数か月内に北朝鮮の「Xデー」はあるのか?
プリンケン米国務長官は昨日、バイデン政権の対北政策について「北朝鮮との外交に焦点を置いている』として「北朝鮮が外交に関与する機会をつかむことを望んでいる」とバイデン政権が北朝鮮とは対決ではなく、外交で問題を解決する用意があることを表明した。
一見、北朝鮮に手を差し伸べているようにも見えるが、その手を握るかどうかは北朝鮮次第と、「ボールは北朝鮮側にある」と傍観する立場で、米国からあえて積極的に働きかける気はなさそうだ。
(参考資料:オバマ元大統領が「家康」でトランプ前大統領が「信長」ならばバイデン大統領は「秀吉」か!)
そのことは、プリンケン長官が「今後数日、或いは数か月内に北朝鮮が言っていることだけでなく、実際に行動に移すかを見守る必要がある」と条件を付けていることからも伺い知ることができる。要は、北朝鮮に交渉する気があるのか、しばらく様子見のようだ。
その理由は、北朝鮮外務省の権正根対米局長が北朝鮮を「米国と世界の安保に対する深刻な脅威」とみなしたバイデン大統領の施政演説に反発し、「時間が経つほど米国が非常に深刻な状況に直面することになる」対抗措置を予告したことや米国務省のプライス報道官の人権批判に対しても外務省報道官が「米国が必ず後悔するような措置を取る」と警告を発したことにある。北朝鮮が実際に予告どおりアクションを起こせば、外交に軸を置いたバイデン政権の対北政策はスタートから軌道修正を迫られることになるからだ。
(参考資料:米朝対決のゴングが鳴った! 北朝鮮がバイデン政権に「NO」を突きつけた!)
北朝鮮の出方を見守るのに最長で数か月を要するのにはこれまたそれなりの理由がある。北朝鮮はトランプ前政権下では米朝首脳会談が実現した2018年以降は中長距離弾道ミサイルや潜水艦弾道ミサイルの発射を自制していたが、それまでの3年間をみると、5月から8月までの間に何度もミサイル発射実験を繰り返していた。年次的にみると、一目瞭然だ。
2015年
5月9日に潜水艦発射弾道ミサイル「北極星1」の水中発射実験。金正恩総書記の立ち合いの下、初めて公開実験が行われ、北朝鮮は「完全に成功した」と「成果」を大々的に強調していた。
2016年
5月31日に中距離弾道ミサイル(IRBM)を、6月22日には中距離弾道ミサイル「ムスダン」(火星10)を発射。米国の独立記念日(7月4日)から5日後の9日には「北極星1」を発射し、8月24日にも「北極星1」を再度発射させ、完成させている。
2017年
5月14日にグアムを射程圏に定めた中長距離弾道ミサイル「火星12」を発射。「火星12」は1か月前の金日成主席生誕記念軍事パレードでお披露目したものであった。また、5月21日には「北極星1」を地上発射型に改良した「北極星2」も発射。さらに7月には米国の独立記念日に大陸間弾道ミサイル「火星14」を発射。金総書記は「米国は独立記念日の我々からの贈り物が気に入らないようだが、これからも大小の『みやげ包み』を渡してあげることにしよう」と米国を挑発していた。「火星14」は7月28日にも「米国に警告するため」(金総書記)再度発射されたが、金総書記は「これで米国も我々を無視できないことをそれなりに理解したのでは」と語っていた。
バイデン政権だけでなく、今月21日に米韓首脳会談を控えている韓国の文在寅政権にとっても北朝鮮の動きは気が気でないが、北朝鮮はすでに3月15日に対米担当の崔善姫外務第1次官の談話で▲バイデン政権が複数のルートを通じて求めてきた接触要請を拒否していたこと▲米国の対朝鮮敵視政策が撤回されない限り、いかなる朝米接触や対話にも応じないこと▲シンガポールやハノイでのような機会は二度とないこと▲その結果として制裁も喜んで受け入れることを明らかにしたうえで「米国は自分らが対朝鮮敵視政策を引き続き追求する中で我々が果たして何をするかについてよく考えてみる方がよかろう。我々はすでに強対強、善対善の原則に基づいて米国を相手するということを明白にした」と米国が先に敵対政策を撤回する措置を取らない限り対話再開の意思がないことを通告していた。
仮に建造が完了した新型潜水艦の進水式や軍事パレードで登場させた「北極星4」や「北極星5」などの発射実験があるとすれば、これまでの慣例からして節目の日を選ぶ可能性が高い。
今後数か月の北朝鮮にとっての節目の日を見ると;
5月 9日が金正恩党委員長推戴5周年、21日が米韓首脳会談、24日が北朝鮮核実験場爆破3周年。
6月 5日が海軍の日、12日が米朝首脳会談(シンガポール)3周年、25日が朝鮮戦争勃発日
7月 3日が戦略軍創設日、4日が米国独立記念日、27日が朝鮮戦争休戦日となっている。
「Xデー」がいつになるのかは金総書記の決断次第だ。