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蚊はいつどこから家に入ってくるの?侵入の防ぎ方と刺されないための裏技は?

有吉立アース製薬(株)研究部で害虫飼育を担当
写真はイメージです(写真:アフロ)

蚊の季節がやって来ました。「ぶ~ん」という羽音が気になって眠れない夜を過ごしている方もいるのではないでしょうか。蚊はいったいいつどこから家に侵入してきたのか、不思議に思うことはありませんか? 蚊の生態と侵入の防ぎ方、そして刺されないための対策をご紹介します。

日本で人を刺してくる蚊は主に2種類です。屋外に多いのが白黒のしま模様をしたヒトスジシマカで、アウトドア派の“やぶ蚊”です。一方、家の中に入ってくる蚊はアカイエカの可能性が高いです。“インドア派”といえるこの蚊は、大きさ約5.5ミリメートル、薄い茶褐色をしていて、夕方から夜にかけて活発に活動します。

蚊は成虫と幼虫(ボウフラ)では生息場所が違います

夏のイメージが強い蚊ですが、アカイエカは梅雨の時期にあたる6~7月に活発化します。真夏にいったん少なくなりますが、9月中旬〜11月上旬まで活動します。

晩秋からは薄暗くて一定の温度のある場所で雌だけが越冬します。屋外の下水溝や家屋の床下などが多いですが、屋内の押入れや玄関の下駄箱の中にいることもあります。

春に目覚めると、雌は産卵に必要なタンパク質を求めて吸血活動を行い、水のあるところを探して産卵します。1回につき100~200個の卵を産み、約1カ月の成虫期間に吸血と産卵を何度か繰り返します。卵は幼虫(ボウフラ)、サナギになるまで水の中で生息し、気温25~30度あれば10日ほどで成虫になります。

蚊を増やさないようにするには?

蚊の発生を抑えるためには、家の周りの「水たまり」をなくすことが最も重要です。アカイエカが好むのは、落ち葉などの有機物を含む汚水です。側溝や雨水桝(うすいます)、雨どいの詰まりをこまめに掃除することや、バケツや古タイヤなどを野ざらしにしないことを意識するとよいでしょう。

写真:GYRO_PHOTOGRAPHY/イメージマート

蚊を家の中に侵入させないようにするには?

成虫まで育ったアカイエカは、吸血源を求めて家の中へと侵入してきます。人間の吐く息の二酸化炭素、体温や皮膚からの汗に含まれる乳酸などの成分を感知して近づいてくるのです。

侵入経路は、窓、玄関などです。コロナ禍で換気を行う必要があることから、蚊が入ってくる確率も高くなると想像されます。網戸を閉めているから安心とは言えません。網戸に穴が開いている場合や、窓を中途半端に開けている場合は、隙間ができて侵入することがあります。

また、玄関からの侵入も多いです。帰宅時の汗ばんだ人の身体に近づいて、玄関から一緒に入ってしまいます。マンションの高層階だから安心とも言えません。人について一緒にエレベーターに乗ることがあるのです。また、夕方に洗濯物を取り込む際も注意が必要です。

写真:Paylessimages/イメージマート

窓や玄関からの侵入を防ぐには、リキッドタイプの蚊とり器(液体蚊とり器)を使用することをお勧めします。ピレスロイド剤を有効成分としているので、それらを感知した蚊は吸血意欲を失いその空間から離れてしまうのです。

そうすれば、窓を開けていても蚊の侵入を防げます。玄関などコンセントがない場所で使用する場合は、電池タイプが便利です。

一般的な液体蚊とり器の効果範囲は、1台につき4.5〜12畳程度です。部屋の大きさによりますが、1台で、おおむね1部屋をカバーできます。商品パッケージの表示で使用方法や効果範囲を確かめてください。

家の中に侵入した場合はどうしたらいいの?

さまざまな対策をしていても、家の中に侵入してしまうことはあります。その場合の対処法をお伝えします。

日中明るいうちは、人に見つかりにくい天井やカーテンや家具の裏、狭い隙間、テーブルの下などに隠れています。夜行性なので、夕方になると活発に動き出し、人を刺して吸血します。

家族の中でも刺されやすい人、刺されにくい人はいませんか? 以下の方が刺されやすいと言われています。

・体温の高い人 

・お酒を飲んだ人 

・汗をかきやすい人 

・黒い服を着ている人

当てはまる方は日ごろから蚊には注意した方がいいですね。

蚊はどうやってたたいたらいいの?左右から?上下から?

侵入してきた蚊を見つけたら、やっつけたいですよね。たたくのが手っ取り早いと考える人も多いでしょう。どのようにすれば仕留めやすいのか、私の経験からご紹介します。

私は仕事で蚊の飼育をしていますが、ケージで飼っている蚊が、たまに逃げてしまうことがあります。飼育室内では薬剤は使えないので、そんな時はたたくしかないのです。以前は左右から(横から両手で挟んで)たたいていたのですが、命中率はあまり高くありませんでした。そこで職場の先輩に、上下から挟む方が効率的と教えてもらい実践したところ、命中率が上がりました。蚊の飛ぶ特性を考えると確かにそうです。蚊はフワフワと上下に飛んでいることが多いので、左右からだと空振りしがちです。また、蚊の体重は非常に軽いので、思いっきりたたこうとすると、風圧で飛んで行ってしまいます。難しいかも知れませんが、上下から、ゆっくりと挟むようにたたくことがポイントのようです。

ただ、それでも空振りする場合も多いと思います。そのような時は、ピレスロイド剤を有効成分とする「エアゾール(殺虫スプレー)」を直接蚊にかけると速効性があります。

提供:Yuriofyuriyuri/イメージマート

夜寝る時にぶ~んという音が気になる場合はどうすればいいの?

消灯後に耳元の「ぶ~ん」という羽音で初めて存在に気づく場合もあるかもしれません。電気を付けると隠れてしまい、探すのは大変です。そんな時は、蚊に刺されない空間を作りましょう。ピレスロイド剤を有効成分とする「ワンプッシュ式蚊とり(スプレー)」を使うと効果的です。寝室空間に1回プッシュすれば、朝まで効果が持続します。また、伝統的なものですが、寝床を覆う「蚊帳(かや)」も有効です。

ピレスロイド剤は、除虫菊(シロバナムシヨケギク)の花から抽出した天然の殺虫成分を起源として化学合成したものです。人を含む哺乳動物に対して安全性が高い成分なので安心です。また、蚊を駆除するための薬剤量は、人と蚊の体重差が大きく影響します。蚊より数千万倍も重い人にとっては極微量の殺虫成分となります。

除虫菊
除虫菊写真:GYRO_PHOTOGRAPHY/イメージマート

最後に...

家に侵入してくるアカイエカのこと、わかってもらえたでしょうか? 最後に蚊が媒介する感染症について少し触れておきます。今回紹介したアカイエカは、フィラリア症の媒介蚊です。現在の日本では、西郷隆盛も苦しんだというリンパ系フィラリア症は根絶されましたが、世界では、熱帯・亜熱帯の国で1億人以上が感染していると言われています。また、イヌ科動物に感染するフィラリア症(犬糸状虫症)は現在も国内に常在しています。ペットが蚊に刺されることで感染するリスクがあります。

また、今後、アカイエカが媒介する他の感染症が国内に入ってくる可能性もあります。

蚊に刺されてもかゆいだけだし大丈夫、ではなく、「蚊に刺されない」ということを第一に考えて過ごしていただきたいと思います。

【この記事は、Yahoo!ニュース個人編集部とオーサーが内容に関して共同で企画し、オーサーが執筆したものです】

アース製薬(株)研究部で害虫飼育を担当

兵庫県出身。都内の美術学校卒業後、 家具店店員、陶芸教室講師など虫とは全く関係のない職業に就いていたが、1998年に地元・赤穂のアース製薬に入社以来、害虫の飼育を担当している。しかし、現在も虫は好きではない。著書に「きらいになれない害虫図鑑」(幻冬舎)※記事は個人としての発信です。

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