【F1】47年ぶりの同点決戦!フェルスタッペンが優勝回数では優勢、ホンダ有終の美なるか?
F1の2021年シーズンはワールドチャンピオンを争うマックス・フェルスタッペン(レッドブル・ホンダ)とルイス・ハミルトン(メルセデス)がなんとピッタリ同点で最終戦・アブダビGPを迎えるという、とんでもない状況になった。
前戦・サウジアラビアGPでは熾烈な2人のトップ争いが展開される中、ペナルティ回避のために順位を入れ替えるために急減速したフェルスタッペンにハミルトンが追突。「ブレーキテストをした」とハミルトンが痛烈に批判した両者の戦いはまさに一触即発状態だ。
勝利数ではフェルスタッペンが9勝
シーズン開幕前から好調が伝えられ、ついに7度のワールドチャンピオン、ルイス・ハミルトンに挑む体制が整ったマックス・フェルスタッペン。今季のF1は下馬評通りの2人のライバル対決の構図で進んでいった。
開幕戦・バーレーンGPでは決勝レースの戦略でハミルトンの勝利。クラシックコースのイモラで開催された第2戦・エミリアロマーニャGPではスタートで先行したフェルスタッペンが優勝。その後の第3戦以降はハミルトンが2連勝。シーズン序盤はメルセデスのルイス・ハミルトン優勢でシーズンが進んでいた。
レッドブル・ホンダのマックス・フェルスタッペンが逆襲の狼煙をあげたのが第5戦・モナコGP。ハミルトンがアンダーカットに失敗して7位フィニッシュになったところで、フェルスタッペンが勝利。ここでフェルスタッペンはランキングを逆転して首位に立った。
第7戦フランスGP以降はフェルスタッペンの3連勝。第9戦オーストリアGP終了時点では32点もフェルスタッペンがリードを築くも、土曜日のスプリントレースを開催したイギリスGPでは両者が接触、フェルスタッペンがリタイアとなり、ハミルトンが優勝で差を詰めた。
ファンの間では強烈なライバル対決の構図で起こりがちなダーティな接触が物議を呼び、辛辣なコメントで一時騒然となっていた。第14戦・イタリアGPではまたもや両者の接触、リタイアが発生。ハミルトンの頭上をフェルスタッペンのタイヤがかすめていく、非常に際どいアクシデントとなり、さらにヒートアップしていった。
アメリカ大陸に舞台を移してからはフェルスタッペンが2連勝。第18戦メキシコシティGP終了時点ではフェルスタッペンが19点リードしていたものの、第19戦以降はハミルトンが3連勝。369.5点の同点で最終戦・アブダビGPを迎えることになった。
グランプリ勝利数はフェルスタッペン9勝、ハミルトンが8勝で勝利数はフェルスタッペンが上回っているため、同点であってもランキング首位はフェルスタッペンとなっている。
47年ぶりとなる同点での最終戦
F1にとって歴史にも記憶にも残るシーズンとなっている2021年。実はチャンピオン候補者が同点で最終戦を迎えるのは47年ぶりのことだ。1974年のエマーソン・フィッティパルディ(マクラーレン・フォード)とクレイ・レガッツォオーニ(フェラーリ)の対決以来となる。
基本的には前でチェッカーを受けたほうがチャンピオンになる可能性が高い、という分かりやすい構図ではあるが、決勝レース中のファステストラップ獲得者に1点が加算されるので、チャンピオンを争う両者の順位次第では誰が1点を取るかがキーポイントになる可能性もある。
また、近年のF1はセーフティカー導入、タイヤ戦略、そしてショートカットなどに対するペナルティなどが厳しく下るため、スリリングな展開のレースになることは間違い無いだろう。
ただ、こういった接戦の最終戦ではチャンピオンを争う両者がどちらも引かずに接触、リタイアして幕を閉じる結末がF1では度々起こっている。1989年、1990年の鈴鹿で起こったアイルトン・セナとアラン・プロストの接触、1994年のデーモン・ヒルとミハエル・シューマッハの接触はその代表例で、後にF1の歴史上ではドラマチックなシーンとして語り継がれているストーリーだが、レース直後はダーティな気分にしかなれず、そんな後味の悪い決着はファンの誰もが望んでいない。
ただ、もしそういう事態が起こってしまい、両者がリタイアになった場合は勝利数差でマックス・フェルスタッペンがチャンピオンを獲得することになる。誰もが今季を盛り上げてきた2人の正々堂々としたチャンピオン争いを見たいはずだが。
ブラジルGP以降はメルセデスが3戦連続のポールポジションを獲得し、底力を発揮している状況で迎える最終戦。ヤス・マリーナサーキットで開催されるアブダビGPではルイス・ハミルトンが通算5勝をマークしているサーキットで、ポールポジションも過去5回獲得している。
しかし、昨年、ここヤス・マリーナでパーフェクトな勝利を飾ったのはレッドブル・ホンダに乗るマックス・フェルスタッペンだった。
最終決戦に挑むホンダ
昨年、アブダビGPで驚くべき速さを見せたマックス・フェルスタッペン(レッドブル・ホンダ)。勝利の美酒に酔いしれた思い出の地に挑むホンダは、いよいよこれがホンダとしてのラストレースになる。
振り返ってみれば、他メーカーよりも1年遅れでF1に復帰し、2人のワールドチャンピオンを擁しながら入賞回数僅か6回に終わった、悪夢のような2015年から数えて今年で7シーズン目。ホンダは30年ぶりのワールドチャンピオンを狙えるまでに成長した。
最良のパートナーシップとなったレッドブルも2013年以来、実に8年も遠ざかっていたワールドチャンピオンの座を手中におさめようとしている。彼らがセバスチャン・ベッテルと共に取ってきた4回のドライバーズチャンピオンのうち、2回は最終戦まで決着がつかなかった戦いだっただけに、最終戦独特の緊張感を勝ち抜く経験は持ち合わせているのだ。
コンストラクターズチャンピオンについてはメルセデス587.5点、レッドブル・ホンダ559.5点と28点もの差がついているため、逆転はかなり厳しいが、ここはセルジオ・ペレス(レッドブル・ホンダ)のパフォーマンス次第であろう。ペレスはここ3戦、表彰台に立つことができていない。
現実的な目標として狙うのはやはりマックス・フェルスタッペンのドライバーズチャンピオン獲得。山本雅史マネージングディレクターは「最終戦の舞台となるアブダビの地で、皆さまと一緒に、最後まで夢を追いかけながら戦い抜きたいと思っていますので、チェッカーフラッグの瞬間まで、熱いご声援をいただけますと幸いです」とファンへの感謝の気持ちをコメント。
結果がどうなるかは誰にも分からないが、F1最強集団となってチャンピオンに君臨し続けてきたメルセデス、そして7度のワールドチャンピオンを獲得してきたルイス・ハミルトンを相手に、しかも彼らが強さを維持した状態でいる内に追いつき、戦いを挑んできたホンダ。一時期、ほとんどなくなっていた日本とF1の関わりをここまで近づけてくれたことを含めて、ホンダのF1での功績と努力は偉大なものだ。
だけど、多くの日本のファンは思っている。口に出したいのは「ありがとう、ホンダ」ではなく「おめでとう、ホンダ!」だということを。1964年以来のF1での歴史に幕を下ろすホンダは正々堂々と戦い、有終の美を飾れるだろうか。F1最終戦アブダビGPは誰もが涙なしでは見られない戦いになるはずだ。