程度。駅まではバスに乗らなければならないが、テレワークで週のうち1日か2日都心のオフィスに出社するパターンならば、それほど不便とは思わないだろう。
約109平米で598万円。約120平米で870万円の中古マンションをみつけた千葉ニュータウンは、千葉ニュータウン中央駅から大手町駅まで1時間程度の所要時間。こちらも、週に1、2回の出社であれば許容範囲だろう。
ちなみに、千葉ニュータウン中央駅からは成田空港駅まで24分で行くこともできるので、テレワーク以外は海外出張が多い、という人には好ましい立地条件となる。
今回紹介した中古マンションは、いずれも「いくら安くて広くても、そんな不便な場所ではねえ」と言われていたマンションだ。しかし、今回のコロナ禍をきっかけにテレワークが定着すれば、「自分にはわるくない選択肢」となる人が出てきそう。
それどころか、テレワークの広まり次第で、人気が沸騰する可能性がある。なんといっても、今、新築マンションでは、超高級物件以外で100平米住戸などどこにも売っていないのだから。