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「報酬10分の1に」「時給80ドルのライターだったがクビ」。海外で「AIに仕事を奪われた」悲鳴上がる

篠原修司ITジャーナリスト/炎上解説やデマ訂正が専門
AIが考える「AIに仕事を奪われる」状況。筆者がAIで生成

 生成AIの『ChatGPT』や『Stable Diffusion』などの登場により、「AIに仕事を奪われてしまうのではないか?」と不安視する声があがっていますが、海外ではすでにそのような事例が報告されています。

「時給80ドルのライターとしての仕事がなくなった」

 海外の大型掲示板『Reddit』で話題になっているのは、ある匿名のライターが今月投稿した「AIに仕事を奪われた」という報告です(クライアントからの特定を防ぐため、普段と異なるアカウントを利用しているとのこと)。

 この人物はフリーライターとして10年以上の経歴を持ち、トップブランドとの仕事の経験もあったそうです。

 昨年には新しいクライアントも獲得し、時給50ドルで仕事がスタートしたものの、彼の書く文章が優れていたことからクライアントが自主的に時給80ドルまでアップしてくれ、いまでは主要な収入源にまで成長していたとのことでした。

 しかし、その仕事は『ChatGPT』に取って代わられました。

 クライアントは「AIの仕事があなたの仕事ほど良くないことは理解しているが、利益率を無視できない」とメールで連絡してきたとのことです。

 彼は「AIは良いライターにとって脅威ではない」と考えていましたが、この経験から「あなたがトップ1%のライターでない限り、AIによる脅威から逃れられると考えてはいけません。私はフードデリバリーサービスにドライバーとして登録しました」と警告しています。

AIが描いたイラストの修正を依頼される。元の報酬の10分の1で

 また、イラスト生成AIにも仕事を奪われる事例が報告されています。

 海外メディアRest of Worldの中国担当記者が伝えたのは、ビデオゲームのイラストの執筆を1枚あたり3,000元~7,000元(約58,000円~136,000円)で請け負っていたフリーランスのイラストレーターAmber Yuさんの話です。

 Yuさんはプレイヤーを引きつけたり、新機能を紹介したりするためにSNSに掲載されるプロモーションポスターのイラストを描いていました。このイラストは技術が求められる時間のかかる作業であり、獅子舞をする伝統的な中国の衣装を着た女性のイラストを完成させるのには1週間かかったそうです。

 しかし、2月以降、上記のような仕事はなくなってしまいました。

 Yuさんによると、イラスト生成AIを利用し始めた企業はAIが描いたイラストの照明や体の歪みの調整などのわずかな修正を依頼するだけになり、報酬もこれまでの10分の1しか支払われなくなったとのことです。

自分の仕事にAIを取り込む時代に

 紹介した事例以外にも様々な報告があがっていますが、もはやこれまでの仕事がAIに取って代わられることを避けることは非常に難しいと考えます。

 パソコンが普及し始めてさまざまな仕事がなくなっていったように、生成AIが一般化していくことで同じように消えていく仕事が出てくることでしょう。

 とは言え、「商品を紹介する文章が欲しい」、「ユーザーを惹き付けるイラストが欲しい」といった仕事の需要そのものはなくなりません。

 また、AIに命令してうまく使いこなすプロンプトエンジニアという職が新たに生まれたように、これまでになかった職業もこれからはできてきます。

 生成AIの影響を受ける職業に就いている人にとって「AIに仕事を奪われる」ことは恐怖ではありますが、一方で新しい職業に就けたり仕事を始められたりするチャンスでもあります。

 このような事例を紹介しておいてアレですが、AIを怖がるのではなく、AIを仕事や人生にうまく取り込み、AIの力を利用していくことがAI時代に求められる生き方だと筆者は考えます。

 AI、面白いのでまずは触ってみてください。

ITジャーナリスト/炎上解説やデマ訂正が専門

1983年生まれ。福岡県在住。2007年よりフリーランスのライターとして活動中。スマホ、ネットの話題や炎上などが専門。ファクトチェック団体『インファクト』編集員としてデマの検証も行っています。最近はYouTubeでの活動も。執筆や取材の依頼は digimaganet@gmail.com まで

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