ホワイトクリスマスのルーツを探る
12月になると決まって聞かれるのが、「ホワイトクリスマスになりますか?」
答えはイエスでもあり、ノーでもあります。ご存じのとおり、日本海側の各地はホワイトクリスマスになることがほとんどですが、太平洋側の各地はあまり雪は降りません。札幌は100%のホワイトクリスマスになる一方で、東京では可能性がゼロに近い。雪降るクリスマスのイメージはどうして定着したのでしょう?そもそも、クリスマスの習慣はキリスト教の伝来とともに日本へやってきました。聖地エルサレムの天気や欧米の厳しい冬がホワイトクリスマスの原点なのでしょうか?ホワイトクリスマスのルーツを探ってみました。
聖地エルサレムは鹿児島と同じ?
まずは、キリスト教の聖地エルサレム。クリスマスはどんな天気なのでしょう?イスラエル気象サービスによると、12月の最高気温の平均は14度、最低気温の平均は8.4度、ちょうど日本の鹿児島と同じ気候です。雪降るクリスマスには暖かすぎるようです。
でも、エルサレムの標高は約800メートルと高地のため、上空に強い寒気が流れ込むと、まれに雨から雪に変わるようです。実際、今月14日には気温が0度近くまで下がり、雪が降りました。
小氷期が生んだ?ホワイトクリスマス
英気象庁がホワイトクリスマスのいわれについて、興味深い話をしています。それによると、イギリスでは伝統的なクリスマスカードや小説家ディケンズ(クリスマスキャロル)の作品にみられるように、ホワイトクリスマスが深く定着しています。でも、高緯度に位置しながら、暖流(メキシコ湾流)の影響で、ロンドンなど南部ではあまり雪が降りません。実際、この100年間でロンドンがホワイトクリスマスになったのはわずか10回だけです。
では、どうして雪とクリスマスが結びついたのでしょう?きっかけは1550年から1850年までの小氷期(Little Ice Age)にあります。当時のイギリスは寒冷期で、ロンドンを流れるテムズ川が凍結するほどの厳しい冬が続きました。クリスマスの頃にはイギリスのほとんどの地域で雪が降り、雪化粧したそうです。
今ではイギリスといえども、温暖化の影響で冬の気温が高くなり、ホワイトクリスマスとなる可能性はますます小さくなっています。ホワイトクリスマスは将来、絵葉書と絵本の世界だけになってしまうのか?ふと、そう思いました。
あこがれは世界共通?
ホワイトクリスマスのいわれをあれこれ探していたら、米海洋大気局(NOAA)のホームページでみつけました。全米のホワイトクリスマスになる確率(12月25日に雪が1インチ以上(2.54センチ)積もっている)です。五大湖周辺やロッキー山脈では70%以上の確率でホワイトクリスマスになりますが、フロリダなど南部では無理のようです。
お堅いイメージの気象専門家が、わざわざ、ホワイトクリスマスになる確率を示すなんて、ユーモアを感じます。
【ホワイトクリスマスとは?(英気象庁)】
12月25日、雪が積もっていること。さらに、雪が降っていれば理想的。
【参考文献】
イスラエル気象サービス(Israel Meteorological Service)
英気象庁(Met Office)「Will it be a white Christmas?」
米海洋大気局(NOAA)「What are your chances for a white Christmas?」
クリスマスおもしろ事典刊行委員会,2003:クリスマスおもしろ事典,日本キリスト教団出版局.
写真はすべて著者が撮影したものです。