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絶対に負けられないギリシャ戦、日本代表勝利への4つのポイント

浅野祐介ウォーカープラス編集長

グループリーグ初戦を落とし、背水の陣でギリシャ戦を迎える日本代表。絶対に負けられない一戦の展望を、試合を左右するキーマンとともに現地で取材を続けるサッカー界の識者に語ってもらった。

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■清水英斗氏の見解

この試合の最大のポイントになるのは、ギリシャが敷く最終ラインの高さだ。もし、相手がラインを低く保って守備を固めるのなら、日本はサイド攻撃を中心としつつ、カウンターを避けながら戦わなければならない。それはおそらく大会前の基本プランだったはずだ。

ところが、1戦目の結果によって少し状況は変わってきた。ギリシャの立場になって考えると、初戦でコロンビアに対して3点という大量失点を喫したため、得失点差を考えると、日本に対しては1-0の勝利でも十分とは言えない。つまり試合展開の中には、攻守においてギリシャが最終ラインを高く保つ時間帯が必ず増える。その裏をいかに突くか?

この状況を考えると、飛び出しのスピードに優れた大久保嘉人、柿谷曜一朗は大きな武器だ。そして、一発のロングキラーパスで敵陣を切り裂くボランチ、青山敏弘も彼らとの相性が良い。この『飛び出しセット』をスタートから起用するか、それとも切り札として使うのか。

ギリシャのディフェンスは堅いが、しかし彼らとて、攻撃しているときまで守備ブロックを作るわけではない。攻守の切り替えの瞬間には、必ずすき間が生まれる。彼らが守備ブロックを整える前に、決断力を持ってテンポ良く、先手、先手を打って縦に攻め切ることが必要だ。ギリシャがカウンターをねらっているのは明白だが、かといって日本がそれを恐れながら戦えば相手の思うつぼ。縦にスイッチを入れられる青山(敏弘)のプレーに期待したい。

清水英斗

サッカーライターです。著書:『日本代表をディープに観戦する25のキーワード 〜居酒屋サッカー論〜』 『サッカー観戦力が高まる〜試合が100倍面白くなる100の視点』『サッカー守備DF&GK練習メニュー100』など。

■宇都宮徹壱氏の見解

「何だか2006年の状況に似ている」──たった1試合を終えただけで、このように思ってしまうのは、いささか不用意なのかもしれない。しかしながら、明らかに8年前の匂いを感じてならないのである。順調に強化を進めてきた大会前。楽観して臨んでみたら、思わぬ敗戦を余儀なくされた初戦。プレッシャーの中で結果を求められる第2戦。そのあとに続くのは、髪の毛ほどのわずかな希望か、それとも4年後を見すえた開き直りか。いずれにせよ、このギリシャ戦が極めて重要な一戦となることは間違いない。

ポイントは「勝ち点3が必須」である日本が、どのような戦い方をするかである。今度こそ「自分たちのサッカー」を前面に押し出すのか、それとも相手のストロングポイントを消す戦術に徹して結果のみを追い求めるのか。前者を採れば「玉砕」となる可能性もあり、後者を決断すれば「4年間の否定」にもつながる。指揮官にしてみれば悩ましい限りだが、より覚悟を決めなければならないのは選手のほうであろう。

キーマンを挙げるなら長谷部誠。ただし戦術面よりも、むしろチームの精神的支柱として注目している。前日会見に出席した彼の言葉からは、いつもの「自分たちのサッカー」というフレーズは聞かれなかった。たまたまなのか、それともあえて封印したのか。それが判明するのは、キックオフ以降である。これまで中盤のバランサーとして、そして監督と選手をつなぐコネクターとして機能してきた長谷部が、この試合でどんな役割を果たすのか。そしてその向こう側にどんな結末が待ち構えているのか。記者席からしかと見届けたい。

宇都宮徹壱

1966年生まれ。東京出身。東京藝術大学大学院美術研究科修了後、TV制作会社勤務を経て、97年にベオグラードで「写真家宣言」。以後、国内外で「文化としてのフットボール」をカメラで切り取る活動を展開中。旅先でのフットボールと酒をこよなく愛する。著書に『ディナモ・フットボール』(みすず書房)、『股旅フットボール』(東邦出版)。近著『フットボールの犬 欧羅巴1999−2009』(同)は第20回ミズノスポーツライター賞最優秀賞を受賞。自身のWEBサイト『徹壱の部屋』(http://supporter2.jp/utsunomiya/)でもコラム&写真を掲載中。また、有料メールマガジン「徹マガ」(http://tetsumaga.com/)も配信中

■河治良幸氏の見解

ギリシャ戦はコートジボワール戦とは全く違う戦いになる。ギリシャはコロンビアに3-0で敗れて後がないとはいえ、堅守速攻の基本スタイルが変わることはないだろう。日本は昨年のセルビア戦とベラルーシ戦で味わった教訓を活かし、守備ブロックの合間あるいは裏を突いて得点を狙う必要がある。キーマンはスタメン候補では香川、その他では青山をあげたい。コートジボワール戦では守備に負担がかかり、ほとんど試合から消えてしまった香川だが、高い位置に起点を作れれば、やはり彼の鋭い動き出しと技術がカギを握る。本田がツィオリスなど中盤の守備を引き付け生じたスペースにうまく飛び出したい。前線を活性化する意味では大久保の1トップ起用が有効と見るが、柿谷か大迫が入る場合でもボランチに青山を起用したい。「タイミングが合えば、相手が守備を固めていても通す自信がある」と語るスルーパスはギリシャを攻略する上で欠かせない武器であるからだ。青山のパスにFWが抜け出す。遠藤でもそうしたパスは出せるが、縦志向の強い青山が入ることで打開の可能性は増す。一方で右SBには酒井宏を推したい。前日取材では「そこを抑えられたら相手のチャンスは間違いなく減るし、自分たちの支配率が高くなる」と語っていた。193CMのサマラスはハイボールの競り合いはもちろん、グラウンダーを収める技術も高く、彼を封じることがギリシャの攻撃力を半減させる。勝ち越していない状態で終盤を迎えた場合はドリブラーの齋藤が活性役になるはずだ。

河治良幸

サッカー専門新聞『エル・ゴラッソ』の創刊に携わり、現在は日本代表を担当。著書に『日本代表ベスト8』(ガイドワークス)など。プレー分析が専門でNHK『ミラクルボディー』の「スペイン代表 世界最強の”天才能”」に監修参加。

■岩本義弘氏

ギリシャ戦の一番のテーマは「自分たちのサッカーをピッチで表現できるのか」。今回の日本代表は、日本代表史上初めて、相手の出方ありきのリアクションサッカーではなく、自分たちで主導権を握って、積極的に前に出るサッカーにチャレンジしようとしている。

そのサッカーをする上でキーマンとなるのが、左サイドバックの長友佑都だ。初戦のコートジボワール戦、日本の攻撃の生命線である左サイドが押し込まれ、長友と香川が攻撃面で全くと言っていいほど機能しなかった。ギリシャ戦ではこの二の舞を避けるためにも、日本の左サイドが主導権を握ることが求められている。

「引いて守っても、結局は自分たちのいいところは出ないし、自分たちで自分たちの良いところを消すことになっちゃうから。やっぱり、積極的に前に出ていくというサッカーを、リスクを負ってでも前に出ていくサッカーをやっていかないと。もちろん、攻撃だけじゃなくて、守備でも積極的な守備をやっていく。腰が引けたような守備じゃなく、引いて守るんじゃなくて、どんどん前に行って取りにいく。そういうサッカーじゃないと、僕らの未来は見えないですから」

前日練習時にも、長友は改めて「自分たちのサッカー」を貫くことを明言している。左サイドで主導権を握ることができれば、必然的に全体が押し上げられ、日本代表の良さが出る。ザッケローニ監督の下、4年間積み上げてきた日本のサッカーを、今こそピッチで表現してくれることを期待したい。

岩本義弘

株式会社フロムワン代表取締役社長。サッカーキング編集長。サムライサッカーキング、ワールドサッカーキング、Jリーグサッカーキング編集局長。

絶対に負けられないギリシャ戦は日本時間6月20日の7時にキックオフの時を迎える。

ウォーカープラス編集長

編集者/KKベストセラーズで『Street JACK』などファッション誌の編集者として活動し、その後、株式会社フロムワンで雑誌『ワールドサッカーキング』、Webメディア『サッカーキング』 編集長を務めた。現在は株式会社KADOKAWAで『ウォーカープラス』編集長を担当。2022年3月にスタートした無料のプレスリリース配信サービス「PressWalker」では、メディアの観点から全プレスリリースに目を通し、編集記事化の監修も担当。

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