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真冬のツバキの花見のついでに探すウラギンシジミ

天野和利時事通信社・昆虫記者
オス(上)とメスで色柄大違いのウラギンシジミ。越冬中は綺麗な翅を閉じてしまう。

 ツバキ(椿)は真冬の森で楽しめる花の代表。赤、白、ピンクの花が咲き誇る。ツバキには厄介な毒虫のチャドクガ幼虫が付くが(5~9月ぐらいが特に危険)、この毛虫は冬にはいなくなるので、真冬のツバキの花見は安心だ。

 そして冬のツバキには、越冬中のウラギンシジミというおまけが付いてくることがある。ウラギンシジミはシジミチョウの仲間の中では日本最大級の蝶。モンシロチョウを少し小さくしたぐらいの大きさがあり、「シジミ」という言葉の印象とはかなり違う。

越冬中のウラギンシジミ(画面中央の白い三角形が蝶)。
越冬中のウラギンシジミ(画面中央の白い三角形が蝶)。

拡大すると蝶だと分かる。
拡大すると蝶だと分かる。

 そしてウラギンシジミのオスの翅の表には、南国の蝶のような鮮やかなオレンジ色の紋がある(メスの紋は白色)。昆虫記者が少年時代にこのオレンジ色の蝶を見つけた時には、ドキドキしながら捕虫網を構えたものだ。

 このウラギンシジミは、ツバキ、マテバシイなど常緑広葉樹の、厚手の葉の裏側で成虫越冬する。残念ながら、オレンジ色のオスは冬までにほぼ全滅するので、成虫越冬しているのはメスばかりだと言う。

 そのメスにとっても、冬の寒さは厳しく、無事越冬を終えて春に産卵できるメスはごくわずからしい。

 ツバキの花見の際に、か弱いこの蝶を見つけたら、無理やり翅を開かせてオスかメスが調べたりせず(昆虫記者はそんな悪行に手を染めたことがあります。反省)、優しく見守ってほしい。

翅の一部が破れているのでメスだと分かる。越冬中のウラギンシジミはメスばかりだと言われる。
翅の一部が破れているのでメスだと分かる。越冬中のウラギンシジミはメスばかりだと言われる。

夏場のウラギンシジミのオス。翅を開き始めてオレンジ色の紋が見え始めるとワクワクする。
夏場のウラギンシジミのオス。翅を開き始めてオレンジ色の紋が見え始めるとワクワクする。

 ウラギンシジミの越冬成虫を見つけるには、ツバキの木を下から眺めるといい。ウラギンの名の通り、この蝶の翅の裏側は銀色。越冬中は翅を閉じているので、その姿は銀色の尖った葉のように見える。

 昼間はこの翅が、茂った葉の間から差す日の光のようにも見えるので、蝶の存在に気付きにくい。なので、日がかげった夕刻の方が、見つけやすい気がする。

(写真は特記しない限りすべて筆者=昆虫記者=撮影)

時事通信社・昆虫記者

天野和利(あまのかずとし)。時事通信社ロンドン特派員、シンガポール特派員、外国経済部部長を経て現在は国際メディアサービス班シニアエディター、昆虫記者。加盟紙向けの昆虫関連記事を執筆するとともに、時事ドットコムで「昆虫記者のなるほど探訪」を連載中。著書に「昆虫記者のなるほど探訪」(時事通信社)。ブログ、ツイッターでも昆虫情報を発信。

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