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さあ 対戦相手は決まった~夏の甲子園~

森本栄浩毎日放送アナウンサー
期待と不安の中、49校主将による組み合わせ抽選会が行われ、好カードが決まった。

6日夕、49代表校の選手、監督が出席して組み合わせ抽選会が行われた。数年前からいわゆる「フリー抽選」になり、以前の「東西対抗」に比べると、近隣県同士の対戦が散見され、妙味は明らかに下がった。今回はこれまでで初めて秋の大会を戦う同地区対戦がなく、例年以上に好カードが多い印象になった。春の覇者・龍谷大平安(京都)が開幕戦を引き当てるなど、会場内は対戦相手が決まるたびにドッと沸いた。

連覇狙う平安がいきなり登場

初日はまず平安の戦いぶりが焦点。原田英彦監督(54)は、「(開幕戦は)なかなか経験できるものではありませんからね。前向きに考えないと。開会式を終えて、どう動くか、今思案しているところです」と苦笑い。

平安の河合主将が開幕戦を引くと、場内がどよめきに包まれた。
平安の河合主将が開幕戦を引くと、場内がどよめきに包まれた。

先発が予想される高橋奎ニ(2年)は、「びっくりしました。一番にマウンドに上がるので、しっかりしたピッチングをしたいです」と屈託のない笑顔を見せた。主将の河合泰聖(3年)は、「ここへ来て、センバツのときのような一体感が出てきました」と自信たっぷりだ。相手の春日部共栄(埼玉)について原田監督は、「激戦区を勝ち抜いていて、選手層も厚い」と警戒を緩めない。第2試合は20年ぶりの坂出商(香川)が常連の敦賀気比(福井)と。坂出商の左腕・金丸智哉(3年)が辛抱強く投げて、気比の強打をかわしたい。3試合目には日大鶴ヶ丘(西東京)が登場し富山商と対戦。富山商の速球派左腕・森田駿哉(3年)がしぶとい攻めの鶴ヶ丘に力勝負で投げ勝ちたい。

日本文理の強打に挑む大分の佐野

2日目は好カードが続出。左の横川楓薫(3年)と右の柳悠聖(3年)の2枚看板が強力な日南学園(宮崎)と名門・東邦(愛知)は激戦か。東邦は、県大会の大事な試合で先発してきた1年生右腕・藤嶋健人がどんな甲子園デビューを見せるか注目される。名門・静岡と星稜(石川)も実力伯仲。県大会で奇跡的な逆転優勝を果たした星稜に勢いが残っているかどうか。静岡は、今大会一の進学校でもあり、チーム力は互角。センバツで優勝候補に挙げられながら初戦敗退の日本文理(新潟)は初出場の大分と。文理に常連のアドバンテージはあるが、大分の右腕・佐野皓大(3年)は150キロの速球を投げる。佐野のペースになれば大分にも勝機が広がる。第4試合は大垣日大(岐阜)が藤代(茨城)と。阪口慶三監督(70)は、「去年よりすべてに渡って上」と開幕戦で敗退した昨年の雪辱を期す。両校とも攻守のバランスがいい。

積極走塁の健大高崎が群馬県勢連覇に挑む

3日目は昨年の覇者・前橋育英を破って出場の健大高崎(群馬)が春夏連続の岩国(山口)と。積極的な走塁でかき回す健大高崎に、春を経験した岩国の柳川健大(3年)がどう立ち向かうか。悲願の初出場となった鹿屋中央(鹿児島)は、智弁和歌山を延長で振り切った市和歌山と対戦。ともに複数の好投手、粘り強い攻撃とチームカラーは似ている。先制点が鍵を握るが、接戦は間違いないだろう。選手権優勝経験のある佐賀北は初出場の利府(宮城)が相手。こちらもチームカラーが似ていて、犠打を絡めてしっかり得点機をモノにする。佐賀北は得点力がやや落ちるだけに、先手を取りたい。春夏連続の三重と広陵(広島)は、甲子園優勝経験校同士。三重のエース左腕・今井重太朗(3年)は、センバツ初戦敗退の経験を生かしたい。広陵は安定した守備力で接戦に強い。

屈指の大型チーム九州国際大付

4日目の東海大甲府(山梨)と佐久長聖(長野)は今大会唯一の隣県対決。両校とも県大会決勝を奇跡的な逆転で制し、底力を発揮した。予選の成績だけを見ると打撃優位と思われる。投手の奮起がポイントだ。東海大四(南北海道)は、168センチのエース・西嶋亮太(3年)が、大型チームの九州国際大付(福岡)にどう挑むか。今大会で勇退が決まっている九国の若生正広監督(63)は、「食らいついて終盤勝負に持ち込みたい。体力に自信はあるけど、体力と野球のうまさは違うからね」と慎重な口ぶり。それでも今秋ドラフト上位候補の清水優心捕手(3年)らを擁する打線は大会屈指の破壊力を誇る。8年連続の聖光学院(福島)と選手権初出場の神戸国際大付(兵庫)も好カード。聖光の斎藤智也監督(51)は、「(4点差を追いついた県大会は)敗戦の弁を考えていましたよ。それだけに今大会はやりやすい。でも選手には、『7年以上続けて出て、上までいっていないのはウチだけ』と言ってハッパをかけています」と常連らしい落ち着きぶり。一方の国際・青木尚龍監督(49)も、「兵庫の代表として簡単に負けられない」と意気込む。エースの黒田達也(3年)は、「疲れもとれて調子はいいです。相手は常連。隙がないので、初回、先頭打者、初球に気をつけたい。目標は日本一です」とあくまでも前向きだ。春夏通じて初の小松(愛媛)は、山形中央と対戦。小松の宇佐美秀文監督(56)は、公立3校(川之江、今治西、小松)を甲子園に導いた。「久しぶりですけど、抽選会もいい雰囲気でした。やっぱり甲子園はいいですね」としみじみ。集中打と多彩な投手陣で旋風を狙う。山形中央は、191センチの大型右腕・石川直也(3年)と左腕の佐藤僚亮(2年)がともに投球回数を上回る三振を奪っていて、攻略は容易でない。

明徳と智弁、ハイレベルな投打競演

5日目は3試合。まず、場内が最も沸いた明徳義塾(高知)と智弁学園(奈良)は、4度目の甲子園になる明徳・岸潤一郎(3年)と大会ナンバーワン強打者の岡本和真(3年)擁する智弁打線のハイレベルな対決が見もの。岸は、「引いたとき沸いたので、ボードを見たら『また智弁や』と思いました」と苦笑。春も智弁和歌山と初戦で当たり、延長15回で振り切っている。「岡本だけでなく、ひとりひとり丁寧にうちとって、僅差のゲームに持ち込みたい」と展望を語る。

春夏連続で落ち着いた表情の智弁・岡本は、「強いところと当たって嬉しい」と自信。
春夏連続で落ち着いた表情の智弁・岡本は、「強いところと当たって嬉しい」と自信。

受けて立つ岡本は、「個人的には強いところとやりたいと思っていたので、すごく嬉しい。智弁の名を全国に広めたい」と意欲満々。「全員でつないで攻撃したい」と常日頃からの心がけを何度も口にした。客観的には岸の調子が普通なら、いかに智弁といえども連打は難しい。むしろ智弁の投手陣が明徳の執拗な攻めを凌ぎきれるかで勝敗が分かれると見る。次も常連対決で、開星(島根)が大阪桐蔭に挑む。県大会で打ち勝ってきた開星だが、桐蔭にまともな打撃戦を挑んだら分が悪い。まずは投手が踏ん張って得意の継投策に持ち込みたい。桐蔭の西谷浩一監督(44)は、「このチームはセンバツがなかったので、体力作りをしっかりやれたのが好結果につながったと思います」とふり返り、「今の3年生は、入学式の日がセンバツの決勝で春夏連覇。ひとつ上が、全員で優勝旗を返そうと意気込んで春夏出られた。そして彼らの代になって負けることが現実になった。それだけに最後の夏、何とかしたいという思いが強かったですね」と苦しかった1年の歩みを明かした。その上で、「個々の力はありませんが、力を合わせて粘り強く戦いたい」と一体感を強調した。3試合目から2回戦に入り、11回目の予選決勝で初めての夏になるニ松学舎大付(東東京)が海星(長崎)と。この試合順が日程的に最も有利だ。ニ松学舎は、1年生捕手・今村大輝の活躍で帝京を破った決勝の勢いが残っているかどうか。海星は、県大会で3試合の逆転勝ちを演じるなど粘りが身上。主力に2年生が多く、勢いに乗ったチームに流れが行きそう。

東海大相模は難敵・松本の盛岡大付

6日目は2回戦4試合。鳴門(徳島)と近江(滋賀)は、打線好調の近江を鳴門の1年生・河野竜生がどう抑えるか。近江も主力が下級生だが、遊撃手・植田海(3年)は攻守に活気をもたらすチームの原動力。多賀章仁監督(54)は、「勢いはありますが、甲子園ではいかに普段どおりの野球ができるか。しっかり基本に忠実な野球をしたい」とベテランらしく語る。6年ぶりの城北(熊本)は夏初出場の東海大望洋(千葉)と。3人の継投と粘り強い打撃で接戦を勝ち抜いた城北。強打線が爆発力を発揮する望洋。チームカラーが違う対戦は先にペースを握った方が有利。第3試合は注目の一戦。東海大相模(神奈川)が今大会ナンバーワンの本格派・松本裕樹(3年)擁する盛岡大付(岩手)と。チーム力は速球派4人を誇る東海大相模に分があるが、投打に飛びぬけた能力を持つ松本はひとりの力で試合を左右できる。神奈川出身の松本が故郷の代表と初戦を戦うのも皮肉な話だ。原貢元監督が亡くなった直後の大会でもあり、日程にも恵まれた東海大相模は優勝争いの中心になると見ている。第4試合は初出場の角館(秋田)と八頭(鳥取)の公立同士。角館の相馬和輝(3年)は東北を代表する好投手で、地元の期待も大きい。八頭は足を絡めた積極的な攻めが持ち味で、僅差の好勝負が予想される。

優勝争い左右する沖縄尚学と作新

7日目は残りの2試合と対戦相手の決まっていない関西(岡山)の試合から勝者同士の2回戦に入る。西日本を代表する強チームの沖縄尚学は、4年連続の作新学院(栃木)が待ち受ける。豪腕・山城大智(3年)らこれまでの実績だけなら尚学だろうが、作新は左の藤沼卓巳(3年)から右腕の朝山広憲(2年)へつなぐ絶対的な勝ちパターンを持つ。栃木のレベルは全国屈指の高さだったことも加味すると、この試合は優勝争いを大きく左右する。尚学は沖縄大会で不振だった打線の復調も待たれる。春夏連続の八戸学院光星(青森)は春夏通じて初めての武修館(北北海道)と。光星のキャリアはかなりのアドバンテージだけに、武修館はうまく投手をつないで食い下がりたい。関西は初日勝者3校の中から対戦相手が決まる。江浦滋泰監督(45)は、「困りましたね。初日をしっかり見て研究します」。多彩な投手陣と集中打はかなりのレベルで上位進出も。残る2勝者は2回戦で当たるから、初日の勝者はその日のうちに次の相手がわかる。2、3日目の8勝者がシャッフルされて2回戦。4日目と5日目の第2までの6勝者がシャッフルされて2回戦。5日目第3の勝者からは次戦が3回戦になる。日程的にはここに入るのが最も有利で、東海大相模、沖縄尚学、作新、光星などが対戦相手は別にして、恵まれた。初日から登場する組では、平安の初戦がカギ。勝っても力のある関西は避けたい。2、3日目では、日本文理、大垣日大、健大高崎、広陵などが有力。次の6カードは強豪が多く、九州国際大付、神戸国際大付、明徳と智弁の勝者、大阪桐蔭がしのぎを削る。

選手宣誓の大役を引き当てた作新の中村主将は、場内の拍手に照れた笑顔で応えた。
選手宣誓の大役を引き当てた作新の中村主将は、場内の拍手に照れた笑顔で応えた。

選手宣誓は立候補した23人が抽選して作新の中村幸一郎主将が引き当てた。本人よりもチームメイトが大騒ぎしていて、「少しびっくりしました。ちょっと緊張しています。みんなで(宣誓文は)考えたい」となかなか言葉が出てこなかった。それでもさわやかな受け答えに、場内からはこの日一番の拍手が送られ、抽選会を締めくくった。

毎日放送アナウンサー

昭和36年10月4日、滋賀県生まれ。関西学院大卒。昭和60年毎日放送入社。昭和61年のセンバツ高校野球「池田-福岡大大濠」戦のラジオで甲子園実況デビュー。初めての決勝実況は平成6年のセンバツ、智弁和歌山の初優勝。野球のほかに、アメフト、バレーボール、ラグビー、駅伝、柔道などを実況。プロレスでは、三沢光晴、橋本真也(いずれも故人)の実況をしたことが自慢。全国ネットの長寿番組「皇室アルバム」のナレーションを2015年3月まで17年半にわたって担当した。

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