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自分の資産・貯蓄に満足している人は全体では4割強

不破雷蔵「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者
↑ 目的は人それぞれだが蓄財を成す人は多い。自分の蓄財にどれほどが満足しているか(写真:アフロ)

将来のため、保険的な意味で、何か目的を果たすため、人は蓄財をする。その蓄財の実情にどれほどの人が満足しているのだろうか。内閣府が2017年8月に発表した定点観測調査「国民生活に関する世論調査」(※)の結果から確認する。

現在の生活において、蓄財の具体的な形となる資産や貯蓄の面で回答者自身がどれほど満足しているかを調査対象者に聞いたところ、全体では満足している5.6%・やや満足している38.7%となり、合わせて44.3%が「満足派」との結果となった。

↑ 現在の生活の満足度(資産・貯蓄)(2017年)
↑ 現在の生活の満足度(資産・貯蓄)(2017年)

逆に明確な不満を持つ人は15.1%、やや不満が37.3%となり、合わせて52.4%が「不満足派」。「満足派」と比べて8.1%ポイントもの開きを見せている。男女別ではやや女性の方が満足派が多いものの、その差異は0.9%ポイント。「分からない」「どちらともいえない」の値を考えれば、ほぼ誤差の範囲。

属性別の差異がはっきりと見られるのは、むしろ年齢階層別。

↑ 現在の生活の満足度(資産・貯蓄)(年齢階層別)(2017年)
↑ 現在の生活の満足度(資産・貯蓄)(年齢階層別)(2017年)

18歳から29歳はまだ「満足派」がやや多め。しかし30代から50代は大きく値を下げ、逆に不満足派の方が多数派となる。これは多分に世帯を抱え、子供の養育費や住宅ローンの重圧により、首が回らない状態にあることを起因としている(今件は生活全般では無く、あくまでも資産・貯蓄に限定した満足度であることに注意)。60代に入ってようやくそれらの金銭的重圧から解放され、また退職金などでまとまったお金が手に入り、資産・貯蓄の面で満足している人が増えてくると考えれば道理は通る。

もっとも70歳以上になれば(大抵の場合は)消費する金額の方が多いので、現時点での資産・貯蓄の満足度は60代と比べて減ってもおかしくはない。ところがむしろ満足度が増えているのは、この年齢における退職金の額が現在の相場よりも大きかったことや、金銭に対する価値観の世代間での違いなどに起因しているものと思われる。また、自らが消費する金額が小さくなり、所有する資産・貯蓄との比較の点で、より大きく思える点もあろう。今件はあくまでも回答者の心境に基づくものであり、同じ金額でも個々の価値観によって判断・回答は異なることに注意しなければならない。

ちなみに全体としての「満足度」の経年変化に関しては、大きな動きはない。

↑ 現在の生活の満足度(資産・貯蓄)(満足派・不満足派の推移)
↑ 現在の生活の満足度(資産・貯蓄)(満足派・不満足派の推移)

「満足派」4割前後、「不満足派」5割強から6割程度のラインを行き来している。ここ数年に限れば満足派が増え、不満足派が減り、両者の差異が縮まる形を示している。社会的、とりわけ経済上の状況改善が継続すれば、この差もさらに縮まるだろうが、過去のデータの限りでは両者がクロスする機会はなかったので、それを望むのは難しいかもしれない。劇的な経済環境の変化がない限り、この立ち位置は継続するだろう。

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※国民生活に関する世論調査

直近分は2017年6月15日から7月2日にかけて、全国18歳以上の日本国籍を有する者の中から層化2段階無作為抽出法で1万人を選んだ上で、調査員による個別面接聴取法によって行われたもので、有効回答数は6319人。男女比は2945対3374、世代構成比は18-19歳が74人・20代467人・30代712人・40代1046人・50代981人・60代1395人・70歳以上1644人。過去もほぼ1年毎に同じような規模・調査方法で行われている。

(注)本文中の各グラフは特記事項の無い限り、記述されている資料を基に筆者が作成したものです。

「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者

ニュースサイト「ガベージニュース」管理人。3級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)。経済・社会情勢分野を中心に、官公庁発表情報をはじめ多彩な情報を多視点から俯瞰、グラフ化、さらには複数要件を組み合わせ・照らし合わせ、社会の鼓動を聴ける解説を行っています。過去の経歴を元に、軍事や歴史、携帯電話を中心としたデジタル系にも領域を広げることもあります。

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