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【ほぼ日手帳】22年目の定番的手帳は「ONE PIECE」の世界観をどんなふうに作りこんだのか?

舘神龍彦デジアナリスト・手帳評論家・歌手

2023年の手帳、最大のトピック

 来年版の手帳関連の最大のトピックは、なんと言ってもこれでしょう。
 すなわち「ほぼ日手帳×ONEPIECE」。
 累計部数なんと4億1000万部をほこるあの国民的な漫画と、あのほぼ日手帳がコラボするという話題です。カバーのデザインにとどまらず、本体の文言にもONE PIECEが登場するとのこと(※ 正確にはほぼ日手帳とONE PIECE magazine とのコラボ)。

左側は、尾田栄一郎先生書き下ろしイラストによるカバー『麦わらのルフィ RED』。右はほぼ日手帳オリジナル版に大幅に手を加えた初の本体コラボ。
左側は、尾田栄一郎先生書き下ろしイラストによるカバー『麦わらのルフィ RED』。右はほぼ日手帳オリジナル版に大幅に手を加えた初の本体コラボ。

 今年春モデルのNOLTY×ドラゴンボールの興奮もさめやらぬ昨今、このアイテム登場のニュースは、驚きとともに腑に落ちる感じもあったのではないでしょうか?
 ですが、実際には筆者が想像するようなかんたんな事ではなかったようです。

 では今回のコラボモデルはどんな風に作られたのでしょうか。

月間+週間レフト式(時間軸なし)のweeksは2種類。記入欄は通常版と同じ。
月間+週間レフト式(時間軸なし)のweeksは2種類。記入欄は通常版と同じ。

はじまりは「ONE PIECEマガジン」からのメール

 で、これは既報されていることですが、重要なのでもう一度。
 そもそも、今回の企画のスタートは、「ONE PIECEマガジン」からのオファーだったとのこと。
 365日それぞれに登場人物の誕生日が入っている手帳を作りたいというものでした。
 確認しておくと、ほぼ日手帳オリジナルは、22年間のあいだにいろいろなカバーをまとってきました。その種類は株式会社ほぼ日の規模を考えると恐ろしいレベルらしいのです。この件はそれだけで記事ができるぐらいには深い話なので置いておくとして、コラボのカバーはたくさんあったわけです。

劇中のアイテムを手帳の記入欄にどう落とし込むか

 そして今回のコラボの最大の特徴は本体に手が入ってること。つまり、ほぼ日刊イトイ新聞から抜き出している“お言葉”の部分は劇中のセリフになります。上述の毎日の誕生日に加え、毎月の扉部分には、その月の性格にあわせた劇中の一コマが大胆にあしらわれています。また後述するように、巻末のコンテンツもオリジナルです。

 こういう手帳本体のアレンジに大きな力になったのは、「ONE PIECEマガジン」のスタッフだったとのこと。中でもONE PIECEの生き字引的な方がいたことがおおきかったそうです。
 この企画がスタートしたのは、2021年の秋だったそうです。
 これだけ多数のファンがいて連載期間も長いコンテンツをテーマにして手帳にまとめるのには、いささか短い時間です。ですが、生き字引の彼の手にかかると、どんなデータも“そら”で完璧なものがでてきて、大助かりだったそうです。実際には、逐一コミックスに立ち戻っての確認があるわけですが、それでもその手間が大幅に高速化されたのは想像に難くありません。

 こういう一つ一つ、すなわち本体そのものに手を入れるのは、ほぼ日手帳にとって実ははじめてのことだったそうです。そしてそのそれぞれが単なるコラボというレベルを越えているようです。読む人が読めば、この月のトビラにこのシーンがあるというのが、腑に落ちる感じがあるのだそう。たとえば、通常版の(ほぼ日刊イトイ新聞から抜き出している)お言葉の部分には、劇中の登場人物のセリフが入ります。漫画では、縦書きで明朝のものが横書きでゴシックになるので、ものによってはずいぶんと伝わるニュアンスがかわってきます。こういうニュアンスの変化を受け止められるセリフが選ばれているとのこと。こういう見えない配慮がいろいろなところにあるらしいのです。

「B」は、キャラクターの誕生日。通常版の(ほぼ日刊イトイ新聞から抜き出している)お言葉の部分には、劇中の登場人物のセリフが入る。漫画では、縦書きで明朝のものが横書きでゴシックになる。
「B」は、キャラクターの誕生日。通常版の(ほぼ日刊イトイ新聞から抜き出している)お言葉の部分には、劇中の登場人物のセリフが入る。漫画では、縦書きで明朝のものが横書きでゴシックになる。

 二月の扉。バレンタインデーがあるので愛や友情をテーマにシーンを選んだとのこと
 二月の扉。バレンタインデーがあるので愛や友情をテーマにシーンを選んだとのこと

 巻末のオリジナルコンテンツも、ONE PIECEの世界観にきっちり落とし込まれています。たとえば、普通の手帳のウィッシュリストも、「ほぼ日」×「ONE PIECE」にかかると、“WANTEWD”というなんとも手配書チックな記入欄に。劇中のアイテムを、手帳の記入ページにいかに落とし込むかという問題の、絶妙な回答例といえるでしょう。これ以外にも、『ONE PIECE』一問一答のページや、日常で使いたい『ONE PIECE』の言葉などがあります。ファンならずともその凝縮された熱量が紙面から感じ取れるはずです。

ウィッシュリスト。手配書チックになっており、いかにも海賊のいる物語世界の世界観になっている。
ウィッシュリスト。手配書チックになっており、いかにも海賊のいる物語世界の世界観になっている。

『ONE PIECE』一問一答のページ。好きなキャラ、乗りたい船、戦いたい相手etcを自分で考えて記入する。極めつけは、右下の「わたしの海賊旗」。これがんばって考えて書いちゃう人絶対いるよね。
『ONE PIECE』一問一答のページ。好きなキャラ、乗りたい船、戦いたい相手etcを自分で考えて記入する。極めつけは、右下の「わたしの海賊旗」。これがんばって考えて書いちゃう人絶対いるよね。

日常で使いたい『ONE PIECE』の言葉。ファンならばセリフだけで劇中のドラマが再現されるのだろう。一部には実際のコマも
日常で使いたい『ONE PIECE』の言葉。ファンならばセリフだけで劇中のドラマが再現されるのだろう。一部には実際のコマも

カバーや周辺アイテムも充実

 ONE PIECE magagine とコラボしている本体は、ほぼ日手帳オリジナル版のみです。熱狂的なファンなら、この本体に尾田栄一郎先生書き下ろしの『麦わらのルフィ RED』のカバーをつけて使うのでしょう。

 ONE PIECEをテーマとしたカバーや周辺ツールも充実しています。こういうコミックスをテーマとしたアイテムが最初からずらりと出てくるところもほぼ日の底力といったところでしょうか。
 たとえば、下敷きは各サイズ(カズン、weeks、オリジナル)の3種。

下敷き各サイズ。ライトなファンなら、普通のほぼ日手帳にこの下敷きを使うのもありです。
下敷き各サイズ。ライトなファンなら、普通のほぼ日手帳にこの下敷きを使うのもありです。

 青いカバー『麦わらのルフィ BULE』はカズン、A5の2サイズ展開です。ほぼ日手帳の本体にこれらのカバーを組み合わせて使っても楽しめます。
 カバーといえば『Going Merry LOGBOOK』は、その名の通り「ゴーイング・メリー号」がモチーフ。黒の本革の中央の金ボタンは、メリー号の顔をかたどっています。内側に海図がプリントされていることといい、LOG=航海日誌のイメージでまとめられています。

『Going Merry LOGBOOK』。漆黒の革のLOG
『Going Merry LOGBOOK』。漆黒の革のLOG

 そのほか、ふせんとか、スタンプ、一筆箋など、単体で楽しめるONE PIECEのアイテム。大ファンじゃないけれど、ちょっと気になる人たちへの目配り、アプローチもおこたりありません。

一筆箋やスタンプなどの周辺の文具。アクリルスタンプなどもあって面白い。それにしてもこれだけのアイテムを手帳本体と同時に揃えて出してくる力業は、大手手帳メーカーもたじたじかも。
一筆箋やスタンプなどの周辺の文具。アクリルスタンプなどもあって面白い。それにしてもこれだけのアイテムを手帳本体と同時に揃えて出してくる力業は、大手手帳メーカーもたじたじかも。

キャラクターコラボにおけるイノベーションとは

 キャラクターや漫画のストーリーをあしらった手帳は、それこそ昭和の昔からありました。そして、今回のほぼ日手帳のケースは、物語の濃厚なエッセンスを源泉しつつ、忠実に手帳の中に落とし込むという新しい試みでもあります。また、ページをめくるたびに世界観が立ち上ってくるような手帳は、存在自体が新しいとも言えます。

カバー『麦わらのルフィ RED』のポケットの内側には、こんなセリフも。凝りまくってます!
カバー『麦わらのルフィ RED』のポケットの内側には、こんなセリフも。凝りまくってます!

2022年8月26日追記
 ほぼ日のTOBICHI(リアル店舗)の紹介記事をアップしました。こちらです。新旧のカバーや各種文具を手に取ってみることができ、すぐ購入できます。

デジアナリスト・手帳評論家・歌手

デジアナリスト・手帳評論家・歌手。著書『手帳と日本人』(NHK出版新書)は週刊誌の書評欄総ナメ。日経新聞「あとがきのあと」登場ほか大学受験の問題に2回出題。『凄いiPhone手帳術』(えい出版社)『システム手帳新入門!』(岩波書店)等著書多数。「マツコの知らない世界」(TBSテレビ)「HelloWorld」(J-WAVE)はじめテレビ・ラジオ出演多数。講演等も。手帳ユーザーを集めた「手帳オフ」を2007年から開催する等トレンドセッター的存在。手帳活用の基本をまとめた「手帳音頭」をYouTubeで公開中。認知症対策プロダクト「おぼえている手帳」は経産省オレンジイノベーションプロジェクト事業採択。

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