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米朝対決のゴングが鳴った! 北朝鮮がバイデン政権に「NO」を突きつけた!

辺真一ジャーナリスト・コリア・レポート編集長
バイデン大統領と金正恩総書記(バイデン大統領のHPと「労働新聞」から筆者加工)

 バイデン政権に対して「戦略的無視政策」を取っていた北朝鮮が我慢しきれず、今朝ついに沈黙を破って対米批判を展開した。同時に韓国に対しても非難の矛先を向けた。

 北朝鮮はバイデン政権から罵倒されても、短距離ミサイルの発射や人権問題で辛らつに非難されても反応をせず、無視を貫いていた。自制したのはバイデン政権の新たな対北政策が明らかにされてなかったためだ。しかし、バイデン大統領が28日に施政方針演説を行い、北朝鮮を「米国と世界の安保に対する深刻な脅威」とみなしたことに、また同じ日に国務省が北朝鮮の人権状況を「世界で最も抑圧的で、全体主義的な国の一つである」と批判したことに堪忍袋の緒が切れたのか、相次いで「反撃」に出た。

(参考資料:北朝鮮の矛先は日本! ヒートアップする対日非難! 米国に対しては沈黙!)

 北朝鮮はバイデン大統領の演説に対しては外務省の権正根(クォン・ジョングン)米国担当局長が、米国務省のプライス報道官の人権批判に対しては外務省スポークスマンが、そして韓国に対しては金正恩総書記の実妹である金与正(キム・ヨジョン)党副部長が対応していた。

 それにしても北朝鮮の反応は実に素早い。まるで「待ってました」と言わんばかりのスピードぶりだ。おそらく,予め想定し、どのようにも対応できるよう前もって談話を用意していたのだろう。

 対米批判は外交、対話で北朝鮮問題を解決する用意があることを鮮明にしたバイデン政権の出鼻を挫き、落胆させるような内容だった。

 権正根局長はバイデン大統領の発言には「米国が半世紀以上、追求してきた対朝鮮敵視政策を旧態依然として追求するという意味がそのまま盛り込まれている」として「大変大きなミスを犯した」と断じていた。

 そのうえで「米国の新たな対朝鮮政策の根幹が何であるのかが鮮明になった以上、我々もやむを得ず、それ相応の措置を取らざるを得なくなるであろうし、時間が経つほど米国は非常に深刻な状況に直面することになるであろう」と、対抗措置を予告していた。

 また、外務省のスポークスマンは米国務省の人権批判に対して「人権はすなわち国権である」と前置きし、「米国が今回、我々の最高尊厳を冒涜したのは、我々との全面対決を準備しているとの明確な信号であり、今後、我々が米国の新政権をいかに相手してやるべきかに対する明白な答弁を与えたことになる」と決めつけ、「米国が我々の思想と体制を否認し、『人権』を内政干渉の道具に、体制転覆のための政治的武器に悪用して、『断固たる抑止』で我々を圧殺しようとする企図を公開的に表明した以上、我々はやむを得ず、それ相応の措置を取らざるを得なくなった」として「米国が必ず後悔する」ような措置を取ると予言していた。

 金与正党副部長の対韓非難談話は韓国内の脱北団体が23日に北朝鮮に向け飛ばしたビラ散布を問題にしたものだが、これを止めず、放置した韓国政府に対して「我が国家に対する深刻な挑発と見なして、それ相応の行動を検討してみるであろう。我々がどんな決心をし、行動を取ってもそれによる悪結果に対する全責任は汚いくずの連中に対する統制を正しくしなかった南朝鮮当局が負うことになるであろう」とこれまた「報復措置」を示唆していた。

 韓国に対する「報復措置」は金与正副部長が3月15日の談話で予告していた韓国との絶交の意思表示としての対南対話機構である祖国平和統一委員会(祖平統)の整理や金剛山国際観光局の閉鎖、さらには信頼醸成措置一環である南北軍事合意の破棄などが想定されるが、問題は米国に対する「対抗措置」である。

 北朝鮮はバイデン政権に対応するため昨年から「A」と「B」プランを用意していた。「A」はバイデン政権が敵視政策の撤回など「善意」で対応する場合は「非核化」に向けての対話、交渉に応じるというもので、「B」は制裁と圧力の手法に固執する場合は圧力で対応するというものである。

(参考資料:「バイデンVS金正恩」 米国の新政権に対する北朝鮮の「A」と「B」プラン)

 今回の対米批判をみる限り、どうやら「強」には「強」で対抗する「B」プランを採用するようだ。というのも、金総書記は今年1月の第8回朝鮮労働党大会での演説で「米国を屈服させる」と宣言していたからだ。

 金正恩政権はバイデン政権に北朝鮮が米朝交渉の前提条件として求めている敵視政策の撤回を呑ますため2017年の時と同じように弾道ミサイルの発射などで米国を揺さぶる考えのようだ。

 北朝鮮は昨年10月と今年1月の軍事パレードで超大型の大陸間弾道ミサイル「火星16」とSLBM(潜水艦弾道ミサイル)「北極星4」「北極星5」を相次いで公開したが、まだ一度も試射をしていない。SLBMを搭載する新型潜水艦の進水式も含めて今後、軍事的デモンストレーションをエスカレートさせることになりそうだ。

(参考資料:進水式目前の北朝鮮の新型潜水艦とSLBM(北極星1~5)の全容)

ジャーナリスト・コリア・レポート編集長

東京生まれ。明治学院大学英文科卒、新聞記者を経て1982年朝鮮問題専門誌「コリア・レポート」創刊。86年 評論家活動。98年ラジオ「アジアニュース」キャスター。03年 沖縄大学客員教授、海上保安庁政策アドバイザー(~15年3月)を歴任。外国人特派員協会、日本ペンクラブ会員。「もしも南北統一したら」(最新著)をはじめ「表裏の朝鮮半島」「韓国人と上手につきあう法」「韓国経済ハンドブック」「北朝鮮100の新常識」「金正恩の北朝鮮と日本」「世界が一目置く日本人」「大統領を殺す国 韓国」「在日の涙」「北朝鮮と日本人」(アントニオ猪木との共著)「真赤な韓国」(武藤正敏元駐韓日本大使との共著)など著書25冊

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