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より安心・安全で楽しい相撲観戦を実現 九州場所における親方衆の奮闘劇

飯塚さきスポーツライター/相撲ライター
左から小野川親方、岩友親方、不知火親方(筆者撮影)

大相撲九州場所2日目。九州場所担当の不知火親方(元小結・若荒雄)と小野川親方(元幕内・北太樹)、加えて、同じく日本相撲協会公式YouTube「親方ちゃんねる」でもおなじみの岩友親方(元幕内・木村山)に、2年ぶりとなった九州場所の様子について話を伺った。

九州場所ならではの感染予防対策

月曜日にもかかわらず、多くの人でにぎわう福岡国際センター。「千秋楽のチケットは売り切れです。連日、平均して7割くらいのお客さんが入っています」と話す不知火親方。同じく九州場所担当の小野川親方らと共に、2年ぶりに開催する九州場所の準備と運営に奔走している。

「今場所で初めての試みは、キッチンカーと飲食スペースの導入です。観覧席での飲食ができないので、代わりに外で開放的に食事を楽しんでもらおうと設置しました」(不知火親方)

広場に設置されたキッチンカー(筆者撮影)
広場に設置されたキッチンカー(筆者撮影)

多くの人が利用し、途中から椅子の数を増やしたという飲食スペース(筆者撮影)
多くの人が利用し、途中から椅子の数を増やしたという飲食スペース(筆者撮影)

メニューは日によって変わるため、何度も足を運ぶお客さんを飽きさせない。飲食スペースにはテレビを設置し、相撲中継を見ながら食事ができるようになっている。

キッチンカーの豊富なメニュー(筆者撮影)
キッチンカーの豊富なメニュー(筆者撮影)

「あと、今場所から溜まり席の数を増やすことができました。国技館よりも、溜まりから土俵までの距離が遠いのもありますが、感染予防対策の徹底によって、徐々に緩和できている部分があるのはうれしいことですね」(小野川親方)

7月に、コロナ禍での地方場所を成功させた名古屋場所担当の岩友親方は、さまざまなコロナ対策を、九州場所担当の親方衆にも引き継いだそう。

「名古屋でやったことを、こうしてうまく連携しながら引き継いでできているので、親方ちゃんねるで横のつながりができたことは、とてもよかったと思っています」(岩友親方)

“密”を防ぐ対策としては、9月場所から導入された「とりおきくん」というシステムを、九州場所でも活用。ほしいものをスマートフォンで事前に注文しておくことで、売店に並ばずに商品を受け取ることができるものだ。

「密を避けられるだけでなく、受け渡しがスムーズなので、お客さんからも好評です。日々いろんな親方たちが売店やカウンターに立って、ファンの皆さんに商品をお渡ししています」(小野川親方)

「とりおきくん」のカウンターに立つ、元関脇・勢の春日山親方(筆者撮影)
「とりおきくん」のカウンターに立つ、元関脇・勢の春日山親方(筆者撮影)

九州場所の見どころと運営の思い

では、親方衆が見る今場所の見どころはなんだろうか。「優勝候補筆頭は照ノ富士」と、三者口をそろえて言うが、それぞれで注目している力士がいるのだそう。

「やっぱりご当地力士じゃないですか。明生、佐田の海、松鳳山。新十両の平戸海も長崎出身ですし、若い力で頑張ってほしいですね」(不知火親方)

「私は琴ノ若に注目しています。同じ四股名だったお父さんの血を引いているわけですから、強くなってくると思いますよ」(小野川親方)

「あとは先場所からですが、妙義龍にも注目です。またここのところ力を伸ばしてきていますからね」(岩友親方)

三者三様の注目力士。ここからの活躍に目を向けて見るのも面白そうだ。

YouTubeの撮影にもお忙しい3人の親方衆。土俵を沸かせる力士から、協会員として運営に回るようになって、あらためて感じることもあるという。

「僕たちも、場所の準備に手を動かしていますが、本当にいろいろな方のご協力があって本場所が開催されているんだなということを、身をもって実感しています。ぜひ、多くの地元の方に足を運んでいただきたいですね」(不知火親方)

現役力士が「土俵の充実」に集中できるよう、運営に携わる親方衆も、全力でそれを支えている。本場所開催のありがたみは、言うまでもなく、きっと力士にも地元のファンにも届いているに違いない。

スポーツライター/相撲ライター

1989(平成元)年生まれ、さいたま市出身。早稲田大学国際教養学部卒業。ベースボール・マガジン社に勤務後、2018年に独立。フリーのスポーツライター・相撲ライターとして『相撲』(同社)、『Number Web』(文藝春秋)などで執筆中。2019年ラグビーワールドカップでは、アメリカ代表チーム通訳として1カ月間帯同した。著書に『日本で力士になるということ 外国出身力士の魂』、構成・インタビューを担当した横綱・照ノ富士の著書『奈落の底から見上げた明日』。

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