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【2019参院選】<若者向け>テーマ別公約比較【教育編】

室橋祐貴日本若者協議会代表理事
(写真:アフロ)

参議院選挙の投開票日、7月21日まであと1週間

政治に期待することは、「問題解決」である。

「時間がない」「無関心」「よくわからない」という理由で投票に行かない若者が多いが、もし若者がみんな投票に行けば、教育費は無償になり、バイトする必要がなくなるかもしれない。(実際、18歳選挙権以降、政治は若者に目を向けており、後述のように、どの党も教育費の負担軽減を公約に掲げている)

そう考えれば、投票所に行く「たった」15分なんか安いものだ。今では期日前投票所も増えており、明らかに投票に行った方がコスパが良い。

世の中にはいろんな問題がある。

子育て、労働、教育、年金、医療、介護、など。

それらの解決策を提示しているのが「公約」だ。

「公約」を掲げても、どうせ実現されないと思うかもしれないが、意外と、実現度は高い。

候補者情報から公約実現度まで網羅的にわかる「JAPAN CHOICE」によると、2013年の参議院選挙で与党が掲げた公約は約76%(257/339)が実現されている(実施中含む)。

であれば、自分の生活をラクにしてくれる「解決策」を掲げている党に票を投じておいた方がお得だ。

(自分が重視している問題の解決策が全くなければ、自分で立候補するか、政策提言を行うしかない)

では、各党はどんな「解決策」を提示しているのか?

若者に大きく関係するテーマを一つずつ見ていきたい。

まずは教育から。全てを取り上げると膨大な量になるので、主な政策を抜粋する。

教育費負担

○自民党

・幼児教育の無償化

・就学援助に係る補助の充実

・私立高校授業料の実質無償化など高校生等への修学支援の充実

・高等教育段階における新たな修学支援制度に基づく授業料減免や給付型奨学金の着実な実施など、経済的支援の充実を図る

○公明党

・幼児教育の無償化

・高校生等、大学等の教育費負担の軽減

・奨学金返還の負担を軽減

・家庭の経済状況が厳しい小学生・中学生への支援

・子どもの貧困対策の推進

○立憲民主党

・公立小中学校の給食費無償化

・国公立大学授業料の半額

・給付型奨学金の拡充

○国民民主党

・就学前教育・保育の区別なき無償化、高等教育まで公教育全体を通じた無償化

・給食費無償化、学年費(副教材など)も補助

・給付型奨学金の拡充

・子どもの貧困対策(数値目標の設定、教育格差の是正)

・生活困窮者自立支援法における子どもの学習支援事業を必須事業に

○日本共産党

・大学・専門学校の授業料半減、私立高校授業料・幼児教育・保育の無償化など

・70万人に給付奨学金を支給

・すべての奨学金の無利子化

○日本維新の会

・教育費完全無償化

・教育予算の対GDP比を他の先進国並みに引き上げ

・子育てバウチャーの導入

○社民党

・小・中学の学校給食の完全実施。学校給食の無償化

・保健・医療、福祉、保育、教育、労働、住宅など、総合的な施策で子どもの貧困問題の解消に取り組む

・教材費・図書費等の増額をめざす

・高等教育(大学、短期大学、大学院等)の学費は、将来的に無償化をめざし、段階的に引き下げ

教育の質(中身)

○自民党

・教育の情報化の推進

・学校における働き方改革の実現

・激動の時代に対応する、新たな教育改革(学校制度の多様化・複線化、教員免許制度を含めた義務教育改革、普通科の抜本見直し・文理分断からの脱却を図る高校教育改革、高大連携の推進、社会変革の原動力となる高等教育改革、大学院の充実、産学連携、社会人の学び直しなど)

・多様な個性を最大限に伸ばす教育の実現

・「家庭教育支援法案」の制定

○公明党

・教育の質を高めるため、小学校高学年の教科担任制の導入等に向けて、教員免許や教職員配置、教育課程の抜本的な見直しを行うとともに、専科指導教員の増員等による教職員定数の抜本的な拡充

・教員の働き方改革(ICT環境の整備、給特法の在り方検討)

・フリースクールに対する公的支援、障がいのある子どもへの学習支援の充実

・高校生の就職活動における「1人1社制」に係るよりよいルールの構築

○立憲民主党

・個別の教育ニーズのある子どもに対し、適切な指導と必要な支援を提供できるインクルーシブ教育を大学に至るまで実現

・フリースクールへの支援

・すべての学校の校則について公表を義務化

・図書館を子どもたちの居場所の一つとして位置付け、学校図書館や児童図書館を充実させて、子どもの読書環境をよくします

○国民民主党

・EdTech(エドテック)の推進

・インクルーシブ教育の推進

・フリースクールへの支援

・安易な株式会社化、公設民営学校等には厳しく慎重な姿勢

・ヤングケアラーへの支援

○日本共産党

・学校・自治体間の不毛な競争をもたらし、教育荒廃の原因ともなっている全国学力テストを廃止

・「ブラック校則」、学校の決まりを問答無用に強要する「ゼロトレランス(寛容ゼロ)」を、子どもの参加でなくす

・子どもに関わる施策に、子どもが自由に意見を述べ、おとなが誠実に受け止めることを重視

○日本維新の会

・新規参入規制の撤廃、政府発注の規制緩和

・地方への権限移譲で地域の実情に応じた保育サービスを可能に

○社民党

・高校生や若者を対象に学校や社会教育を通して、働く人を守るための労働基準法など、労働関係制度の出前講座

・インクルーシブ教育を広げます

・教育の「市場化」を転換

・「教育施策の成果と課題の検証」という目的を逸脱し、競争と学校の序列化を助長させている「全国学力・学習状況調査」のあり方を見直し、廃止または数年に一度の抽出調査とします

・教職員定数の改善や少人数学級の実現、国庫負担2分の1への復元、教育の無償化など教育の抜本的な改善と是正をすすめます

高等教育

○自民党

・女性研究者のライフイベントに配慮した、研究資金、雇用形態、人事制度等の柔軟な運用を進めます。出産・子育てと学業や研究の両立が図られるよう、「全ての大学に保育所を」を目標に、さらなる保育施設の整備を進めます

・学術研究・基礎研究の振興や若手研究者の育成などの基盤強化

○公明党

・優秀な若手研究者ポストの拡充や独創的かつ挑戦的な研究への支援の強化などにより、安心して自らの研究に打ち込める環境を整備し、若手研究者の活躍促進に向けた重点支援を行うなど、基礎研究の振興を推進

・女性や高齢者を含めた社会人が学び直しのできる環境を充実するため、大学における学び直し機能の強化など、リカレント教育を推進します。また、誰もがSociety5.0に対応したスキルを身に付けられる教育環境を整備します

○立憲民主党

・基礎研究への支援強化

○国民民主党

・基礎研究への公的支援の充実、応用・実用化研究への民間企業による投資拡大の仕組みづくりを進めます

・産官学の強力な連携体制により科学技術イノベーションの促進

・国の研究開発のあり方を質・量ともに変革します。科学研究費補助金(科研費)をさらに増やし、ITやIoT、ロボティクス、データ解析、サイバーセキュリティ、ヘルスケア、教育、宇宙などの分野を重点的に強化

○日本共産党

・国立大学の運営費交付金の傾斜配分や「類型化」を廃止し、教育・研究をささえる基盤的経費として十分に確保

・私立大学への「公費負担」原則を確立し、「経常費の2分の1助成」を実現

・国が各大学の改革を誘導する資金を廃止し、独立した配分機関を確立する

・大学・研究機関の人件費支出を増やし、若手研究者の採用をひろげる

○日本維新の会

言及なし

○社民党

・国立大学・高専運営交付金、私学助成費の減額方針を転換

・科学研究費助成事業(科研費)を充実・強化

・高等教育の質を維持するため、国立大学法人等における教育系学部・大学院、人文社会科学系学部・大学院を維持し、さらに充実を図ります

こうして見ると、どの党も教育費の負担を減らし、教育予算を増やそうとしているのは良い方向だと言える。

自民党は、教育・科学技術(P33)の項目を見ると、「イノベーション」という言葉が頻出し、成長のための教育という意味合いが強い(「成長戦略に資するグローバル人材の育成」(P41))。

しかし「教育の政治的中立性の徹底的な確立」を公約に掲げているが(P46)、ただでさえ日本は政治をタブー視する風潮が強く、「無色透明な」主権者教育の現場をさらに萎縮させたいのか、本当に若者の政治参加を進めたいのか疑問である。

公明党は教育費の負担軽減から教員の働き方改革、若手研究者への重点支援など全体的に目が向けられている。こうした公約では、受益者の多い需要者(教育の受け手)ばかりに目が向けられがちであるが、今や〇〇教育というのが増え続け、教育現場は疲弊しており、教員の働き方改革、スタッフ拡充は欠かせない状態となっている。その点、残業代が適切に支払われていない根拠となっている「給特法」の見直し検討まで踏み込んでいるのは評価できる。

立憲民主党は、「#令和デモクラシー」を掲げているだけあって、「子ども・若者立憲ビジョン2019」の第一項目には、「子ども、若者の意見を大事に」するとして、子どもの権利基本法案(仮称)の検討を掲げている。多様性やボトムアップを意識しているのがわかる公約となっている。

国民民主党は、負担軽減だけではなく、科研費を増やし、科学技術イノベーションの促進を図ろうとしている。

財源としては「子ども国債」の発行を明記しており、新規国債発行のリスクに議論の余地はあるだろうが、子ども・若者への投資を増やそうという意気込みは感じる。

「政策INDEX2019」の中では、就学前教育、高等教育における私費負担割合の高さについても言及している(P63)。

(参考)

・就学前教育の私費負担割合OECD諸国平均17.2%、日本52.1%

・高等教育の私費負担割合OECD諸国平均34%、日本67.6%

日本共産党は、「お金の心配なく学び、子育てができる社会」に3.4兆円捻出すると書かれており、きちんと予算が書かれているのは評価できる&全て実現できればもちろん素晴らしいが、他の社会保障などとの予算と合わせて、合計7.5兆円を本当に捻出できるのか、大企業や富裕層への課税強化などの悪影響がどのくらいなのかが問われるだろう。

日本維新の会は従来から主張している、憲法改正による教育費無償化、子育てバウチャー、地方への権限移譲など、自由化・多様化が特徴だ。

社民党は、教育に関する記述が多く、注力しているのがわかる。他党にないものだと、働くことに関する知識を深め活用できるようにする労働教育のカリキュラム化は重要だろう。

また政党ではないため、今回は対象外としたが、「れいわ新選組」は「奨学金チャラ」を掲げている。

れいわ新選組 政策

日本若者協議会代表理事

1988年、神奈川県生まれ。若者の声を政治に反映させる「日本若者協議会」代表理事。慶應義塾大学経済学部卒。同大政策・メディア研究科中退。大学在学中からITスタートアップ立ち上げ、BUSINESS INSIDER JAPANで記者、大学院で研究等に従事。専門・関心領域は政策決定過程、民主主義、デジタルガバメント、社会保障、労働政策、若者の政治参画など。文部科学省「高等教育の修学支援新制度在り方検討会議」委員。著書に『子ども若者抑圧社会・日本 社会を変える民主主義とは何か』(光文社新書)など。 yukimurohashi0@gmail.com

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