ジェイムズウェッブの美しい最新画像が公開!観測史上初の「銀河外の褐色矮星」を大量発見
どうも!宇宙ヤバイch中の人のキャベチです。
今回は「JWSTの最新画像と史上初の発見」というテーマで解説していきます。
ジェイムズウェッブ宇宙望遠鏡(JWST)が撮影した「NGC 602」という星団の美しい最新画像が公開されました。
さらにこの画像は単に美しいだけでなく、貴重な新発見と、そこから導き出される考察にも科学的な価値があります。
具体的にはこの画像から、多数の「褐色矮星」の集団が発見されています。
褐色矮星は非常に暗い天体であり、天の川銀河外で褐色矮星を観測することに成功したのは史上初のことです。
●NGC 602
NGC 602は地球から約20万光年彼方にある、天の川銀河の衛星銀河「小マゼラン雲」にある散開星団です。
年齢はわずか200万年か300万年ほどと非常に若く、現在も星形成が行われており、青く輝く若い大質量星が星団全体を照らしています。
この星団には、水素やヘリウムよりも重い元素の存在量が非常に低いことがわかっており、これは宇宙初期の環境に近いものです。
このような環境を持つ近場の星団を研究することは、観測が難しい初期宇宙の研究に間接的に結びつくため、研究対象としても人気の天体となっています。
○JWSTの最新画像が公開
先日、ジェイムズウェッブ宇宙望遠鏡が撮影したNGC 602の最新画像が公開されました。
無数の天体が映り込んでおり、圧倒的な解像度を誇っています。
星団の背後にある多数の銀河の形も鮮明に写っていて美しいです。
●NGC 602で予想外の天体を新発見
JWSTが撮影したNGC 602の最新画像から、多数の「褐色矮星」の集団が発見されました。
褐色矮星は非常に暗い天体であり、これまで発見された約3000個の褐色矮星のほとんどが太陽系から近い場所で発見されています。
そんな中でJWSTは圧倒的な解像度により、史上初めて天の川銀河外で褐色矮星を観測することに成功しました。
そんな研究成果は2024年10月に論文で公表されています。
○褐色矮星の概要
そもそも褐色矮星とは、どのような天体でしょうか?
一言で表すと、天体中心部で核融合反応を起こす恒星と、核融合反応を起こさない惑星の中間的な天体と言えます。
恒星という天体が核融合反応でエネルギーを生み出し光り輝くためには、自身の強大な重力により、その中心部で極端な高温・高密度の環境が実現している必要があります。
そのため恒星の質量には「木星の約80倍」という下限値が存在しています。
一方、質量が木星の13~80倍の天体だと、中心部の温度と密度が足りず、その天体の大部分を構成する「軽水素」という物質を核融合反応の燃料にすることはできないものの、「重水素」という核融合の燃料として使いやすい一部の水素のみ、反応を起こすことができます。
しかしこの燃料はすぐに尽きてしまうため、恒星のように長期にわたって輝くことはできません。
このように惑星のように全く核融合を起こさないわけでもなく、恒星のように永続的に核融合を起こすこともできない、それらの中間のような天体が、「褐色矮星」に分類される天体の正体です。
○JWSTによる観測成果
JWSTは地球から20万光年彼方にある小マゼラン雲内の星団「NGC 602」にて、64個もの褐色矮星の候補を新たに発見しました。
これが正しければ、天の川銀河外で初めての褐色矮星の検出事例となります。
この画像では薄い黄色のひし形(cBDs)が褐色矮星の分布を示しています。
今回の発見により、褐色矮星の形成方法の理解が深まる可能性があります。
褐色矮星の形成メカニズムとしては、大きく二つの仮説が存在します。
まず一つ目は、恒星と同様に、低温のガス雲が高密度で集まることで形成されるという仮説です。
二つ目は惑星と同様に、まず別の恒星質量天体が形成され、その周囲にできた原始惑星系円盤の物質が集まって褐色矮星が形成されるという仮説です。
NGC 602での観測結果、褐色矮星と恒星が同じ領域で、ほぼ同時期に形成されていることが判明しました。
このことは褐色矮星は恒星と同様のメカニズムで誕生していることを示唆しています。
つまりたまたま集まったガスが少ないと、恒星ではなく褐色矮星になるということから、褐色矮星は「恒星の成りそこない」と表現できそうです。
今回の研究で、恒星の形成メカニズムで形成される低質量天体の下限値に迫ることができました。
このメカニズムでどれほど低質量の天体までできるのかは、現在も未解決の謎として研究対象となっています。