ジカ熱 背景に温暖化も
中南米で感染拡大が懸念されているジカ熱。ウイルスを媒介する蚊は温暖化による気温の上昇で、日本では生息域が拡大している。また、東京など都市部ではヒートアイランドの影響で、蚊が越冬するリスクが高い。ジカ熱の感染拡大は対岸の火事ではない。
温暖化とともに生息域が北上
中南米で感染拡大が懸念されている「ジカウイルス感染症(ジカ熱)」、また2014年8月、国内で69年ぶりに感染が確認された「デング熱」はともに、蚊がウイルスを媒介します。
左図は東北地方の主要都市の年平均気温(平年値)をみたものです。
蚊(ヒトスジシマカ)は年平均気温11度以上の地域に生息するため、1950年以前の生息域の北限は福島県付近でした。
ところが、温暖化による気温の上昇で、蚊の生息域は徐々に北上し、2010年には岩手県や秋田県で生息が確認されました。東北地方の年平均気温は100年間で1.2度上昇していることがわかっています。気温の変化はわずかに思うけれど、媒介動物の生息には大きな影響があるのです。
東京も越冬のリスク
暖冬が続く、今年の冬。暖冬の影響はサクラの開花ばかりではありません。
温暖化の進行と都市化によるヒートアイランド現象で、東京は夏よりも冬の方が気温の上昇が顕著です。
東京の月平均気温をみると、蚊が生息できる平均気温11度以上の月は、4月から11月までの8か月に及びます。気温が下がる冬は蚊が成育できない時期でした。しかし、冬の気温が高くなればなるほど、蚊が越冬するリスクを高めることになります。
現時点で、蚊(ヒトスジシマカ)の生息域拡大がイコール感染症の拡大とまではいえません。
しかし、温暖化はゆっくりだけれども着実に進行しています。近い将来、蚊の生息域は北海道に達するとみられ、温暖化のリスクを身近に感じる時代になったのかもしれません。
【参考資料】
気候変動の観測・予測・影響評価に関する統合レポート「日本の気候変動とその影響(2012年度版)」:文部科学省・環境省・気象庁
気候変動の影響への適応計画:平成27年11月27日閣議決定
ジカウイルス感染症について:厚生労働省
ジカウイルス感染症(ジカ熱)のリスクアセスメント:国立感染症研究所
「デング熱」にご注意を! 予防策は「蚊に刺されない」「蚊を発生させない」:政府広報オンライン
【表紙の図について】
1979年から2015年まで、世界の年平均気温がどのように変化したのかをみたものです。赤い丸は気温が高く、青い丸は気温が低くなったことを表しています。