未知の巨大電波天体「ORC」の正体が遂に解明される!?
どうも!宇宙ヤバイch中の人のキャベチです。
今回は「謎の天体ORCの正体が解明される」というテーマで動画をお送りしていきます。
●正体不明の謎天体ORC
2019年、西シドニー大学の研究者は、宇宙を電波によって広範囲かつ深いところまで観測できるASKAP望遠鏡が撮影したデータを見ていたところ、既存のデータに合致しない奇妙な天体が浮かんでいることに気付きました。
その後残りのデータからも、同様の奇妙な電波源をいくつか発見することができたようです。
研究者たちはこの奇妙な天体を「Odd Radio Circle(ORC、奇妙な電波サークル)」と名付けました。
ORCは発見当初、観測データのエラーによって画像に含まれたノイズであると考えられていましたが、その後別の電波望遠鏡による観測で、実在する天体であることが確認されました。
またORCは非常に珍しい天体で、これまでにたった5つしか発見されていません。
ではその正体は何なのかというと、これまでは現代の理論をもってしても全く理解されていませんでした。
そもそもこの天体との距離が理解されていませんでした。距離というパラメータは、天文学の分野で特に確定が難しいものの一つです。
そのために、この天体の実際の大きさも全くわかっていませんでした。
太陽系と同様に天の川銀河内にある、直径数光年程度の大きさの天体なのかもしれませんし、遥か彼方の宇宙にある、直径数百万光年規模の超巨大天体なのかもしれません。
画像のORCの中心部にはオレンジ色の銀河があり、他のORCの中心にもこのような銀河が存在するケースがあります。
このような中心の銀河がORCの一部だとしたら、ORCは非常に遠方にある超巨大な天体である可能性もあります。
また、ORCを人間が見える可視光線で観測しようとしても、何も見えないそうです。
つまり電波でしか観測できない天体というわけです。
ORCの正体は全く見当がついておらず、理論的には存在が示されているものの、これまで観測されていないような現象を候補として、様々な可能性を検討する必要があるとされていました。
例えば遠方の銀河で中性子星やブラックホール同士が合体し、巨大な爆発を発生させ、その衝撃波がORCとして観測されている、などといった可能性です。
また、科学者はORCがなんと「ワームホール」である可能性も提唱していました!
ワームホールは宇宙空間におけるショートカットであり、これを使えば短期間で広大な宇宙空間を瞬間移動できる可能性が示されています。
ワームホールの入り口はブラックホールであり、その出口はホワイトホールなんだそうです。
ホワイトホールがまず仮説上の天体ですし、当然ワームホールも仮説上の構造で、まさにSFの中にしかないような天体という印象があります。
逆に言えばそんなワームホールすら候補として検討されるほど、ORCの正体は全くわかっていなかったということですね。
●ORCの正体が判明!
そんなORCですが、2022年3月20日とつい先日、正体が判明したと発表があり、大きな話題を呼んでいます。
南アフリカにある「MeerKAT(ミーアキャット)」と呼ばれる電波望遠鏡によって得られた観測データから様々な事実が解明されました。
結論から言うと、ORCの正体は中心に映る銀河が放出した、超巨大なガス雲である可能性が非常に高いということです。
画像に表示されているORCの場合、中心の銀河までの距離は約10億光年、ORCの直径は約100万光年とのことです。
ここまで巨大な構造にまで広がるには実に10億年もの年月が必要とのことで、その過程で周囲にある銀河すらもこの構造の内部に飲み込んでしまっていると考えられています。
ORCは中心の銀河を包み込む球状の構造です。
端の方が強い電波を放っているように見えますが、これは奥行きを含めた場合、地球から見ると銀河があるORC中心部領域より、端の部分の方向の方が多くのガスが存在するためです。
またMeerKATの観測データにより、ORC内における磁場の分布についても詳細な情報が得られました。
ORCの縁の部分では、縁に沿うような方向で磁場が分布しています。
このような分布は、銀河の中心で爆発が起こり、高温を伴った爆風が銀河周囲の希薄なガスと衝突したと考えると上手く説明ができるそうです。
銀河周囲のガス内の電子が、爆発の衝撃でエネルギーを与えられた結果、このように分布する磁場の周囲をくるくると回るようになり、その運動によって電波を放射しています。これが地球からORCとして観測されているわけです。
●ORCの発生原因は?
ではこのORCの詳しい発生原因は一体何なのでしょうか?
研究チームは、「超大質量ブラックホールの衝突説」と、銀河内で大量の星が誕生する「スターバースト現象説」の、大きく2つの可能性を考えているようです。
どちらの説もこれだけ巨大なORCを形成するのに十分なエネルギーを放つ可能性があります。
また、どちらの現象も非常に珍しく、これまでにORCがたった5つしか発見されていないことも上手く説明ができます。
とはいえ現時点では明確なことは解明されていないため、今後さらに詳細な観測と分析が求められていくでしょう。
そのためにはより高性能な観測機器が求められますが、現時点で非常に期待されているのが、「Square Kilometre Array、SKA」と呼ばれるプロジェクトです。
SKAでは南アフリカとオーストラリアに膨大な数の電波望遠鏡を設置し、非常に高い解像度を実現しようと試みられています。
ORCの研究に大きく貢献したASKAPやMeerKATといった電波望遠鏡も、実はこのSKAを実現するために設置された試験的な望遠鏡になります。
SKAが実現されればORCの残された謎の解明だけでなく、超遠方の宇宙の探査、さらには地球外文明の探査にも大きな進歩が得られると期待されています。
今後の観測技術の進化が楽しみです!