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ジカ熱 背景に温暖化も

片山由紀子気象予報士/ウェザーマップ所属
年平均気温長期変化傾向 1979-2015(気象庁)

中南米で感染拡大が懸念されているジカ熱。ウイルスを媒介する蚊は温暖化による気温の上昇で、日本では生息域が拡大している。また、東京など都市部ではヒートアイランドの影響で、蚊が越冬するリスクが高い。ジカ熱の感染拡大は対岸の火事ではない。

温暖化とともに生息域が北上

年平均気温<平年値,℃>(気象庁,メッシュ気候図)
年平均気温<平年値,℃>(気象庁,メッシュ気候図)

中南米で感染拡大が懸念されている「ジカウイルス感染症(ジカ熱)」、また2014年8月、国内で69年ぶりに感染が確認された「デング熱」はともに、蚊がウイルスを媒介します。

左図は東北地方の主要都市の年平均気温(平年値)をみたものです。

蚊(ヒトスジシマカ)は年平均気温11度以上の地域に生息するため、1950年以前の生息域の北限は福島県付近でした。

ところが、温暖化による気温の上昇で、蚊の生息域は徐々に北上し、2010年には岩手県や秋田県で生息が確認されました。東北地方の年平均気温は100年間で1.2度上昇していることがわかっています。気温の変化はわずかに思うけれど、媒介動物の生息には大きな影響があるのです。

東京も越冬のリスク

東京における月平均気温の変化(平年値,℃)
東京における月平均気温の変化(平年値,℃)

暖冬が続く、今年の冬。暖冬の影響はサクラの開花ばかりではありません。

温暖化の進行と都市化によるヒートアイランド現象で、東京は夏よりも冬の方が気温の上昇が顕著です。

東京の月平均気温をみると、蚊が生息できる平均気温11度以上の月は、4月から11月までの8か月に及びます。気温が下がる冬は蚊が成育できない時期でした。しかし、冬の気温が高くなればなるほど、蚊が越冬するリスクを高めることになります。

現時点で、蚊(ヒトスジシマカ)の生息域拡大がイコール感染症の拡大とまではいえません。

しかし、温暖化はゆっくりだけれども着実に進行しています。近い将来、蚊の生息域は北海道に達するとみられ、温暖化のリスクを身近に感じる時代になったのかもしれません。

【参考資料】

気候変動の観測・予測・影響評価に関する統合レポート「日本の気候変動とその影響(2012年度版)」:文部科学省・環境省・気象庁

気候変動の影響への適応計画:平成27年11月27日閣議決定

ジカウイルス感染症について:厚生労働省

ジカウイルス感染症(ジカ熱)のリスクアセスメント:国立感染症研究所

「デング熱」にご注意を! 予防策は「蚊に刺されない」「蚊を発生させない」:政府広報オンライン

【表紙の図について】

1979年から2015年まで、世界の年平均気温がどのように変化したのかをみたものです。赤い丸は気温が高く、青い丸は気温が低くなったことを表しています。

気象予報士/ウェザーマップ所属

民放キー局で、異常気象の解説から天気予報の原稿まで幅広く天気情報を担当する。一日一日、天気の出来事を書き留めた天気ノートは128冊になる。365日の天気の足あとから見えるもの、日常の天気から世界の気象情報まで、天気を知って、活用する楽しみを伝えたい。著作に『わたしたちも受験生だった 気象予報士この仕事で生きていく』(遊タイム出版/共著)など。

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