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オーストラリアの森林火災で火傷のコアラに胸が痛む… 犬猫の火傷ケアを獣医師が解説

石井万寿美まねき猫ホスピタル院長 獣医師
(写真:ロイター/アフロ)

オーストラリアで発生した森林火災は野生動物やその生息地に大きな打撃を与え、シドニーから390キロほど北にあるコアラ病院は、負傷したコアラであふれ返っていた。

 猛威を振るった火災は840万ヘクタールの草原地帯を焼いた。焼失面積はスコットランドの国土より大きい。また、絶滅が危惧されるコアラ8万匹のうち、約40%が死んだという。

出典:豪森林火災、最前線のコアラ病院の現状 ベッドは常にほぼ満床

ネットでニュースを見ていますと、コアラが保護されて治療をされている風景を目にします。日本での報道は減ってきたように思いますが、まだ火災は止まっておらず、被害は続いているそうです。

[https://www.afpbb.com/articles/-/3263481?pid=22016318 豪サウスオーストラリア州カンガルー島の仮設病院で治療を受けたコアラ](2020年1月14日撮影)。(c)PETER PARKS / AFP
[https://www.afpbb.com/articles/-/3263481?pid=22016318 豪サウスオーストラリア州カンガルー島の仮設病院で治療を受けたコアラ](2020年1月14日撮影)。(c)PETER PARKS / AFP

包帯を外さない

火傷で手足に包帯を施されています。コアラは、比較的おだやかで、包帯をされたらそのままのようです。一方、犬や猫は、自分たちで器用に包帯をすぐ外すので、首のところにエリザベスカラーというものを装着して、口が届かないようにしています。もちろん、火事の影響で、肺などに疾患を負っているてので、全身状態が悪いのでしょう。

[https://www.afpbb.com/articles/-/3263481?pid=22016331 豪サウスオーストラリア州カンガルー島の仮設病院で治療を受け、かごの中で眠るコアラ](2020年1月14日撮影)。(c)PETER PARKS / AFP
[https://www.afpbb.com/articles/-/3263481?pid=22016331 豪サウスオーストラリア州カンガルー島の仮設病院で治療を受け、かごの中で眠るコアラ](2020年1月14日撮影)。(c)PETER PARKS / AFP

逃げない

コアラは、森林火災のために衰弱していることもあるのですが、逃げることもなく、かごの中で眠っています。1日20時間、たっぷりの睡眠時間が必要なので、ゆっくりした動きが多いです。猫や犬は、ほとんどの場合は、だれかが保定をしていないと逃げるので、毎日、臨床をしている私には、コアラの生態がわかって興味深い写真でした。

犬や猫は、どんなときに火傷するのか

火傷などは、事前にわかる疾患ではありません。事故なので、突然にやってくるものです。以下のようなことがあります。

・ストーブの前に座り続けて、低温火傷する。

・飼い主が、家事をしていて、火の傍らにきて、ヒゲが焼ける。

・猫が誤ってコンロに着地して、四肢を火傷する。

・家が火事になり火傷する。

などがあります。特に、寒い時期は、このような事故が多いことを飼い主さんは、頭に入れておきましょう。温活をしているつもりが、火傷してしまう場合もありますから。

犬や猫の火傷の症状

・犬や猫は、全身が毛で覆われているので、患部がわかりにくいのですが、体液などで患部の毛が固まる。

・化膿した場合は、そこから濡れて、分泌物が出てニオイを伴う。

・火傷の部分が多いと、食欲不振、動きが緩慢。命にかかわることもあります。

病院での治療

・すぐであれば、患部を冷やす。

・周りの毛を刈り、清潔な水で患部を洗浄。

・抗生剤の塗布や内服

最近の患部のケア

・消毒はしない。

消毒液が、正常な組織に傷をつけて、かえって治るのを遅くするので。

・患部を乾燥させない。

ゲンタシン軟膏やアズノール軟膏を塗って、濡れた状態にします。

・患部は、毎日、石鹸をつけ清潔な水で洗う。

飼い主ができること

・火傷直前なら、患部を冷やして、病院に連れて行く。

・寒がりの子で、ストーブの晩をしている子は、低温火傷をしている可能性があるので、全身の毛をよく観察。

寄付

日本にいて、コアラなどの火災で、何か行動を起こそうと思えば、以下のサイトで寄付をすることもできます。

オーストラリアの火災で被害を受けた野生動物と自然環境のために

 火災で焼けた木に登るコアラ (C)Julie Fletcher / WWF-Australia
火災で焼けた木に登るコアラ (C)Julie Fletcher / WWF-Australia

【拡散希望】ヒカキンと一緒にオーストラリア森林火災の被災地に募金しませんか?【コアラを助けたい】【寄付の方法】

まとめ

人間だけでなく、動物も火傷などの疾患は、急に起こるものです。常日頃から、ペットの飼い主として火傷が起こったときの初動処置を知っておくとことは、大切です。もし、愛犬、愛猫が火傷を負っても、すぐに適切な処置が出来るからです。ネットで調べているうちに、火傷がひどくなる可能性もあるからです。室内飼いをしている犬や猫が増えたので、火傷をするリスクがあります。コアラのマーチ(代金の一部がコアラの保護に使われています)を食べながら、勉強はいかがですか。

まねき猫ホスピタル院長 獣医師

大阪市生まれ。まねき猫ホスピタル院長、獣医師・作家。酪農学園大学大学院獣医研究科修了。大阪府守口市で開業。専門は食事療法をしながらがんの治療。その一方、新聞、雑誌で作家として活動。「動物のお医者さんになりたい(コスモヒルズ)」シリーズ「ますみ先生のにゃるほどジャーナル 動物のお医者さんの365日(青土社)」など著書多数。シニア犬と暮らしていた。

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