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超マクロ視点で読み解く「日本代表の現在」

"新メンバー"はかなりいい要素!

いやー苦しいですよ。ワールドカップが。とても苦しい。自分のような立場だと、現地に行けば大〇字、しかし行かねば媒体からお呼びがかからず。日常生活での「ブラジル行かないんですか?」という何気ない会話がズキュンと胸に刺さる。逃げたくなるが、この時期は世界のどこに避難してもワールドカップとは無関係ではいられなさそうです。

だったら何もモノを言わないのか!? それはそれでまた苦しく。ここはいっちょ、ある角度から言わせていただきます。現地にいては分からない、「超マクロ視点」です。

昨日のザンビア戦を見た印象は次の通りでした。

◎「メンバー個定」との批判もあったこのチーム、なんだかんだでこの段階で”新戦力”が出てきている。山口、森重、大迫そして大久保。ケガの影響もあるとはいえ、この時期になって4~5人の選手が頭角を現しているのです。これはGoooooooooooood。これまで実績を残してきた選手へのリスペクトは欠いてはなりませんが。

△ワールドカップ本番でのコートジボアール戦のことを考えたら、昨日の結果はドローあたりでも十分だったのでは。

後に振り返ったときに、「ピークがここだった」とならないかと心配。誰しも経験のあることでしょう。「練習では上手く行ったのに」と本番で逆に委縮してしまうことが。

ザッケローニもこの点を察しているのでは? ここ数試合、ゲーム直後のフラッシュインタビューを見ていると開口一番こんな発言をしています。「結果は気にしていない」(キプロス戦後)「内容には不満足」(ザンビア戦後)。昨年11月のベルギー戦から、5連勝で本大会に臨むことになりました。

超マクロ視点から振り返る日本代表

なんでこんなことを言うのか。それは筆者自身が続けている韓国との"比較研究"の成果からです。ちょっとした危機感からの意見発信でもあります。

「本大会直前まで成長を続けた国のほうが、結局は結果が良い。4年間の過程でどんなひどいことがあろうとも」

02年ワールドカップ以降、見事にこの法則がハマっています。

■02年日韓大会

日本=00年アジアカップ優勝、01年コンフェデ準優勝。さらにいうならば、99年ワールドユース準優勝、00年シドニーオリンピックベスト8。

韓国=00年アジアカップ3位、それ以外の大会ではすべてグループリーグ敗退。02年の頭に野球の国・キューバと引き分け、本気でヒディンクの解任が議論された。大会数ヶ月前まで3バックか4バックかも決まらず 

□本大会での結果:日本・ベスト16、韓国・ベスト4

■06年ドイツ大会

日本=04年アジアカップ優勝、世界最速ワールドカップ本大会出場確定。「黄金世代」の海外進出が相次ぐ。

韓国=まさかの世界4位後、ワールドカップ3次予選でモルディブに引き分け、アジアカップ予選でベトナム・オマーンに敗れる大失態。4年間で4人(代行含む)が指揮を執った。本大会で指揮を執るディック・アドフォカートが就任したのは大会1年前だった。

□本大会での結果:日本・勝ち点1でグループリーグ敗退、韓国・勝ち点4でグループリーグ敗退。

この現象は、2010年南アフリカワールドカップでも続きます。

■10年大会

日本=大会1ヶ月前(2010年5月24日)の壮行試合で韓国に0-2と敗れ、大批判が始まる。その前後には2軍レベルのセルビアにホームで0-3、5月30日のイングランド戦1-2、6月4日のコートジボワール戦では0-2の敗戦。崖っぷちに追い込まれ、守備サッカーに転換。

韓国=ワールドカップアジア予選を無敗で通過。それと前後して27戦無敗(08年2月~09年11月/14勝13敗)の好調ぶり。

□本大会での結果:日本・決勝トーナメント1回戦でPK負け(対パラグアイ)、韓国・同90分での敗北(対ウルグアイ)。

この大会で、日本は史上初めてワールドカップ本大会で韓国の結果を上回ります。じつはこの時が初めてだったのです。PK負けは公式記録ではあくまで引き分け(PK戦で勝った方がルール上次のステージに進む、という解釈)なので! 

結局、最後まで苦しんで、その結果、変化=成長が起きた方によい結果がもたらされている。早めにピークが来てそれを維持しようとするチームよりも、変化を続けるチームの結果がよい。

これはジンクスではなく、歴史的事実です。

あくまで日韓の比較に限った話ではありますが。

直前まで変化=成長を!

じゃあ2014年大会までの足跡はどうだったのか。

日本=アジアカップ優勝。世界最速ワールドカップ予選突破。選手個人レベルでは海外組最盛期。

韓国=4年間で3人の監督が指揮。ワールドカップ3次予選でレバノンにアウェーで敗れ最初の監督交替。2人めの監督下では選手がSNSで監督批判をする事件勃発。ワールドカップ最終予選はギリギリ得失点1差での突破。大会11ケ月前にホン・ミョンボ監督が就任。 さらに直近の試合結果がなかなか厳しいものになっている。

1月30日     ●メキシコ 0-4

2月2日      ●アメリカ 0-2

3月6日      〇ギリシャ 2-0

5月28日     ● チュニジア 0-1

※チュニジア戦はソウルで行われた壮行試合。

さて、結果はどう出るか。韓国の猛追撃、というのは見たくないものです。

残りの1週間、ザックジャパンについて注視すべきは「1ケ月前に、指宿合宿で強い負荷をかけた選手のコンディションがどう回復するのか」でしょう。これが上に上げた新戦力と同じく、重要な変化。“一日刻み”で見ていく変化のポイントです。

これは現地からの他の書き手のレポートを待ちましょう。

日本に残って観る立場からできることは何か? ひとつには「チームに問題が起きたとしても問題と思わない」というでーんと構えた姿勢も重要。問題を解決しようとすることにこそ、変化=成長があるので!

吉崎エイジーニョ ニュースコラム&ノンフィクション。専門は「朝鮮半島地域研究」。よって時事問題からK-POP、スポーツまで幅広く書きます。大阪外大(現阪大外国語学部)地域文化学科朝鮮語専攻卒。20代より日韓両国の媒体で「日韓サッカーニュースコラム」を執筆。「どのジャンルよりも正面衝突する日韓関係」を見てきました。サッカー専門のつもりが人生ままならず。ペンネームはそのままでやっています。本名英治。「Yahoo! 個人」月間MVAを2度受賞。北九州市小倉北区出身。仕事ご依頼はXのDMまでお願いいたします。

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