楽天カード「プライオリティ・パス」に新たな制限 理由を聞いてみた
11月28日、楽天カードは空港ラウンジなどを利用できる付帯サービス「プライオリティ・パス」について、提供内容の変更を発表しました。
2025年からは会員証のデジタル化で便利になる一方、利用施設を「ラウンジのみ」とする制限が加わり、話題になっています。制限に至った理由を聞いてみました。
回数は5回まで、使えるのは「ラウンジのみ」
楽天プレミアムカードは、楽天経済圏での特典に加えて、手頃な年会費でプライオリティ・パスが付帯するカードとして人気がありました。
そのサービス内容が2025年からリニューアルされます。まず、メリットといえそうなのは、アプリを用いた「デジタル会員証」に移行する点です。
これまでは物理的なカードが必要だったため、筆者はスーツケースにカードを入れたまま預けてしまい、ラウンジに入れない経験をしたことがあります。カードには有効期限があり、定期的に新しいカードを受け取るのも面倒でした。
これがアプリになることで、スマホの画面に表示したQRコードを読み取ってもらうことでラウンジに入れるようになるのは、嬉しい変更点といえます。
一方で、デメリットとなるのが利用回数や利用施設の制限です。楽天プレミアムカードでは「年間5回まで」の利用に制限することを2023年11月に予告。2024年8月に詳細を発表していました。
楽天カード広報によれば、カウント対象になるのは「デジタル会員証を提示してご利用いただくすべての施設」とのことから、従来のカードが使える間(2025年2月28日またはカード記載の有効期限のどちらか早いほう)は、カードを使ったほうがよさそうです。
そして今回、新たに発表されたのが利用施設の制限です。2025年1月2日以降、楽天プレミアムカードと楽天ブラックカードに付帯のプライオリティ・パスで利用できるのは、国内と海外の「ラウンジ」施設のみとなります。
飲食店やリラクゼーション施設など、利用できない施設で使おうとした場合、「入場時に受付で利用できないことを伝えられる」(楽天カード広報)というフローになるようです。
背景として考えられるのは、近年プライオリティ・パスで利用できる空港内の飲食店やリフレッシュ施設が増えたことで、利用者が大幅に増加しているという現象です。
2024年9月にはJCBが「国内はラウンジのみ」とすることを発表。三菱UFJニコスもラウンジのみに制限し、「コストの増加によりサービス提供ができなくなる恐れがある」と泣きを入れる事態になっていました。
本来、プライオリティ・パスで利用できる施設の利用料金は1回あたり35ドルとなっています。クレジットカード会社が提供元とどのような契約をしているかは不明ですが、複数回利用すると、クレジットカードの年会費を上回るコストが発生していた可能性があります。
以前から、細かいサービス内容はクレジットカード会社によって異なります。たとえばアメリカン・エキスプレスの場合、2019年にラウンジ以外の施設が利用対象外になりました。
また、先日NTTドコモが発表した「dカード PLATINUM」では、プライオリティ・パスの利用回数が年間10回となっています。今後は、最初からこうした制限をかける事例が増えていくのかもしれません。
楽天カードの広報担当者は、今回の制限に至った理由について「会員のお客様向けには空港ラウンジを無料でご利用いただけるサービスとして案内しており、その目的に沿った提供内容にした」と説明しています。
8月の発表時点ではなかった制限を後付けで加えて形になりますが、「それぞれの施策を時間をかけて検討した結果、このような形での発表になった」(広報)としています。
2023年に楽天プレミアムカードがサービス内容を大幅に変更した際には、年会費の返金に応じたことがありました。しかし楽天カード広報によれば、今回はそうした対応を行う予定はないとのことです。
おトクすぎるサービスはいつか終わる
筆者自身も10年以上前から楽天プレミアムカードに付帯するプライオリティ・パスを利用してきたこともあり、一連の発表には感慨深いものがあります。
かつては日本国内ではあまり使い道がなく、海外での利用が中心でした。また空港での楽しみというよりは、安価なチケットにありがちな過酷な旅程の苦しみを少しでも和らげてくれるサービスという印象でした。
しかし近年は関西国際空港の「ぼてぢゅう」のように、国内で利用できる飲食店やリフレッシュ施設が増えています。楽しみも増えた一方で、プライオリティ・パスの利用者が飲食店に長い行列を作るような状態も珍しくなくなり、そろそろ限界ではないかとの声が出ていました。
プライオリティ・パスが直接提供するプラン無制限に利用できるものは、年会費469ドル(約6万9000円)です。これが年会費1万円強のクレジットカードについてくるのは破格の安さであり、利用が増えすぎたことで制限に至るのはやむを得ないといえます。