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日本が待望する保守の尹錫悦候補「私が大統領になれば、米国の次に日本と首脳会談を行う」

辺真一ジャーナリスト・コリア・レポート編集長
最大野党「国民の力」の大統領候補・尹錫悦前検察総長(尹錫悦候補のHPから)

 世論調査の支持率でトップを走っている野党「国民の力」の尹錫悦(ユン・ソッキョル)大統領候補は昨日(3日)、ソウルで行われた放送会社3社が共同主催した「大統領選候補討論会」で「私が大統領になったら、米国の大統領の次に日本の総理に会う」と、中国よりも日本を重視する姿勢を示していた。

 討論会では司会者から各候補に当選後の外国首脳との会談優先順位に関する質問が出たが、保守派の尹候補は真っ先に「米国の大統領に会う」と述べ、「その次に日本の総理、そして習近平主席、金正恩委員長」と答えていた。躊躇うことなく、断言していた。

 韓国は朴正煕政権下の1965年に日本と国交を結んで以来、外交の枢軸を同盟国の米国と友好国の日本に置いていた。かつて北朝鮮から韓国の政権は「2本の紐で支えられている冠のようだ」と揶揄されたほど一にも二にも米国、日本との関係を重視してきた。従って、進歩派であれ、保守派であれ、政権発足後の歴代大統領の最初の外遊地は決まって米国で、その次が日本であった。

 例えば、進歩派の金大中(キム・デジュン)大統領は就任(1998年2月)から3か月後の5月に訪米した後、この年の10月に訪日して、小渕恵三首相との間で「21世紀に向けた日韓パートナーシップ宣言」を交わしていた。また、後任の同じ進歩派の盧武鉉(ノ・ムヒョン)大統領も同じく就任(2003年2月)から3か月後の5月に訪米し、早くも1か月後の6月には日本を訪れ、小泉純一郎首相(当時)と会談していた。

 次の保守派の李明博(イ・ミョンパク)大統領(2008年2月)も例にもれず、就任から2か月後の4月に訪米し、その帰途、日本を訪れ、福田康夫首相(当時)と首脳会談を行い、北朝鮮の核問題や日韓FTA協定、気候変動など共通の関心事について話し合っていた。

 こうした伝統的慣習を壊したのは保守派の朴槿恵(パク・クネ)前大統領である。初の女性大統領である朴槿恵氏は就任(2012年2月)から3か月後の5月に慣例に従い、訪米したが、次の外遊先に選んだのは日本ではなく、中国であった。

(参考資料:韓国の進歩は「反日」で保守は「親日」は本当?)

 日韓懸案の元慰安婦問題で日本が善処すれば、訪中前の訪日も検討していたが、日韓関係が改善されないことに痺れを切らしたのか、朴前大統領は日本に見切りをつけ、翌年の2013年6月27日に訪中を決行した。まさに、韓国の外交の軸足が「米日」から「米中」、「日本」から「中国」へと転換した日でもあった。その一方、朴前大統領は在任中に唯一訪日できなかった大統領として歴史に刻まれることになった。

 進歩派の文在寅(ムン・ジェイン)現大統領もまた、大統領に就任(2017年5月)した翌月の6月に訪米し、朴前大統領に倣い、日本をスルーしてこの年の12月に訪中し、習近平主席と会談している。

 尹候補は訪問国の順位を中国よりも日本を優先させたことについて「民主党政権(文在寅政権)は親中・親北の『屈辱外交』を行い、その結果、韓米、韓日関係が崩れてしまった」と文政権の外交を批判し、「これを正常に戻すことが優先事項であると考えている」とその必然性を強調していた。尹候補は選挙期間中、日米韓安保協力を再構築する必要性から「大統領になれば、就任後直ちに日本との関係改善に乗り出す」と言明していた。

 一方、進歩派で知られる与党「共に民主党」の李在明(イ・ジェミョン)大統領候補は「中国が先か、米国が先かと今から順序を定める必要はない」と、優先順位については触れずに「国益中心の実用外交が重要である、状況に合わせ、最も有効かつ効率的な時点で効率的な相手と会談することが重要である」とケースバイケースで対応する考えを明らかにした。

 また、第3の候補と注目されている中道の「国民の党」の安哲秀(アン・チョルス)候補は「バイデン大統領、習近平主席、金正恩委員長、岸田首相の順に会う」と、驚いたことに日韓首脳会談よりも南北首脳会談を重視していた。これまで北朝鮮に対しては尹候補よりも厳しいスタンスを取っていただけに意外な答えだった。

 この日の討論会では日本関連の質問はなく、もっぱら対中が焦点となった。中でも尹候補のTHAAD(高高度ミサイル防御システム)の追加配備公約を巡っては議論が沸騰していた。

 尹候補は「北朝鮮が首都圏を攻撃する場合、高角度で発射する場合が多いので当然、首都圏にTHAADを配備しなければならない」と、追加配備の必要性を強調したが、これに対して李候補は「政治が民政を損ねてはならない。尹候補は嫌中情緒に便乗し、中韓関係を離間し、政治的利益を追求しようとしている」と尹候補の公約を批判し、「中国との関係では貿易依存度や協力関係を決して無視はできない。THAADのため年間22兆ウォンの被害を被ったが、こうしたことがまた起きてはならない」と、安全保障上の理由からではなく、経済的な理由から反対していた。

 李候補の発言を聞いた安候補は李候補に対して「反米、親中路線のようにみえるが、そういう考えか?」と詰問したが、李候補は「間違っている。韓米同盟は唯一の安保同盟なので一層高度化させ、発展させなければならない」と釈明し、再度「中国の文化捏造、歴史捏造、西海や東海での不法操業などには断固対処し、責任を追及しなければならない。しかし、経済的協力関係から離脱してはならないので可能な限り、友好関係を維持することが大事だ」と自説を説いていた。

(参考資料:「反文在寅」の保守大統領候補は「親日」か「反日」か 「野党の希望の星」尹錫悦前検察総長の対日観)

ジャーナリスト・コリア・レポート編集長

東京生まれ。明治学院大学英文科卒、新聞記者を経て1982年朝鮮問題専門誌「コリア・レポート」創刊。86年 評論家活動。98年ラジオ「アジアニュース」キャスター。03年 沖縄大学客員教授、海上保安庁政策アドバイザー(~15年3月)を歴任。外国人特派員協会、日本ペンクラブ会員。「もしも南北統一したら」(最新著)をはじめ「表裏の朝鮮半島」「韓国人と上手につきあう法」「韓国経済ハンドブック」「北朝鮮100の新常識」「金正恩の北朝鮮と日本」「世界が一目置く日本人」「大統領を殺す国 韓国」「在日の涙」「北朝鮮と日本人」(アントニオ猪木との共著)「真赤な韓国」(武藤正敏元駐韓日本大使との共著)など著書25冊

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