「みんなが動き出すから」は適切な助言ではない。
年末年始も終わりに近づき、仕事始め、始業式が近づき始めました。西暦も2016年から2017年に変わり、心機一転という気分になりやすい時期でもあります。
新年や新年度といった物事や思考の切り替え時は、これまでやろうと思ってやれていなかったことを始めてみたり、新しいことにチャレンジされるひともいるでしょう。
個人がそう思って行動することは自由ですが、このような時期には、親が子どもに「生活の変化」を助言するようになります。何らかの事情で学校に行けていなかったり、仕事に就いていなかったり。または、何年も努力を重ねていても成果や結果が出ない状況- 難易度の高い資格試験など- に対して声をかけだします。
確かにこの時期は「みんなが動き出すから」という言葉から始まり、「だからあなたも」と言葉を結びやすいかもしれません。しかし、みんなが動くタイミングが、必ずしも子どものタイミングと同じであるとは限りません。いや、むしろ、みんなが動くからではなく、もっと日常の延長線上で自然に動き出そうとしているのかもしれません。
就労支援の現場では、「みんなが動き出す」時期に合わせて職業生活を(再)スタートする若者がいます。結論だけ見れば、そのような時期にきっかけをつかむ若者が多いように見えるかもしれませんが、それは数か月から数年をかけて立てた計画と、そこに迎えるように小さなステップを刻んだ結果です。そして、計画が早くなったり、遅れたりすることがあることを前提として日々動いています。
例えば、1月初旬から初めて仕事をすることが決まっている若者がいます。社会的な課題を抱え、これまでに働いた経験がないため、初日からうまくいかない可能性もあります。しばらくは順調でも、突然立ち止まってしまう可能性もあります。もちろん、職場にスムーズになじみ、よい状態で働きづづけられればこれほど嬉しいことはありませんが、一方で、何かあったときのための準備をしています。
親にとって、社会が再駆動する、みんなが動き出すタイミングで、子どもに声をかけたいと思われるかもしれません。また、新年という機会に普段は言えないことを強い語調で伝えたいと考えるかもしれません。親にとっては待ちに待ったタイミングかもしれませんが、本人にとって適切なタイミングでない可能性があります。みんなが動き出すタイミングだから”あえて言う”のは、普段の暮らしのなかで関係性を作れず、安心と安全を持って踏み込んだコミュニケーションを取れていれば必要のないことですし、関係性の(再)構築からが自然です。
親の気持ちとしては助言かもしれませんが、「みんなが動き出すから、あなたも動き出せるよね」「みんなが動き出すから、あなたも一緒に動くよね」と、会ったこともなく誰でもない「みんな」の動きに合わせなければならないように受け止められないよう、ご配慮をお願いします。