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引退後はクラブ社長目指す五郎丸歩 引退試合が幻になった背景は。【ラグビー旬な一問一答】

向風見也ラグビーライター
写真提供=ヤマハ発動機ジュビロ

 今季限りで現役を引退したラグビー元日本代表で、ヤマハ所属の五郎丸歩が、14日、静岡県内で会見した。

 開幕前の昨年12月に第一線から退くと表明しており、今年4月の最終戦の際には改めて記者会見を開く旨を語っていた。

 都内などの記者もオンラインで参加した今回の会見では、今後の進退に関する話が多かった。もっとも現役時代の思いも語っており、6月12日の一戦の背景についても質問を受けた。

 以下、共同会見時の一問一答の一部(編集箇所あり)。

「皆さんが一番関心を寄せておられるかなと思われる、進退ですが、2022年1月からの新リーグでヤマハが新たに新設しますプロクラブの方で、事業化、地域貢献の象徴として、私もクラブの一員としてやっていきたいと思っています。

このチーム名などはですね、実は、私の方から言うことができない…ということがありまして。チーム名だとか、エンブレムというのは、6月23日に社長からの会見があると聞いています。具体的な私の役職は7月の上旬に正式な会見をさせていただこうと思っております」

——この後も静岡に残るのか。

「この会見を聞いて、アンバサダー的な立場で(仕事に)就くのかなというイメージを持たれていると思いますが、私はクラブの一員としてプロ化に向けて静岡に住んでクラブに関わっていく。なので、こちら(静岡)にお世話になります。

 このクラブでしかできないことがあると感じています。また、その可能性を叶えてくれるだけの関係を静岡県にはあると確信しています。そうしたことから、監督、コーチではなく、マネジメントサイドで活躍させていただけたらなとこの地域、このクラブを選びました」

——「このクラブでしかできない」こととは。

「2019年のワールドカップでの静岡で開催された試合を、県を挙げて全面的に協力をしていただきました。エコパスタジアムを聖地化しようという県の動きであったり、ラグビーに対して熱を持って取り組まれているといったところが、プロ化に向けたの一番のサポート(となる)。そういった魅力は他の県にはなかなか出せない、出せるのは唯一、静岡県だけかなと思っています」

——次のステージにクラブのマネジメントを選んだわけは。

「サンウルブズ(国際リーグのスーパーラグビーに日本から参戦したプロクラブ)を例に出すと、サンウルブズは企業名もついていませんし、皆が応援したくなるチームだったと記憶しています。企業色が強いラグビーという競技は、ファンの方々がつきづらいスポーツなのかなと感じています。そう感じながら現役生活を終えたのですが、これから新リーグになるにあたり、ヤマハは新会社を作ってプロクラブとして新たな道を開拓していく。そうした業界で先駆者になってくるであろうチームの一員として、現場ではなくマネジメントでともに成長したい思いが強かった。あとは単純にこの静岡県、ヤマハ発動機が好きというのが大きな理由だと思います」

——新リーグ全体へはどう貢献したいか。

「できるところ、できないところがもちろんあると思いますが、チームとしては様々なことにチャレンジしていきたい。静岡県にお世話になり、静岡県のなかから全国、世界に発信するクラブになっていければなぁと思います」

——指導者になる方向性はなかったか。

「進退につきまして、現場で行くのか、マネジメントサイドで行くのか非常に悩みましたが、一歩目をマネジメントに行ったというのは、指導者に戻らないという決意を持っています。ですが、トップのチームを指導することはないにせよ、子どもたちへの普及とか、そういったことはやっていきたいと思っています。

いままでラグビー界は企業色が強かったので、プロクラブを作る発想がなかったのですが、そこをヤマハが先陣を切ってやる。(現場での指導と)どちらがワクワクするかを天秤にかけたら、マネジメントの方が個人的にワクワクした。その感情を信じて、そうした道を選んだという感じですかね」

——マネジメントサイドでどんなことをしたいか。いずれは何になりたいか。

「新社長からはまず、チケットの企画だとか、そういうベースの部分からスタートしようというお話をしています。新社長と話すなか、『飾りのようなアンバサダー的な立ち位置ではなく、しっかり実力を積んで、クラブ経営というものを学んで欲しい』という話を受けましたので、チケットのところからやって、最終的にはこの球団の社長になれるまでの実力をつけていきたいなと思います」

 現役最後の試合は国内トップリーグのプレーオフトーナメント2回戦。4月24日、東京・江戸川陸上競技場でクボタに12―46で敗れたその日、五郎丸はスタンドにいた。怪我があったとされ、試合のメンバーから外れていたのだ。

 しかし、そのゲームに向けた練習には参加。タフに身体を張っていたと伝わっていた。

——当時を振り返っていただけますでしょうか。

「チームとしては月曜にチームアナウンスがあるので、その週にメンバーに入っていないことを認識したのですが、13年間、お世話になったチームですので、自分が出る、出ないに関係なく、全力で自分らしくトレーニングをした一週間だったと記憶しています」

——勝ち進んで次の試合でのメンバー入りを狙う思いも。

「勝ち進めば静岡(エコパスタジアムでの準々決勝、5月8日)に帰ってきて、ファンの方々の前でプレーする予定だったのですが、そういったことは叶わず、それ(2回戦)が最終戦という風になりましたが、それも人生と思っております」

 エコパスタジアムと言えば、6月12日の日本代表の強化試合も、その地でおこなわれた。

「JAPAN XV」名義の日本代表へ挑むチームには、五郎丸が加わることも期待されていた。いわば、地元でのビッグマッチが「引退試合」となる可能性が高まっていた。

 しかし結局、「JAPAN XV」に挑むサンウルブズにその名はなかった。

——これらの経緯について、お話しできる範囲のことがあれば。

「私は現役として去る人間ですから、2023年のフランス大会への強化の一環として、私が出場するに値しない試合だったのかなという風に、自分では思っています」

 会見中は、トップリーグの最後の試合に出られなかった悔しさを次への活力にしたいとも話していた。

「新会社でお世話になるのは7月1日から。それまでは少し時間があるということで、(趣味の)釣りを十分に楽しんで、7月からの活力にしたいなと思っています」

ラグビーライター

1982年、富山県生まれ。成城大学文芸学部芸術学科卒。2006年に独立し、おもにラグビーのリポートやコラムを「ラグビーマガジン」「ラグビーリパブリック」「FRIDAY DIGITAL」などに寄稿。ラグビー技術本の構成やトークイベントの企画・司会もおこなう。著書に『ジャパンのために 日本ラグビー9人の肖像』(論創社)『サンウルブズの挑戦 スーパーラグビー――闘う狼たちの記録』(双葉社)。共著に『ラグビー・エクスプレス イングランド経由日本行き』(双葉社)など。

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