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なぜレアルは強さを維持できているのか?アンチェロッティの論理とローテーション問題。

森田泰史スポーツライター
得点を喜ぶヴィニシウス(写真:ムツ・カワモリ/アフロ)

難しい局面に突入している。

レアル・マドリーは今季のリーガエスパニョーラで首位を快走している。リーガ第26節終了時点で、2位セビージャに勝ち点6差をつけており、優勝に向け順調に進んでいるところだ。

一方、チャンピオンズリーグでは、決勝トーナメント一回戦ファーストレグのパリ・サンジェルマン戦で0-1と敗れている。ホームのセカンドレグで、逆転が必要な状況だ。

ゴールを決めるベンゼマ
ゴールを決めるベンゼマ写真:ロイター/アフロ

マドリーは今夏、積極的な補強に動かなかった。ダビド・アラバ(前所属バイエルン・ミュンヘン/フリートランスファー)、エドゥアルド・カマヴィンガ(レンヌ/移籍金3100万ユーロ/約40億円)を獲得したが、大型補強を行ったわけではない。

フロレンティーノ・ペレス会長は、キリアン・エムバペ(パリ・サンジェルマン)をトップターゲットにしていた。だが2億ユーロ(約260億円)まで移籍金を引き上げたオファーが最終的にはパリ側に受け入れられず、フランス代表のスピードスターを確保するには至らなかった。

他方で、マドリーは選手の売却を考慮した。ラファエル・ヴァランをマンチェスター・ユナイテッドに、マルティン・ウーデゴールをアーセナルに売却。セルヒオ・ラモスに関してはフリートランスファーでの移籍となったものの、合計でおよそ7500万ユーロ(約97億円)の資金を得た。

■ローテーションの問題

また、2021-22シーズン、マドリーはカルロ・アンチェロッティ監督が2度目の挑戦に臨む運びとなった。

アンチェロッティ監督は、ヴァランとラモスの2枚を欠いてチームビルディングを行う必要があった。ジダン・マドリーでチャンピオンズリーグ3連覇を達成した時の主力のセンターバックである。彼らが抜け、その襷(たすき)はアラバとエデル・ミリトンに渡された。

ただ、犠牲になったものがある。それがローテーションの不採用によるスタメンの固定化だ。

GKティボ・クルトゥワ、DFダニ・カルバハル、アラバ、ミリトン、フェルラン・メンディ、MFカゼミーロ、トニ・クロース、ルカ・モドリッチ、FWマルコ・アセンシオ、カリム・ベンゼマ、ヴィニシウス・ジュニオール。これが現状のアンチェロッティ監督のベストメンバーだろう。

右サイドバックに関しては、カルバハルが度々負傷離脱を強いられている。その場合には、ルーカス・バスケスが入る。右ウィングについては、アセンシオとロドリゴ・ゴエスがポジションを争ってきたが、ここにきてアセンシオが一歩リードしている。

競り合うエムバペとミリトン
競り合うエムバペとミリトン写真:ロイター/アフロ

アラバとミリトンは、今季、全体の90%以上の出場時間を得ている。他のチームで、同程度のプレータイムを得ているのはセルヒオ・ブスケッツ(バルセロナ)、レアンドロ・カブレラ(エスパニョール)、ハビ・ガラン(セルタ)、ロビン・ル・ノルマン(レアル・ソシエダ)、ジエゴ・カルロス(セビージャ)のみだ。

また、チャンピオンズリーグとヨーロッパリーグで決勝トーナメントに進出したスペイン勢において、マドリーは最もローテーションを行わないチームになっている。マドリーで出場時間が70%以上の選手は6名いる。クルトゥワ、アラバ、ミリトン、カゼミーロ、ベンゼマ、ヴィニシウスだ。バルセロナ(5名)、ビジャレアル(5名)、アトレティコ・マドリー(4名)、セビージャ(4名)、レアル・ソシエダ(4名)、ベティス(1名)と他チームは少なからず選手を「回して」いる。

■BBCとアンタッチャブルな存在

そもそも、アンチェロッティ監督はローテーションが得意ではないのかもしれない。

第一次アンチェロッティ政権では、「BBC」が攻撃の中心だった。ベンゼマ、ガレス・ベイル、クリスティアーノ・ロナウドの看板3トップがいて、彼らは実質上アンタッチャブルな存在だった。無論、その選手たちを生かしながら、2013-14シーズンにデシマ(クラブ史上10度目のCL制覇)をもたらしたアンチェロッティ監督の功績は大きい。

だが「歪み」はセカンドシーズンに生じた。2014-15シーズン、イケル・カシージャス、マルセロ、クロース、イスコ、ベイル、C・ロナウドと6名の出場時間が70%を超えていた。そして、マドリーは無冠に終わり、そのシーズン終了時にアンチェロッティ監督がクラブを去っている。

攻撃の中心だったBBC
攻撃の中心だったBBC写真:なかしまだいすけ/アフロ

「私はレアル・マドリーを率いるモチベーションに満ちている。そういった意味で、批判は歓迎だ。そういった批判で、生きている実感を得る。感謝しているよ」

「ローテーションというのは、ある選手を信頼しきれない時に、採用されるものだ。1月は大会が多く、遠征もあり、ケガ人も出て大変だった。1月を(昨年)12月のようには過ごせなかった。ただ、ここからは、それほど試合数は多くならない。もちろん、重要な試合は待っている。チャンピオンズリーグのゲームなどね。しかし、コパでの敗退がありながら、我々は競争的であり続けている」

これはアンチェロッティ監督の言葉だ。

マドリーはすでにコパ・デル・レイの敗退が決定している。残す大会はラ・リーガとチャンピオンズリーグのみだ。

仮にCL敗退が決まった場合、3月半ばから5月にかけて、ラ・リーガだけに集中できることになる。そうなれば、ローテーションの必要性は実質的になくなるだろう。だがそれでマドリディスタが納得するかは、また別の話である。

スポーツライター

執筆業、通訳、解説。東京生まれ。スペイン在住歴10年。2007年に21歳で単身で渡西して、バルセロナを拠点に現地のフットボールを堪能。2011年から執筆業を開始すると同時に活動場所をスペイン北部に移す。2018年に完全帰国。日本有数のラ・リーガ分析と解説に定評。過去・現在の投稿媒体/出演メディアは『DAZN』『U-NEXT』『WOWOW』『J SPORTS』『エルゴラッソ』『Goal.com』『ワールドサッカーキング』『サッカー批評』『フットボリスタ』『J-WAVE』『Foot! MARTES』等。2020年ラ・リーガのセミナー司会。

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