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ハッブル宇宙望遠鏡が未知の巨大構造を新発見!その驚愕の正体とは?

どうも!宇宙ヤバイch中の人のキャベチです。

今回は「長さ20万光年の巨大直線構造を新発見、その正体とは?」というテーマで動画をお送りします。

●新発見の巨大直線構造

Credit: NASA, ESA, Pieter van Dokkum (Yale), Joseph DePasquale (STScI)
Credit: NASA, ESA, Pieter van Dokkum (Yale), Joseph DePasquale (STScI)

今表示されているのは、2023年4月に発表されたばかりの巨大直線構造の実写画像です。ハッブル宇宙望遠鏡が撮影しています。

この構造は地球からへびつかい座の方向に約76億7000万光年彼方に存在していて、その長さは約20万光年と、天の川銀河円盤の直径の2倍にもなります。

この構造は当初、観測機器に宇宙線が衝突することで発生するノイズであると考えられていましたが、ノイズとして除去できなかったことから、実在している構造であると判明しました。

●巨大直線構造の正体とは?

当初この直線構造は、「巨大なブラックホールが辿った軌跡」であるという風に解釈されていました。

そのような構造はこれまで発見されたことがなかったので、非常に興味深い解釈であると言えます。

ですがより最近、「単に巨大渦巻銀河を横から見ただけ」という、少し味気ない説も浮上しています。

以下では、それぞれの説について解説します。

○巨大ブラックホールの軌跡説

この説は、イェール大学などの研究チームが2023年4月に発表しています。

この説によると、直線構造の正体は、「その右上にある銀河から高速で飛び出した太陽の2000万倍の質量を持つ超大質量ブラックホールが辿った軌跡」なんだそうです。

天の川銀河中心の巨大ブラックホール「いて座A*」の質量が太陽の430万倍とされているので、太陽の2000万倍の質量はその5倍近くも巨大です。

この説によれば、現在は左下の少し明るい部分に、巨大ブラックホールが存在しています。

巨大ブラックホールの移動速度は秒速約1600kmにもなり、「地球から月までの距離を約14分で移動できるほど速い」と表現されているほどです。

この説によると、今から3900万年前にブラックホールが右上の銀河を飛び出し、星の流れを形成するようになりました。

形成された星の総質量は、なんと太陽の30億倍にもなるとされています。

では、なぜ巨大ブラックホールが辿った軌跡が輝いて見えるのでしょうか?

それはその箇所に恒星がたくさん形成されたからです。

ブラックホールは銀河周辺の希薄なガスを重力で圧縮します。

ブラックホール通過後、圧縮されたガスの温度が下がり、より高密度でガスが集まることで恒星が形成されます。

そして元の銀河から巨大ブラックホールが飛び出したプロセスについてですが、まず中心に巨大ブラックホールを含む銀河同士が合体し、巨大ブラックホール連星が誕生しました。

そこに別の巨大ブラックホールを含む銀河が衝突してくると、巨大ブラックホールたちの軌道が不安定になり、そのうち一つが弾き飛ばされるそうです。

そして弾き飛ばされたブラックホールの軌跡上で恒星が誕生し、巨大な直線構造として今回観測された、という流れです。

○横から見た巨大渦巻銀河説

この説は、カナリア天体物理研究所の研究チームが発表しています。

研究チームによると、それまで信じられていた「巨大ブラックホールの軌跡説」には、起こる確率が低い例外的な状況がいくつも必要であるという問題点があるとされています。

例えば、ブラックホールが重力によって銀河付近の物質に及ぼす影響はほんのわずかであるため、太陽の30億倍もの質量を含む巨大な恒星の流れを、たった3900万年間という比較的短い期間で形成したと考えるのは難しいと考えられています。

新たに提唱された説によると、直線構造の正体は、中央部の膨らみ構造(バルジ)が存在しない渦巻銀河を、単に横から見ているだけなんだそうです。

薄型の渦巻銀河は比較的ありふれた存在ですし、横からのアングルで見える銀河も一般的です。

そのため前説と比べて特殊な設定を必要とせず、その点でもっともらしい解釈であると言えます。

さらに、この説を支持するいくつかの分析結果が発表されています。

こちらは、新発見の巨大直線構造「Object」と、横から見える薄型の渦巻銀河である「IC 5249」との実写画像の比較です。

単純に見た目がよく似ています。

さらに直線構造を渦巻銀河と見立て、銀河の回転速度を調べると、渦巻銀河であるIC 5249とよく似ていることが判明しました。

そしてこの直線構造が渦巻銀河であることを支持するもう一つの根拠は、この直線構造でも「タリー・フィッシャー関係」が成り立つという点です。

タリー・フィッシャー関係とは、渦巻銀河で成り立つ、ある渦巻銀河の質量(銀河の光度)とその銀河の回転速度に関する相関関係のことです。

ある渦巻銀河の質量と回転速度の関係をこのグラフ上に表記すると、概ね黒の直線上に位置します。

オレンジ色の六角形が新発見の直線構造における質量と回転速度の関係を示しています。綺麗に直線上に存在していますが、これは直線構造が渦巻銀河であることを支持する結果と言えます。

仮に直線構造が単に横から見た渦巻銀河であっても、76億年前の銀河としては非常に大きいものです。

直線構造が本当に渦巻銀河であるのか、その場合どのような特徴を持った銀河なのか、それらの疑問を解明するために、今後の観測に期待がかかっています。

https://iopscience.iop.org/article/10.3847/2041-8213/acba86
https://www.nasa.gov/feature/goddard/2023/hubble-sees-possible-runaway-black-hole-creating-a-trail-of-stars
https://www.livescience.com/runaway-black-hole-the-size-of-20-million-suns-found-speeding-through-space-with-a-trail-of-newborn-stars-behind-it
https://www.iac.es/en/outreach/news/mystery-runaway-supermassive-black-hole-solved
https://www.aanda.org/articles/aa/full_html/2023/05/aa46430-23/aa46430-23.html
https://astro-dic.jp/tully-fisher-relation/

「宇宙ヤバイch」というYouTubeチャンネルで、宇宙分野の最新ニュースや雑学などを発信しているYouTuberです。好きな天体は海王星です。

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