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益虫テントウは可愛い殺し屋⑤=アカイロテントウ

天野和利時事通信社・昆虫記者
オオワラジカイガラムシを襲うアカイロテントウ成虫。

 不快害虫のオオワラジカイガラムシに襲いかかるアカイロテントウは、まるで大怪獣に戦いを挑む正義のヒーローのように見える。

 アカイロテントウ成虫の体長は4~5ミリ。これに対し、日本最大のカイガラムシであるオオワラジカイガラムシのメス成虫の体長は10~15ミリにも達する。

 アカイロテントウは幾つかの種類のカイガラムシを食べるらしいが、その中でも特にお気に入りなのがオオワラジカイガラムシ。オオワラジカイガラムシはクヌギ、マテバシイなどに多いので、それを餌にするアカイロテントウも、こうした木に多い。

アカイロテントウは自分と同じくらいか、やや小さめのオオワラジカイガラムシを好んで食べるようだ。
アカイロテントウは自分と同じくらいか、やや小さめのオオワラジカイガラムシを好んで食べるようだ。

アカイロテントウに中身を食べられた後のオオワラジカイガラムシの残骸。
アカイロテントウに中身を食べられた後のオオワラジカイガラムシの残骸。

 アカイロテントウをまだ見たことがなく、是非一度見てみたいという人(あまりいないと思うが)にお勧めなのは、5月下旬ごろに葉裏に付いた蛹を探すこと。オオワラジカイガラムシが多く張り付いている木なら、かなりの数のアカイロテントウの蛹が葉裏に付いているはずだ。その蛹を持ち帰れば、数日後にアカイロテントウが羽化してくる。

アカイロテントウの蛹。
アカイロテントウの蛹。

羽化直後のアカイロテントウと蛹の抜け殻。
羽化直後のアカイロテントウと蛹の抜け殻。

 アカイロテントウは、全身ほぼ赤一色の可愛いテントウ。これに対しオオワラジカイガラムシは、寄生虫のようなちょっと不気味な姿だ。このため、アカイロテントウは正義の味方。オオワラジカイガラムシは悪魔の手先の印象が強くなる。

 しかし、オオワラジカイガラムシは、有用な植物を枯らす大害虫ではないので、アカイロテントウも素晴らしい益虫と言うほど人間の役に立つわけではない。

 虫好きの目でじっくり観察すると、まさに草鞋(わらじ)のようなオオワラジカイガラムシの方が、むしろ愛おしく思えてくることすらある。ちなみに各地の寺や神社で見かける「大わらじ」は、魔除けの効果があるという。

 成虫の姿が可愛いアカイロテントウも幼虫時代は、オオワラジカイガラムシのメスによく似た不気味な姿をしているので、正義の味方の雰囲気はほとんどない。

オオワラジカイガラムシのメス成虫と幼虫。
オオワラジカイガラムシのメス成虫と幼虫。

オオワラジカイガラムシは、カイガラムシとしては珍しく、メス成虫にも6本の脚が退化せず残っている。
オオワラジカイガラムシは、カイガラムシとしては珍しく、メス成虫にも6本の脚が退化せず残っている。

アカイロテントウ幼虫を腹側から(左)と背中側(右)から見たところ。
アカイロテントウ幼虫を腹側から(左)と背中側(右)から見たところ。

(写真は特記しない限りすべて筆者撮影)

時事通信社・昆虫記者

天野和利(あまのかずとし)。時事通信社ロンドン特派員、シンガポール特派員、外国経済部部長を経て現在は国際メディアサービス班シニアエディター、昆虫記者。加盟紙向けの昆虫関連記事を執筆するとともに、時事ドットコムで「昆虫記者のなるほど探訪」を連載中。著書に「昆虫記者のなるほど探訪」(時事通信社)。ブログ、ツイッターでも昆虫情報を発信。

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