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現在までに24本の足が流れ着いた、セイリッシュ海の超常現象

華盛頓Webライター
credit:unsplash

セイリッシュ海――その名はどことなく荘厳で、かつて神秘のベールに包まれた未知の海域を想像させます。

だが、近年、この海域に現れるのは、どこか異様なものでした。

この記事ではセイリッシュ海で起きた奇妙な事件について取り上げていきます。

現在までに24本の足が流れ着いたセイリッシュ海

2007年8月のある夏の日を境に、バンクーバー島と大陸の間を挟む内海、セイリッシュ海の岸辺に、人の足が次々と流れ着くという奇怪な現象が起き始めました。

しかもそれは、他の体の部分を伴わない、ただ一足だけが、ひとり寂しく波間に揺られたのち、岸辺にたどり着くというのだから、不気味さを増すばかりです。

最初に足を見つけたのは、旅行でやってきた少女でした。

少女は、どこか無邪気に漂流物を拾い集め、そしてその一つを手に取ったのです。

アディダスの白と青のメッシュ素材のスニーカーが海藻にまみれて転がっているのを見つけ、ちょっとした宝物を見つけたかのようにその靴を開いてみました。

中には、なんと、人間の足が収まっていたのです。

少女の叫び声が海岸に響き渡ります。

驚きと恐怖に満ちたその声は、瞬く間に一帯の住民や観光客たちに広がり、その後の物語は恐怖を増していくのです。

次々と見つかる足、スニーカーを履いたまま、片足だけが海からやってきます

これは果たして偶然なのか?

それとも何か邪悪な陰謀がこの海域に潜んでいるのか?

検視官たちはこの奇妙な現象に頭を抱えました。

足の所有者たちは誰なのか?

何が原因で彼らは命を落としたのか?

そして、なぜ足だけがこうして漂着するのか?

最初は、殺人事件か何かの犯罪の痕跡ではないかと疑われたのです。

しかし、時が経つにつれ、状況は少しずつ明らかになっていきました。

検視官たちは、こうした足は自殺や事故によるものではないかとの見解を示したのです。

セイリッシュ海は広大で、時に残酷なまでに冷たい海です。

自ら命を絶つためにこの海へと身を投じた者、あるいは不運にも事故で海に呑まれた者たちの体は、腐敗の過程で自然と分離し、浮力のあるスニーカーが足を保護して、岸へと運ばれてくるのだとのことです。

確かに、足がスニーカーを履いた状態で見つかることが多く、その理由は、スニーカーの浮力が足を波に乗せ、遠くの岸辺まで運んでくれるためだと言われています。

また、スニーカーそのものが腐敗から足を守り、比較的に状態が保たれるとのことです。

だが、それでもなお、こうした説明だけでは割り切れないものがあります。

例えば、2008年7月には、DNA鑑定によって一つの足の持ち主が特定されました

鬱状態にあったとされる男性で、どうやら自殺を遂げたらしいです。

しかし、これで全ての謎が解けるわけではないといえます。

次々とやってくる足の持ち主たちは、何を思い、どんな経緯で海へと導かれたのでしょうか。

その足元のスニーカーは、何を語っているのでしょうか?

足の発見は一時的なものではありませんでした

それはまるで、セイリッシュ海がその深淵から次々と何かを吐き出しているかのように、定期的に続いています

1887年には、バンクーバーの海岸で足が発見された記録があり、その地は「Leg-In-Boot Square」(レッグ・イン・ブート広場)と呼ばれるようになったといいます。

この不気味な名称さえも、後に訪れる現象を予見していたかのようです。

2007年8月の発見を皮切りに、その後、セイリッシュ海に浮かぶ島々やワシントン州の海岸で、次々と足が発見されました

例えば、ガブリオラ島、ヴァルデス島、カークランド島などです。

足は男性のものだけでなく、女性や子供のものも含まれており、履いていたスニーカーの種類やサイズ、製造年などが異なります

スニーカーにはナイキやニューバランス、アディダス、リーボックといった名だたるブランドが並び、それぞれがこの奇妙な物語に一役買っているのです。

2008年8月には、アメリカ・ワシントン州のピシュト近郊で、カナダから運ばれたとみられる足が発見されました。

この足は、29センチと大きな黒い競技用シューズを履いていたのです。これがブリティッシュコロンビア州以外で最初に見つかった足であり、セイリッシュ海の不思議な現象が国境を越えて広がっていることを示唆していました。

その後も、発見される足の数は増え続け、カナダとアメリカの検視官たちはその原因究明に追われたのです。

しかし、依然としてすべての謎が解明されたわけではありません。

たとえば、2011年に発見された足は、2004年にニューウェストミンスターの橋で投身自殺した女性のものと特定されたものの、他のケースではまだ身元が判明していないものも多いといえます。

さらには、イタズラも横行するようになりました。

2008年6月、バンクーバー島のキャンベルリバー近くで発見された「足」は、実は動物の骨に靴下と靴を履かせた偽物だったのです。

犯人は誰なのか、何を思ってこんな悪戯を仕掛けたのか、今となっては知る由もないが、この無神経な行為は王立カナダ騎馬警察をも動かす事態となりました。

21世紀を迎えた今もなお、セイリッシュ海の謎は解けていません。

人々は海辺にあがってきた足を見るたびに、ひそかに自らの足元を見つめ直すでしょう。

そう、この世に踏みしめる地がある限り、セイリッシュ海の波間に揺られる足たちは、私たちに語りかけているのです。

Webライター

歴史能力検定2級の華盛頓です。以前の大学では経済史と経済学史を学んでおり、現在は別の大学で考古学と西洋史を学んでいます。面白くてわかりやすい記事を執筆していきます。

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