最低限の知識もない上司は、教育とマネジメントの違いさえわからない
異様に低いマネジャー教育の受講率
私は企業の現場に入って目標を絶対達成させるコンサルタントです。目標を「絶対達成」させるわけですから、実績のあるミドルマネジャーであっても、言動を変えてもらうよう促すことが多々あります。
しかし、なかなか受け入れてもらえないときがあります。一番の原因は、マネジャーとして正しい教育を受けていないこと。マネジャー教育を受けている人でも、年に1週間程度です。ひどいケースですと、年に1日や2日の研修しか受講しないマネジャーや、業績が悪くなってはじめて研修やセミナーを受ける、という方もいます。
普段から新聞、経済誌、ビジネス書もほとんど読まないマネジャーもいます。そんな人が上司なら、部下たちが勤勉になることはありません。体をメンテナンスするのと同じように、教育というのは、必要に迫られて受けるものではなく、常につづける姿勢が必要です。
最低限の知識もないマネジャーたち
一番驚くのは、何年もマネジャーをしているにもかかわらず、「教育」と「マネジメント」の違いがわからない人がいるということです。
たとえば、
「仕事の生産性をあげて、残業を削減してほしいと言っているのに、なかなか残業が減らない」
と不満を口にするマネジャーがいます。
さて、この問題は「教育」にあるのか「マネジメント」にあるのか、まず判別しなければいけません。そうでなければ、問題を対処する切り口を間違えてしまうからです。したがって、
「あなたの組織は生産性を上げるために、どうすればいいのかわかってますか?」
これが、私の最初の質問です。もし、
「具体的にどうしたら生産性を上げられるのか、わかっていないかもしれない」
という答えがかえってきたら、問題は「教育」にあります。どのような知識、情報、手順で業務の生産性を上げられるのか。まずは教育する必要があります。
ちなみに教育は、必ずしもマネジャー自身がやる必要はありません。その道のプロが社外にいるのであれば、そのプロからノウハウを提供してもらったほうが効率がいいでしょう。
いっぽう、
「わかってるはずです。全員で業務の棚卸をして、どの手順で効率をアップできるか話し合いましたから」
というのであれば、問題は「マネジメント」にあります。定期的に行動をチェックし、「キチンとやりなさい」と指示するのです。「言ってもやらない」と反論するマネジャーがいれば、日ごろからの関係構築ができていないのです。
「マネジメント」に問題があるのに、部下にこそ問題があるように主張するマネジャーもいますが、このような勘違いをするのも、マネジャー教育をじゅうぶんに受けていないことが原因です。
教育とマネジメントの違い
「どうして部下は、やらないんだ。わかってるはずなのに」
現場に入ると、このようなことをつぶやいて頭を抱えるマネジャーが本当に多い。
こういう人の頭の中は「わかっていれば → やる」という構図が描かれているのでしょう。しかし、私たちすべての人間は、「わかっていれば、必ずやる」ということはなく、「わかっちゃいるけど、なかなか」ということもたくさんあります。たとえ仕事であっても、です。ですから「わかったか」と部下に言って「わかりました」と返され、「ならいい」と満足げに言うマネジャーは能天気と言えるでしょう。
まとめると、わかっていないからできない人間には「教育」が必要で、わかっていてもできない人間には「マネジメント」が必要です。
上司は、組織のマネジャーであり、部下のよき教育者でなければなりません。それなりの知識を持ち、その知識を部下に対して効果的にティーチングしていく必要があります。それをしていないのに、部下の自主性を望んだり、解決策を考えさせようとするのはナンセンス。
教育とマネジメントは別物です。教育をすれば部下の動きが変わるとは限りませんし、正しい教育をしていないのにマネジメントが機能することはありません。