お饅頭といえども、その種類は無限大。そんなことないでしょ、と大半の方は思うかもしれませんが、和菓子ソムリエかつ大好きな和菓子のひとつがお饅頭という私にとっては、お饅頭も非常に奥が深い和菓子。

うるち米を挽いて作った上用粉を使用した上用饅頭、麹の力を借りて生地をふっくらさせることで、日本酒のような香りが立ち昇る酒饅頭、山芋や大和芋のまろやかな香りと独特の粘り気がたまらない薯蕷饅頭。さらにその中に包まれる餡子も実に多彩。粒餡やこし餡は勿論、その土地の特産品を餡子に練り込んだものやはたまた丸ごと包んだもの、チョコレートやカカオといった洋菓子の要素を取り入れたものなどなど。

語りはじめるときりがないのですが、和菓子の特徴のひとつでもある四季を取り入れるということも忘れられない重要なポイント。特に季節の変わり目なんかは、二つの季節の良いところを掛け合わせたものも販売されています。

今回は東京都中央区のオフィス街、京橋の人気老舗和菓子屋「桃六」さんの御饅頭「栗上用」をご紹介。

桃六さんの御菓子の特徴として、ボリューム感満載ということがあげられるのですが、こちらも餡子がたっぷり包まれた満足感たっぷりなお饅頭。腰高でどっしりとした力強いフォルムも、桃六さんらしさがよく伝わります。てっぺんにちょこんと乗せられた栗の甘露煮もふくよかな甘味とほんのり香ばしさ漂う秋の気配を口元へ運んでくれます。

そして中に包まれているのは、上品な風味が心地よい抹茶餡。ほっと心安らぐ白餡に練り込まれた抹茶は、白餡のふっくらとした豆感を損なわせない程度ではあるものの、確かな存在感。それはおそらく、最後に口の中で全体を引き締めてくれる渋味という名の旨味が作用しているからかもしれません。エレガントな味わいを大きな口で頬張る幸せ…そう、テイストがエレガントだからといって、少しずつ小さな口で啄むのではなく、思い切り頬ぼることができる桃六さんの和菓子たち。息抜きに、リフレッシュにぴったりです。

完全に秋の気配へとバトンタッチするのではなく、まずはほんのりと甘い秋を楽しんでみてはいかがでしょうか。