「すぐやる」という言葉は気分が悪くなるので「すいやる」を使おう!
すぐやればいいのに、なかなか「すぐやる」ことができない人がいます。そのために「すぐやる」ためのテクニックを指南する人がいます。以下のようなテクニックです。
・その行動の「目的」を明確にする
・目標までの行動プロセスを明確にする
・心を落ち着かせるために深呼吸を3回繰り返す
たとえばすぐやらなければならない作業が「お客様への電話」だとします。商談を前に進めるために、重要な電話なのですが、なかなかできません。すぐにやらなくては、すぐにやらなくては、と思いながら、なかなかできないのです。
私は、自分がポーター(荷物の運搬などを主業務とするホテル従業員)だとイメージし、やるべきことを台車の上に置いた「荷物」だと考えてスイスイ運べばよいと考えています。これを「台車理論」と呼びます。
この場合、台車に載せる荷物は「お客様への電話」です。荷物を軽くするために、作業時間を見積もります。あまり親しくないお客様に電話をかけるのは気が引けるが、実際のところ時間に換算すると1~2分で終わることだ……とわかれば気分は軽くなります。
ところが、先述したテクニックを使うと……
お客様に電話する「目的」を明確にしようとし、考え込む作業が増えます。これが新たな「荷物」になるのです。この「荷物」も運ばなければならなくなります。目標までの行動プロセスを明確にするためには、その商談を前に進めるための商談プロセスを書き出さなくてはなりません。現在の自分の立ち位置をはっきりさせ、この電話にどんな意味をもたせるのかを吟味しようという行為です。かなり大きな「荷物」が新たに出現します。
心を落ち着かせるために深呼吸を3回繰り返す、というのは、まだいいかもしれませんが、慣れないことをするのには勇気が要ります。オフィス内で目をつむり、深呼吸を繰り返していると周囲から何か「変なヤツ」と思われないかなという雑念が増えます。ノイズが増えるということは、心の摩擦抵抗が増えることに繋がります。
「お客様への電話」をしなければならないのなら、すればいいだけの話です。それができない理由は単純に「気分」です。やる「気」になれない、その「気」になれない、という気分の話です。あまり大きく、深く考えすぎると、運ばなければならない荷物を増やすことになり、本末転倒です。
気分を変えればいいだけの話。「やる気」「意欲」を高めるために、それほど高尚な信念であったり、ポリシーであったり、綿密に建てられた計画が必要なわけでありません。
意外と、そのときの「気分」が大きく左右するものなのです。「ノウイング・ドゥイング・ギャップ」という言葉があります。「知っていることと、やっていることにギャップがある」という状態を指します。この状態から脱するために気分を変えましょう。それだけでいいのです。
よく言われることですが、気分を変えるには「表情」「動作」「言葉」を変えることです。ここで私がお勧めしたいのが、「すぐやる」という言葉を変えることです。
「すぐ」という表現を使っていると、急かされる「気分」になります。強制されている「気分」になります。もともと行動力がない人は、
「すぐやりなさい」
「すぐにやればいいのに、なんでそんなに行動が遅いの?」
「すぐやれって言っただろう! なにをそんなにグズグズしてるんだ!」
などと言われた過去が一度だけでなく、何度もあるはずで、「すぐやる」という言葉を使っている限り、そのような苦々しい体験を想起させることになります。つまり「すぐやる」という言葉を使っていると、行動を起こそうという「気分」になりづらいのです。
したがって「すぐ」という言葉を削除します。
先述したとおり、荷物を運ぶポーターになった「気」になりましょう。それも高級ホテルに勤めるポーターです。髪の毛もパリッとしています。服装もユニフォームをキチンと着こなしています。姿勢もよく、表情も明るく、挨拶もハキハキしています。「表情」「動作」「言葉」を変えることで、自分の「気分」を変えられます。過去の体験の「インパクト×回数」でできあがった思考パターンを修正していくことが可能です。
ポーターが荷物を運ぶときはスイスイ運びます。したがって、「すぐやる」ではなく、「すいやる」という言葉を使いましょう。スイスイの「すい」です。自分自身へのプレッシャーが減り、気分も軽くなります。気分が軽くなることで、運ぶ荷物も軽くなります。結局すべては「感覚」の話なのですから。