BTSターゲットにブーイング浴びせるも、しっぺ返しされた中国共産党系メディア
韓国の人気グループBTS(防弾少年団)の所属事務所が、中国の主張と異なる国境線の描かれた地図を使い、中国のネットユーザーから批判が上がった。共産党系メディアがこの問題をBTSと絡めて批判的に報じたところ、逆に中国国内で「他の事務所も問題のある地図を使っているのに、なぜBTSだけを問題視するのか」という反発が起き、矛先がメディア側に向かう事態に。当該記事は現在、開けなくなっている。
◇「事務所が炎上」
BTSの所属事務所ビッグヒットエンターテインメントが23日、昨年の決算報告書を発表した。この時に使用されていた地図で、中国が自国領と主張している場所が「インド領」として扱われていた。中国側で反発が起き、中国版ツイッター「微博(ウェイボー)」上には「事務所は地図を修正せよ」「“ゴミ会社”は中国から出て行け」などと書き込まれる事態となった。
この問題を共産党機関紙・人民日報系「環球時報」の英字版グローバル・タイムズが取り上げ、「事務所が炎上した」と伝えた。ネットユーザーの「正確な地図を探すことがそんなに難しいのか、それともそうする意思がないのか?」「朝鮮戦争をめぐる発言でBTSが問題視されたので事務所が報復した」などの声を掲載し、BTSを批判的に扱った。
だが、この報道に対して、中国側で批判が起きたのだった。
韓国有力紙・中央日報系テレビ放送局JTBCによると、中国の芸能メディアのソーシャルメディアでは関連情報に大量のコメントがついたという。そこには「SMエンターテイメント(BoAや東方神起も所属する韓国の大手芸能事務所)は、香港や台湾も“国家”として表示しているのに、なぜBTSだけが問題視されるのか」「BTSを絡めなければ、人々を引き寄せられないのか」などの書き込みが相次ぎ、9割以上がBTSよりもグローバル・タイムズを批判する内容になっているという。
JTBCは「結局、中国のメディアが出てきて、またBTSを攻撃したのはいいが、むしろ世論の逆風を受けたということだ」と締めくくっている。
◇中印国境は敏感な地域
問題の原因となったのが中国とインドの国境だ。ヒマラヤ山脈で国境線が画定していないため、長年紛争が続いている。中国が今回、問題視したのは、インドが実効支配するヒマラヤ山脈東部のアルナーチャル・プラデーシュ州に関する表示だった。中国はここの領有権を主張し、「南チベット」と呼んでいる。
その昔、辛亥革命(1911年)で清朝が倒れた際、チベットはモンゴルとともに独立を宣言し、清のあとに樹立された中華民国との間で紛争となった。これを調停するため、当時インドを植民地統治していた英国などを交えた会議(シムラ会議)が開かれた。最終的に、この会議の参加者は英国とチベットのみとなり、両者によって▽チベットを中華民国の主権下にとどめる▽一方でチベット南部を英領インドのものとする――で一致し、国境線(マクマホンライン)が決められた。
1947年にインドが独立したあとも、譲渡された領土の境界線はそのまま保持するという原則が取られた。
だが、その2年後に成立した中華人民共和国はマクマホンラインの承認を拒否してチベット南部の領有権を主張し、インドとの間で武力衝突が勃発した。インド側は実効支配を強化するため、当該地域を「アルナーチャル・プラデーシュ州」とし、インフラ整備を進めてきた。
中印国境をめぐっては、ヒマラヤ山脈のガルワン渓谷で6月15日にも両軍の乱闘が起き、両軍で死傷者が出ている。