予約が取れない「三田ガーデンヒルズ」、モデルルームを報道公開も、まさかの撮影不可
今、都心部で話題の新築分譲マンションが3つある。
ひとつは、HARUMI FLAGの超高層棟SKY DUO(スカイ・デュオ)。次に、浜松町の世界貿易センタービルの建て替えで誕生するWORLD TOWER RESIDENCE。そして、三田ガーデンヒルズだ。
HARUMI FLAGは中央区、残り2つは港区アドレスで、すべて超都心のマンションということになる。そして、いずれも戸数規模が大きい。
HARUMI FLAG SKY DUOは2棟合わせて1455戸。WORLD TOWER RESIDENCEは389戸。そして、三田ガーデンヒルズは1002戸だ。
超都心の大規模なので「1度見てみたい」という見学希望者は多い。が、予約が取れない……つまり、なかなか見学できないことも、3つのマンションに共通する特徴だ。
なかでも、「本当に予約が取れない」と嘆く人が多いのが、三田ガーデンヒルズ。約1000戸のマンションだが、これまで販売された住戸はすべて億ションで、最高額住戸は40億円とも50億円とも噂されている。日本のマンション史上に残るだろう高額物件なので、販売センターに用意されている打ち合わせスペースは個室となる。個室数が限られる(つまり、1日に案内できる客数が少ない)ことが、なかなか予約が取れない理由と考えられる。
その「予約が取れない」マンションのモデルルームが、9月19日、報道関係者に公開された。
初めて公開されたが、撮影は不可
三田ガーデンヒルズは今年の初めから販売が開始されたが、モデルルームや完成予想模型が報道関係者に公開されたのは、今回が初めてだ。
これまで発表されたのは、いくつかのプレスリリースのみ。昨年10月には販売に先立ち、事前案内会が始まる、と知らされた。そして、この9月12日には、第2期販売の概要を記したプレスリリースがメールで配信された。
東京タワーの近くに設置されたレジデンシャルサロン(販売センター)内に設けられたモデルルームも、全体完成模型もこれまで取材することができなかったのである。
マスコミの不文律として企業活動の記事を書くためには、「正式に取材をする」ことが必要。だから、これまでは三田ガーデンヒルズのモデルルーム、及び全体完成予想模型に関する記事が書けなかった。
客のふりをして販売センター内を見ることもできるのだが、そのような隠れ取材はマナー違反となる。正しいことを報道するためにマナー違反もやむなし、というケースもあるのだが、通常のマンション取材ではあり得ない。
その点、報道関係者向けの記者発表で販売センターが公開されると、見聞きしたことはすべて記事にしてよい、というお墨付きをもらったことになる。
誠にありがたい機会となるのだが、今回の取材では、「販売センター内の撮影は不可」という但し書きが付いた。
画像は、不動産会社が用意したものをダウンロードして使うことが求められたのである。
40年近くマンションの取材をしていて、モデルルームの撮影ができなかったことはじつは何度かあった。が、それは、「本当は取材不可」の販売センターを特別に見せてもらったケース。今回のように、記者を集めてモデルルームが公開されたのに、撮影不可になったのは初めてだ。
撮影不可は、品位を保つため?
今回、販売センター内が撮影不可となったのにはいくつか理由がありそうだ。
ひとつは、公開されたモデルルームのなかに、これまで報道関係者に公開されることがなかった高グレードの住戸(後述)があること。高グレード住戸のプライバシーに関わる部分まで報道されたくない、との考えで、リビングルームなど一部の写真だけが提供されたと推測できるわけだ。
もうひとつ、撮影不可とすることで、こっそり撮影した画像がSNS等に出るのを防ぐ目的もありそうだ。
「公式な写真以外は表に出ない」ことで、高級マンションの品位を保つことを第一に考えた、ともいえる。たしかに、提供された写真は構図といい、色調といい、見事な写真ばかりだ。
上のように、提供された画像はどれも美しい。こっそり撮影した質の劣る写真が出回るよりも、このようにきれいな写真が出てくれたほうが売り手としては好ましいのだろう。
しかし、困ったのは、私が興味を持った部分の写真がないことだ。
モデルルームでは、「これまでにない工夫」や「新たに広まりそうな工夫」を探し出すのが楽しみとなる。特に、都心高額マンションは「新しい工夫」が随所に凝らされるもので、それは、高級車のニューモデルに最新の工夫が積極的に採用されるのと同じだ。
今回の見学でも、いくつかの工夫に驚かされた。が、提供された写真に、その部分が写っているものはなく、自分で撮影することもできなかった。
今回、撮影できたのはレジデンシャルサロン(販売センター)の外観だけ。そのため、販売センター内の説明で写真が付くのは一部にとどまる。多くは文字だけの説明とさせていただく。
モデルルームは2つ。玄関に「たたき」なし
三田ガーデンヒルズのモデルルームは2つ。約255平米の住戸と約110平米の大型住戸だ。現在、東京23区内では60平米台の3LDKが増えているのだが、それよりも1.5倍から4倍くらい広い。それくらい大きく、高額の住戸で構成されるマンションなのだ。
基本間取りはいずれも3LDKなのだが、モデルルームとして大幅な変更が加えられ、1LDK(255平米住戸)と2LDK(110平米住戸)になっている。広い面積をゆったり使った間取りになっているわけだ。
2つのモデルルームに共通するのは、玄関に「たたき(漢字では三和土)」がないこと。一般のマンションでは玄関部分に室内廊下から3センチ〜5センチ程度下げられた面がある。靴を脱ぐ場所で、そこが「たたき」だ。その部分が設けられず、玄関ドアを開けたところから室内廊下が始まる。
これは、欧米風であり、玄関のたたきに脱いだ靴が放置される、という見苦しさをなくす効果も生み出す。
「たたき」なしの場合、すぐ横のシューズ・イン・クローク(靴をしまう収納小部屋)に入り、靴からスリッパに履き替える。だから、シューズ・イン・クロークがないと、成立しにくい方式となる。当然、2つのモデルルームには大きなシューズ・イン・クロークがあり、110平米の住戸でも約1.8畳大となっている。
玄関に「たたき」を設けない工夫は、本邦初ではない。10年ほど前から都心高額マンションで広まりはじめた歴史があり、今回は、それを徹底しているわけだ。
この玄関まわりで発見した「新しい工夫」は、洗面所に通じるドアにあった。
このドア、どうやって開けるの?
110平米住戸では、玄関から入ってすぐのところに洗面所に入るドアが設けられているのだが、このドアが壁と一体化している。
上の写真では、右手側に白いドアがある。一方で、左手側、木目調の壁が続いている部分にはドアがないように見える。が、この壁の一部に洗面所に入るドアがあるのだ。どこにドアがあるかわからないのは、ドアノブも指をかける凹みもないからだ。
じつは、木目調壁の手前側、白いカウンターの隣にドアがある。このドア、どうやって開けるのかというと……肩で押す(頭とか、肘でもよい)。そうやって洗面所に入り、まずは手を洗う。手を洗う前にドアノブに触らなくて済むようにした、というアイデア(オプション設定)なのである。
洗面所側から出るときにはドアノブが設けられている。が、玄関側にはドアノブがない。それで、壁が連なる美しさも演出できるわけだ。
このような「こだわり」があることこそ、高額マンションの証。高額マンションを購入する人は、そういう点にしびれてしまうのである。
110平米住戸では、キッチンの食器洗い乾燥機(いわゆる皿洗い機)にも扉を開ける凹みや取っ手がなかった。もしやと思い、扉をトントンとノックすると、電気仕掛けで開いた。これは、渋谷駅近くで分譲された三菱地所レジデンスの高額マンションで採用されていた工夫である。
もうひとつは、パークマンション・グレードに
もうひとつのモデルルーム・255平米住戸はさらに高級仕様となっていた。というのも、255平米住戸は全5棟に分かれる三田ガーデンヒルズの中でも、上位に位置する住宅棟のものであるからだ。
三田ガーデンヒルズは、棟によってグレードが異なる。
最上位グレードとなる棟の名前は「パークマンション」。お分かりの方も多いだろう、三井不動産レジデンシャルがつくる分譲マンション最上位ブランドの名前である。
他の棟は「ウエスト・ヒル」「ノース・ヒル」「イースト・ヒル」「サウス・ヒル」と“ヒルつながり”の名前がついているが、ひとつだけ異なる基準の棟があるわけだ。
「パークマンション」棟の住戸が前述した「高グレードの住戸」である。
パークマンションの内部はこれまで報道関係者に公開されたことがない。だから、撮影不可にされた……それだけに、「パークマンション」棟の住戸である255平米住戸のモデルルームに興味を持つ人は多いはずだ。
その特徴については、もう一つの記事知られざる数億ションの世界(12)だから立派な玄関が2つ必要なのか、と分かる写真がこれで解説したい。