日本では現金と預金が54.1%…主要国の家計資産の構成比率実情(2023年公開版)
家計におけるお財布事情は人それぞれで、さらに国によって年金や投資など金銭関連の制度も異なるため、金融資産の中身も大きな違いを見せる。その実情をOECD(経済協力開発機構)の公開データベース「Household accounts」から確認する。
次に示すのは「Household accounts」に収録されている国のうち主要国として、ヨーロッパ諸国からはイギリス、スウェーデン、フランス、ドイツ、スペイン、イタリア、ギリシャを、それ以外からはイスラエル、日本、韓国、カナダ、アメリカ合衆国を選び、それぞれの国における家計の金融資産の主要項目における平均的な構成比率を算出したもの。なお「株式以外の証券」とは主に債券を意味する。
まずはヨーロッパ諸国。
ギリシャは現金・預金が6割近くを占めており、この比率は日本以上の値を示している。他方スウェーデンは株式・出資金の比率が高く、後述するアメリカ合衆国に近い値となっている。フランスでも株式・出資金の比率が高めだが、投資家への税制上の優遇措置となるPEA(Plan d'epargne en actions。同口座で5年以上保有し続けると配当や売却益は非課税になる)が有効に使われているのが主要因。
イギリスでは保険・年金の値が5割と、今回挙げる国の中ではイスラエルに次いで大きな比率を示している。これは同国では税制上の優遇措置によって、一時払いの個人年金などが個人の貯蓄の手法として広く普及していることに加え、公的年金が民営化されているのが原因。内情としては年金基金部分が37.9%となっている。
続いて日本やアメリカ合衆国など。
日本の現金と預金の多さ、アメリカ合衆国の株式・出資金の多さが目にとまる。一方、先のヨーロッパ諸国のグラフでも言えることだが、それぞれの国の税制、金融制度によって家計の金融資産構成はまちまちで、日本・アメリカ合衆国いずれかのパターンに近いわけではないのが分かる。例えばカナダは「その他」が1/3近くと大きな値を示しているが、これは特にデータベース上説明は無いものの、TFSA(Tax-Free Saving Account。非課税貯蓄口座)やRRSP(Registered Retirement Savings Plan。税制適格退職貯蓄制度)、さらにはRESPs(Registered Education Savings Plans。税制適格教育貯蓄プラン)など日本のNISA的な制度が山ほど整備されており、それらが該当するものと考えられる。
限られた国数ではあるが、諸国の家計金融資産の構成比を見る限り、日本の現金・預金の多さはそれなりに高い値であり、リスク性資産の比率は相当に低い値であることが分かる。あるいはイギリスのような個人年金を奨励する税制措置、フランスのような長期投資を優遇する措置、カナダのような多様な優遇措置を提供する制度の整備で、リスク性資産の選択肢を増やすのも、現状を変える手立てとしては有効かもしれない。
■関連記事:
【金融資産を持たない世帯、夫婦世帯は2割強・単身は3割強(最新)】
(注)本文中のグラフや図表は特記事項のない限り、記述されている資料からの引用、または資料を基に筆者が作成したものです。
(注)本文中の写真は特記事項のない限り、本文で記述されている資料を基に筆者が作成の上で撮影したもの、あるいは筆者が取材で撮影したものです。
(注)記事題名、本文、グラフ中などで使われている数字は、その場において最適と思われる表示となるよう、小数点以下任意の桁を四捨五入した上で表記している場合があります。そのため、表示上の数字の合計値が完全には一致しないことがあります。
(注)グラフの体裁を整える、数字の動きを見やすくするためにグラフの軸の端の値をゼロではないプラスの値にした場合、注意をうながすためにその値を丸などで囲む場合があります。
(注)グラフ中では体裁を整えるために項目などの表記(送り仮名など)を一部省略、変更している場合があります。また「~」を「-」と表現する場合があります。
(注)グラフ中の「ppt」とは%ポイントを意味します。
(注)「(大)震災」は特記や詳細表記のない限り、東日本大震災を意味します。
(注)今記事は【ガベージニュース】に掲載した記事に一部加筆・変更をしたものです。