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来年2月に引退相撲控える元幕内・德勝龍の千田川親方 同期・宝富士との思い出や部屋の美ノ海へエールも

飯塚さきスポーツライター/相撲ライター
来年2月1日に引退相撲を控える元幕内・德勝龍の千田川親方(写真:筆者撮影)

昨年7月の名古屋場所を最後に土俵を去った、元幕内・德勝龍の千田川親方。来年2月1日(土)に引退相撲を控え、現在はその準備に奔走する。そんな親方に、あらためて引退時の心境や亡き父への思い、また現在の職務と引退相撲の構想などについて話を伺った。

最後は亡き父のために土俵に立った

――昨年の名古屋場所を最後に引退された千田川親方。あらためて、引退の背景を教えてください。

「一昨年の九州場所で負け越して幕下に落ちるとなったとき、師匠からは『一場所でもう一回(十両に)上がれ』って励ましてもらい、自分も上がってやろうという気力で土俵に立ちました。実際、一場所で上がれたんですが、3月場所ではまた負け越して落ちて。その次の5月場所を前に、父が亡くなったんです。3歳から柔道を教えてくれて、相撲も野球もさせてくれた親父。また幕下に落ちて、今度は気力もなくなっていましたが、最後は自分のためじゃなくて、親父のために頑張ろうかなと思えるようになったんですね。結果は負けたんですけど、やり切って引退したので、悔いはないです」

――角界入りも、お父さまが背中を押してくれたんですね。現役時代の思い出は。

「一番対戦するときワクワクしたのは、大学から一緒だった宝富士関です。相撲部では自分と宝富士関だけは教職を取っていなかったので、大学では授業もずっと一緒でした。あと、三役に上がりたかったなっていうのはあるんですが、優勝したときは、それ以上の経験をさせていただいたなと思っています」

現役時代は「幕尻優勝」も経験。一躍時の人となった
現役時代は「幕尻優勝」も経験。一躍時の人となった写真:長田洋平/アフロスポーツ

――引退後、相撲や生活への考え方など、見える景色はどう変わってきましたか。

「現役のときは自分が勝たないと意味がないので自分中心の考え方でしたが、指導するのは難しいですね。自分が経験してきたことしかなかなか教えられなくて。ただ、自分が気をつけているのは、『なんでできないの?』って言わないようにすること。なんでって言われても、できないものはできないですから、できることをすればいいと思うんです。その上で、こうしたらもっと上手くなれるよ、という声のかけ方をする。いろんな人にアドバイスをもらうなかで、自分が言ったことを頭の片隅で思い出して、ちょっと実践してみようかな、と思ってもらえるだけですごくありがたいと思っています」

――引退から1年以上。警備などの仕事も慣れましたか。

「はい、もうすっかり。警備室でほかの親方衆と話すと、いろいろ面白いですよ。琴恵光関ってこんなに声高かったっけとか、貴景勝めちゃくちゃおもろいやん!とか(笑)。現役中は知らなかったことがたくさんあります」

美ノ海へエール「前みつの技術は角界トップ3」

――断髪式の準備はどのくらい進んでいますか。

「チケット販売を頑張りながら、グッズも徐々に作っています。Tシャツやフェイスタオル、タンブラー、トートバッグなど。かわいいものをそろえているので、楽しみにしていてください。すでに断髪式をされたほかの親方衆もいろいろと教えてくださるので、アドバイスをしっかり取り入れています」

――髪型はどうされますか。

「大学のときは、短いスポーツ刈りみたいな感じだったので、うーんどうですかね。横を短くしようかな。式当日の整髪は、お任せでパパっとお願いすると思いますが、いつか一度おしゃれな七三分けみたいな髪型にしてみたいです」

――どんなスタイルが似合うか、今後楽しみですね。目指したい理想の親方像は。

「怒ってばっかりも褒めてばっかりもダメだと思うので、そのバランスを大事に。強い・弱いは関係なしに、こいつ応援してやりたいって思わせるような、力士の前に一人の人間として、そういう男を育てたいです」

――ありがとうございます。では、最後に木瀬部屋の力士たち含め現役の力士へ、この九州場所のエールをお願いします。

「ご当所でいったら、美ノ海が上位と対戦するところまで番付を上げてきました。いつも本人に言っていますが、前みつを取る巧さは角界でトップ3くらいに入ると思うんです。そこに力強さが加わってきたら、上位も苦しめられる存在になるでしょう。あとは新大関・大の里が注目されていますが、琴櫻・豊昇龍の大関二人が、負けていられないと思って絶対くると思うので、面白くなるんじゃないですかね、この九州場所。見どころがたくさんあるので、最後まで盛り上がってほしいです」

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スポーツライター/相撲ライター

1989(平成元)年生まれ、さいたま市出身。早稲田大学国際教養学部卒業。ベースボール・マガジン社に勤務後、2018年に独立。フリーのスポーツライター・相撲ライターとして『相撲』(同社)、『Number Web』(文藝春秋)などで執筆中。2019年ラグビーワールドカップでは、アメリカ代表チーム通訳として1カ月間帯同した。著書に『日本で力士になるということ 外国出身力士の魂』、構成・インタビューを担当した横綱・照ノ富士の著書『奈落の底から見上げた明日』。

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